なんでここに四天王が!?

 スケルトンはあらかた浄化できた。城内の掃除も着実に進んでいる。 


 ここからは、後回しにしてきた大きな問題を解決していく。


「ここを通らないとダメ?」

「ああ。掃除と同時進行しながらでないと」


 俺が一番怖いのは、挟み撃ちだ。

 挟撃されたら、いくら魔王の娘といえど一溜まりもない。

 潰せる敵は潰しておきたいのだ。


「けど、ものすごい魔力の波動を感じるよ」

 珍しく、パイロンが怯えている。


「大丈夫だ。お前の組み込んでくれた鎧があれば、負けない」

 立場が逆転し、俺がパイロンを鼓舞する形になった。


 武器庫に辿り着く。周辺には、がらんどうの鎧が散乱していた。真琴が戦った跡だろう。


「とはいえ、肝心の真琴はどこにいるんだ?」

「探そう。きっと近くにいるはずだよ」


 しかし、俺達は停止を余儀なくされた。


 俺の前に、やたら強そうな鎧騎士が立ちはだかる。


 まるで生物の甲羅のような青銅の鎧で、左腕にはちゃぶ台くらいデカイ盾を片手に持つ。盾には人間の顔をした模様が彫られている。


「ここから先へは行かせん」


 銅の鎧が、一メートル以上ある大剣を構えた。

 言語を解しているが、頭部はない。中身はがらんどうである。


 よく見ると、装備している盾の口がモゴモゴと動いていた。

 どうやら、盾の方が喋っているらしい。




「え、ちょっと! あんたがなんでこんな所にいるの!?」




 どうやらパイロンと謎の鎧騎士は、知り合いのようだ。



「答えなさい!」

「答える義務はない」



 怪盗の代わりに、鎧騎士は大剣を突き出す。


「誰なんだ、あいつは。知り合いか?」




「北の魔神だよ! クヌギちゃんが倒した四天王!」




「……マジか。四天王最強とか言われているヤツなのか?」


 何度も、パイロンが「うんうんマジマジ」と頷いた。


 どういうわけか、魔神の全身は瘴気のホコリまみれだ。関節にまでまとわりついている。


「だが、腕ならしには丁度いい。パイロンお嬢様。我が再戦を阻むのであれば、お覚悟を」


 クヌギに負けたリベンジを果たそうっていうのか。


「おっと、その前に俺と勝負してもらおうか」

 前に出て、パイロンを庇う。


「身の程を知れ、人の子よ。魔の力を会得したとて、中身はただの矮小な人間ではないか」


「その口は、俺に掃除されてから言うんだな」

 武装モップを槍のように構え、俺は覚悟を決める。


「大口を叩くとなれば、余程の自信があると見えるな。よろしい。お嬢様の前に、貴公を始末してくれよう!」


 本来両手持ち仕様なのであろう大剣を、片手で軽々と振り下ろす。

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