ハンガー統一作戦!

「お前なあ……」


 以前から、パイロンは不要品を無闇に捨てられない傾向があった。この衣装部屋でも、特に必要なさそうな服を選んで買っているように思えた。こいつの性格ゆえか?


 だが、悩んでいても被害は増えるだけだ。

 今は、片付けに集中する。


 これで手間が増えた。どうするか。

 思案した結果、一つの結論に行き着く。


「仕方がない。ハンガーを統一する」


「それで、部屋が片付くの?」

「正解だ。これを見ろ。サイズが一致していないだろ?」


 おおかた、適当に買った物だろう。


 太い、細い、鉄製、木製。どれもこれも統一感がない。

 これでは、ハンガーのスペース分だけデッドスペースになってしまう。


「だから、薄手の鉄製ハンガーだけを使う」


 百均で買えて、滑り止めもある。これなら、掛かっていても服が崩れない。


 ポールに掛かっている物は、ハンガーを処分した。すべてオレが指定したハンガーへ掛け替え。

 これは数百のスケルトン共にやってもらった。


「ほら来い。ハンガーをもらった奴から、ポールに掛かるんだ」


 ハンガーを亡霊共に向かって投げつける。


 亡霊共はハンガーを支給されると、自分からポールへと掛かりに行く。


 数時間後、ドレスは元の位置にピッタリと納まった。アクセと靴を置くスペースも確保され、見事に片付いている。


「どうよ、亡霊共。これで成仏してくれるか?」


「ありがとうございます~名もなき少年さま~。お礼に一曲いかがですこと~?」


 亡霊の一人が、手を差し伸べてきた。


「間に合ってる」


「せっかく素敵なレディが側にいるんですから、ダンスのレッスンが必要なときは言って下さいね~」


 ニヤニヤしながら、無数の亡霊共は天へと昇って行く。


 俺はパイロンの方を向いた。


 パイロンも同じように、俺と視線を合わせる。


「何を言ってるんだ、あいつらは」


「やだ、照れちゃうなぁ」

 調子に乗ったパイロンが後頭部をかく。

 しかし、急に足をよろけさせた。


 とっさに俺は腕を出し、パイロンの転倒を防ぐ。


「おいおい、大丈夫なのか?」

「平気平気。全然大丈夫だから」



 そういうのは、大丈夫じゃないヤツのセリフなんだよ。



 思っているより疲れているんじゃないのか? パイロンのヤツ。


「やっぱり私達の見込んだとおりですわぁ~。騎士様ぁ~」

「この絶妙なタイミングと息の合ったステップ~。お似合いですわぁ~」

 亡霊が言いたい放題、茶化してきた。


「だから、そういうんじゃないから俺達は!」

「急ごう。ここは大丈夫だよ」


 そうだな。まだやるべき事が沢山ある。

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