パイロンVSクヌギ 決着!

 見事な除草作業である。業者に頼んでもここまでキレイにはしてくれない。


 乗せられた二人には悪いが、ここは俺のシナリオに載っかってもらいたい。


 少しでも戦況を有利に進めようとしたのか、パイロンは雑草をトラップにして、クヌギの足を絡め取る。


「踊れ、吹雪よ!」


 氷の結晶が集まって、クヌギの動きを更に制限する。炎魔法が使えないから、切り替えたか。


 負けじと、クヌギも土を掘り返すように地面を斬りつけた。


 突撃してきたパイロンの目に土がかかり、視界が奪われる。


 トラップから脱出したクヌギが雑草を切り刻みながらパイロンへ一直線に突っ込む。


 目を防ぎながら、パイロンが念じた。地面に落ちていた雑草を舞い上がらせ、自身を守る。

 細身の剣をタクト代わりに雑草を操り、目隠しを兼ねた投擲武器と変化させた。クヌギのアタックを妨害。


 襲い来る雑草クナイを、クヌギは逆手持ちで次々と撃ち落とす。


 この葉隠れは、あまり効果がないようだ。だが、それがパイロンの狙いだろう。


 粉々になった雑草が、炎の玉となってクヌギに殺到した。


 回避しようとしたクヌギがスリップする。

 

 吹雪が、クヌギの足下の自由を奪ったのだ。

 

 再度、防戦を余儀なくされ、クヌギは攻撃を阻害される。

 

 だが、どちらも決め手に欠けていた。

 

 まだ力を溜めている状態だのだろうと、俺でもわかる。


 勝負は、次の一手で決まるに違いない。と、誰もが予感していた。


 吹雪で滑る足場を逆に利用して、ドリフトの軌道のように、クヌギがパイロンへと肉迫する。風圧で、炎の玉をかき消していく芸当まで見せた。


 パイロンも、突きの構えを維持し、待ち構える。動き回る敵に対して、待ち一辺倒。状況が見えていないのか、雑草で作った火の弾を自分の吹雪でかき消してしまう有様。


 これは悪手ではないか? 素人の俺さえ、そう思えた。


 何か考えがあるのだろうか。それともパニックになってるだけでは……。


 もらった……と、クヌギの口が動く。


 光の刃は、確実にパイロンの首を捉えていた。


 クヌギの剣が、振り下ろされる。


 何もできないまま、パイロンの首が飛ぶ。


「パイロン!?」


 パイロンが死んだ? さっきまでバカをやっていた少女が、こうもあっさりといなくなるなんて。


 これが、ファンタジーの現実か? 


 俺は、パイロンの元へと駆け寄ろうとした。


 しかし、真琴がオレの肩を掴む。


「離せ、パイロンが」

「ご心配は無用です」


 だが、現にパイロンの首が飛んだじゃないか。 


「いや、其の負けだ」

 あろう事か、クヌギが敗北宣言をした。


 クヌギの背後には、炎のレイピアを首筋に突き立てているパイロンが。


 先ほど着られたと思われたパイロンの首は、ゆらりと消えていく。これは、幻影だ。

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