第88話 再会(後編)

早速、『移魂の儀』を執り行うことになった


仲間たちの肉体は『魔導兵団』の時と同様にワタルが遺伝子情報を『走査』して『錬成』した


仲間たちから預かった『核』からその肉体へと魂を移し替える


世界樹の力は凄まじい


逆に言えば世界樹が亡びればこの世界のも滅びると言っても過言ではない


その力を借りるのだ


魔力の心配など全くなかった




だがワタルは仲間の為に何かしたかった


「俺の魔力も使ってもらっていいですか?」


ハイエルフに尋ねてみる


「魔力の心配はありませんが、あなたの気持ちを尊重させていただきます」


その時、初めて彼女が笑った気がした


世界樹に直接触れることはハイエルフ以外許されていない


「管理者である私は世界樹と繋がっております」


「私に魔力を注いでください」


「そうすれば自ずと世界樹にあなたの魔力が注がれます」




仲間の復活を願ってハイエルフへと無心で魔力を注いでいく


気が付けばワタルは現実世界ではなく


別の空間にいた


目の前で目まぐるしく光景が移り変わっていく


(これは世界樹の記憶?)


何千年、いや何万年


人であるワタルにとっては悠久の記憶


その中に世界樹とは別の記憶がある事に気づく


そして果てしなく続く孤独の感情も


それが誰の記憶であり感情であるのかワタルは気づいた


そこで現実の世界に引き戻される




「移魂の儀は成功しました」


ハイエルフが儀式の無事完了してことを告げる




「お前を信じて正解だったようだな」


一体の影がワタルに声をかけてくる


巨大な影


それは竜の姿だった


暗黒竜と見紛うう黒い姿では無かった


「お前白竜になってるじゃないか!」


「復活の際に呪いが解けたみてぇだ」


「いえ竜にかけられていたのは呪いではありません」


「封印の力でした」


「封印?」


「いまだ封印の力は残っています」


「そして世界樹の力をもってしても完全に封印を解くことは出来なかったのです」


「俺はこの姿になれただけでも十分だぜ」


穢れしものと呼ばれ続けた自分がようやく仲間たちと同じ姿になれたのだ


それ以上を望むべくもない




そして、ワタルの目の前に5つの人影が立っている


ゴブリンの姿ではない


彼ら本体の姿


「ツヨシ、ユウジ、シノブ、アオイ、マコ 久しぶりだな」




再会を喜ぶワタルと仲間たち


だがそれは同時に、彼らに別れを告げる時でもあった




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