第87話 再会(前編)

エルフの森の長老から世界樹の管理者であるハイエルフからの許可を得たとの連絡があった


3人からその思いのたけを告白されたワタルは少し気恥ずかしい思いであったが、ようやく訪れた仲間も復活を果たす為に気を引き締める


そこに思わず声をかけられる


「仲間を蘇らせる前に話をしたいんだが」


ワタル、エヴァ、アトラス、ミツミはすぐに戦闘態勢に入る


声をかけられるまで全く気配を掴めなかった




一人の男が佇んでいた


エルフにも勝るとも劣らない身丈夫


黒髪に黒い瞳そしてエルフの特徴である先のとがった長い耳


しかし、黒髪に黒い瞳のエルフなど聞いたことが無い


年齢は20代後半に見えるがエルフであれば外見で判断は難しい


そして左目に眼帯をしている


その眼帯からは、凄まじい力の波動が漏れ出している


(魔眼!?)


魔眼とは特別な力を宿した瞳の事だ


ごくまれにそう言った瞳を宿して生まれてくる者がいる


勇者であったころ魔眼の持ち主に出会った事があったが、この男の持つ魔眼はそれとは比較にならない程強力であることがわかる


何故ならワタルには眼帯に魔眼の魔力を抑える強力な術式がかけられているのが分かる


それでも、眼帯は魔眼の力を完全に抑え込めていなかったからだ




「そんなに警戒しなくても こっちは丸腰だぜ?」


「それに俺がヤル気だったら、お前らが気づかない間に終わってる」


男の言葉は誇張でも何でもない


4人がかかりでも全く敵う気がしない


救いであるのは男が全く殺気を放っていない事だけだった


今は大人しく話を聞くしかなさそうだ


「俺達に何のようだ?」


男は用件を話し始める


それはにわかには信じられない内容だった




「俺の話を信じるか信じないかは、ワタルお前次第だ」


「じゃあ またな」


男はそう言って消える


言葉通りその場で姿が消えたのだ


(転移魔法か!?)


転移魔法であればワタルも使うことが出来る


だが、魔道具も詠唱もなしで瞬間的に発動させることなど到底できなかった




長老に案内され、世界樹に向かうワタルたちの足取りは重かった


それはミスターXと名乗った男の話の内容のせいだ


世界最大そして神樹たる世界樹はエルフの森の中央にあった


その大きさに言葉を失うワタルたち


その高さは、成層圏まで達しているかもしれない




その根元には、1人の少女が立っていた


「ようこそ ワタル様」


美しい声だった


銀色の髪に同じく銀色の瞳


そしてその容姿も神々しいほどの美しさだった


「この度はエルフの森を救っていただき感謝します」


噂では、神々がこの世界に降り立った時から世界樹を守り続けている




ワタルたちは、敬意を表し挨拶をした


「仲間の復活の為に世界樹の力を必要とされておられるとか」


「世界樹で移魂の儀を行った事は一度もありませんが」


「成功するかどうか保証は出来かねますが」


「出来る限りの協力を致しましょう」


悠久の時は人の感情を薄れさせていくのかもしれない




いよいよ仲間たちを復活させることが出来る


ワタルはその喜びと同時に、その後やってくる別れに複雑な心境だった



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