第81話 エルフの森の危機 1/4

エルフの森へと向かうワタルたち


道中、ドライアドのスキンシップが激しかった


アトラスは彼女がワタルの魔力欲しさに近づいていると思っていた


だがそれは違った


『移魂の儀』


『魔導兵団』彼らの魂を、ワタルがが練成した肉体へ移す為


ワタルはドライアドの魔力を補うために


自分の魔力を彼女に注ぎ込んだ


その際に、彼女の中に流れて来たもの


魔力は当然として、それ以外にもう一つあった


それは思い


儀式の成功を


悲願の成就を


彼らに人の姿に戻ってほしいと


ただひたすら魔力と共に送り続けていたのだ


それは彼女が今までに感じたことの無い


とても暖かなものだった




彼女は何千年もの間


自分の愛する森が『迷いの森』とよばれる遥か昔から


木々や動物たち


日々舞い踊る美しい精霊たち


そこにあるもの全てに愛情を注いできた


そして、その見返りとして感謝と尊敬を得た


だが彼女を愛する者は居なかった


あの時感じた温かい思い


それが自分に向けられたものでないことは分かっていた


(いつか彼が私にあの温もりを与えてくれる時がこないかしら?)




何千も生きていながら、彼は人と対等な付き合いをしたことが無かった


『迷いの森』に訪れる者達のほとんどは、実体化した精霊を生け捕りにし


売り飛ばして一獲千金を狙う


金と欲に塗れた亡者たち


そんな彼らにとって、彼女は畏怖の対象でしかなかった


太古の昔『神々の大戦』が起こる前


人は森の守護者たるドライアドを崇めていたこともあったそうだ


だが、それも愛情とは違う




ワタルが自分を気に入れば、願いが叶うかもしれない


その為に彼女に出来る事は


彼の役に立つこと


だからエルフの里への道案内を買って出た


それ以外に出来る事


少しでもそばにいる事


それが過度のスキンシップに繋がったのだ


ワタルはそれを不思議と迷惑だとは思わなかった


彼女は


何かを求めている


何かを探している


そんな気がしたから


それと


(美女にいちゃつかれるのも悪くない!)


ピキーン!


アトラスから鋭いビームのような視線を感じる


いま古代の魔導兵と目を合わせてはいけない


ワタルの本能がそう告げていた




その頃エルフの森では大きな災いが訪れていた


「ぐっ! もうこれ以上は結界が持ちません!」


「何をやっている 術者は全員招集しろ!」


「こんな強力な邪精霊の存在など聞いたことが無いぞ!?」




『イビル・イーフリート』


魔力を糧に生きる精霊たちその中で、邪気を取り込んでしまい邪悪な存在となった精霊たち『邪精霊』と呼ばれる存在の中でも邪炎を纏いし上位精霊


「もっと力がいる」


「力を手に入れて、俺は最強の精霊になるのだ!」


「ふははは もっと力をよこせ!」




魔力の元となる魔素は大気中そして生き物の体内にも存在する


通常は大気中の魔素を糧とする精霊たち


より多くの力を求めた『邪精霊』


もっと効率よく力を蓄える術を教えられた


生き物を食らうのだ


特に体内に大量の魔力を持った生き物


亜人族の中でも特に秀でた魔力を持つエルフは彼らの格好の食料だと


「魔王の言った事は正しかった」 


「力が漲ってくるぞ! フハハハハ!」




邪悪な存在と化した炎の上位精霊


殺したエルフの死体を貪り食うその姿はおぞましかった



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