第75話 王都への逆襲(前編)

1万の国軍兵は完全に戦意を喪失していた


相手はたった16人にだと言うのに


「それでお前たちはどうする?」


「勇者は隷属魔法の呪縛から解放された」


「もうお前たちを守る者は居ない」


「これ以上、この街を襲う気なら殺す」


「勇者たち4名に歯向かう気なら殺す」


「俺達に歯向かっても殺す」


「息をしても殺す」


兵士たちは凍り付いた


彼らは自分たちを生きて返すつもりはないのだと




「今のは冗談だが、その先に述べた3つは本気だ」


「今から勇者たちは王国に反旗を翻す」


「それでお前たちはどうする?」


もう一度聞かれた


それは選択肢はないという事だ


司令官だった男は、地面に倒れ伏しピクピクしているが応えられる状態ではない


副官だった男が意を決して答える


「我々は勇者様と共に、戦う事を誓います」




「間違った判断は死を招く」


「今回は正しい判断だった」


団長がガシッと彼の肩を掴んだ


彼は生きた心地がしなかった




「お前たち一人一人の魔力波形と姿形は記憶した」


「逃げ出したり、裏切ったりした時点で敵とみなすから、そのつもりで行動した方が良いぜ」


1万人の魔力波形と姿形を全て記憶しただと!?


兵士たちには、ワタルの言葉がわかに信じがたかった




「ちなみに私も記録いたしました」


「私の仲間はお優しい方ですが、私はそのような慈悲の心は持ち合わせておりません」


「よって、裏切り者はこうなります」


盾を真上に構え、魔導砲を放つ


圧縮された魔力は空へと直線を描き雲を貫いた


その威力は人一人に対するにはあまりも強力過ぎた


「あなた方は私の警告を無視し、我々ばかりか、ハジメーテの街に危害を加えようとしました」


「そのため、私は報復として城を」


「ついでに城壁も消滅させるつもりでしたが」


「諸事象により、それが出来なくなりました」


「これはその憂さ晴らしです」


「実際には、もう少し威力を抑えて撃ちますのでご安心下さい」


兵士たちは思った


安心なぞ出来る訳がないと


兵士たちの反抗心、反逆の意思は魔導砲によって消滅した




勇者4人と、決して裏切ることの無くなった1万の兵士たちは王都へと進軍を開始した

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