第37話 威厳のある進化

『マジェスティック・ゴブリン』


ゴブリンキングいや、王の中の王であるゴブリンロードが到達する領域


ミノタウロス、オーガ、トロール、サイクロプスの『核』を吸収することで、ワタルたちはゴブリンが本来到達できる至高の存在へと進化した


危険度で言えばAランク 白金級冒険者とガチンコ勝負できる戦闘力


更に『賢者の石』の知識を生かし、装備を強化したおかげで実質的にはSランクに届いているかもしれない


だが、魔王の強さには、SSSランク 『人外の力を持つ者』『超越者』などと呼ばれるアダマンタイト級の冒険者でさえ歯が立たなかったのだ


魔王に勝つには、最高峰の冒険者の力すら超えなければならないのだ




だが、このまま進化していっただけでは、何かが足りない、届かない気がする


このままでは圧倒的な強さを誇る魔王を倒せない


そんな漠然とした予感が、ワタルの頭から離れない


しかし、今のワタルたちが出来る事は地道に進化を続け強くなること


今日はその一歩をまた踏むことが出来た


今はその事を喜ぶときだ


そう自分に言い聞かせる




仲間たちの変化を目の辺りにしてワタルは心底驚いた


その外見は、ゴブリンらしさがすっかり無くなり、召喚された当時の人の姿を取り戻していた


しかも身体能力は、きちんと強化されている


見た目だけでも人の姿に戻れたことを喜びあっていたが、ワタルの姿に気づいてフリーズした


何故なら、人の姿に戻れたのはワタル以外だったからだ


(何故俺だけ?)


問いかけても答える者はいない、アナウンサーさんさえもワタルの気持ちを察したのか沈黙を保っている


魔王の仕業としか考えられないが、その意図が全く掴めない


精神的攻撃であるならば、ワタルの落ち込む様を見る限り、見事に成功していると言える


考えても答えが出ないことに時間をかけるのは無駄な事


ワタルは進化の違いについて、あれこれ考えるのをやめた




彼の体長は約2mと小さくなったが、身体能力の向上している


そして全身から独特のオーラが放たれるようになった


これが王者の風格と言うものなのであろうか?


しかし、姿形は典型的なゴブリンのままだ


『統率』というスキルまで増えている


ゴブリンの王が知能が低く勝手気ままなゴブリンを軍勢として率いるための能力


今のワタルたちにとっては無用の長物


会話だけは、魔導兵の音声モジュールを組み込んで、ようやく人らしい発音が可能となった




アトラスの『核』ともいえる頭部の魔石に『走査』と『吸収』の術式を付加してみた


『術式改変』もスキルを使えば出来なくもなかったが、アトラスほどの超高性能の思考術式など怖くて弄れない


試しに『走査』と『吸収』を試してもらったところ、体内の魔力量の増大と構成パーツの強度も素材単位で強化されていく事が確認できた


主な素材である鋼が『魔鋼』に変質し、その純度が上がっていくそうだ


『魔鋼』とは魔力を帯びた鉱石を製錬したり、特殊な製法で魔力を帯びた鋼の事だ


その硬度や耐久性は、3大魔法金属であるミスリル、オリハルコン、アダマンタイトには及ばないが、通常の鋼と比べ遥かに高い


「もしかしたら『進化』して、変形や合体とか出来るようになるかも!」


「キング・アトラスとか、アトラス・ロードと呼ぶ日も近いかもね!」


「いや、ウルトラ・アトラスも捨てがたいな!」


興奮しまくりのワタルに


「いやぁ 流石にそれはないかと思います」


「それに必要性を感じません」




アトラスに男の浪漫は通用しなかったようだ




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