第29話 黄金の剣

 ピコピコ


 今日は土曜日だ。

 趣味のレトロゲームでもして癒されよう。


 ピコピコ


 画面の中では勇者が雑魚モンスターに火の玉を飛ばしている。

 もう少しでレベルが上がりそうだ。


 プルルルル・・・


「もしもし」

「あ、わたし」


★プチデビル(女子高生)が電波を飛ばしてきた★


「どうした?」

「今日、ひま?」


 ピコピコ


「いま、ゼラチンに火を通している」

「お菓子作り?・・・いや違う、ゲームの話でしょ。聖地に行ってみたいから付き合って」


 例の位置情報を使うスマホゲームのことらしい。

 ちょっと流行より遅いようだが、スマホを買い替えたので、始めてみたそうだ。


 パチッ


「わかった」

「じゃあ、10時に鶴舞駅で」


☆★☆★☆★☆★☆★


 聖地(鶴舞公園)にやってきた。


「思ったより、人が少ないね」

「普段はこんなもんだ」


 ちらほらと人はいるが、以前に来たときほどではない。


「あと、せっかく付き合ってもらったんだけど、着いて10分で目的を達成しちゃった」

「まあ、一日中、付き合わされるよりいいけど」


 最近、寒くなってきたし。


「どこか寄っていくなら、付き合うけど」

「うーん?」


 きょろきょろと辺りを見回している。


 キラン!


 なんか、目が光った気がした。


「アレ、食べよう♪」


 近くの屋台に向かっていった。


☆★☆★☆★☆★☆★


★黄金の剣(石焼き芋)を手に入れた★


 鞘から抜く(皮をむく)と、黄金の輝きが目に映る。


「最近はスーパーにも売っているけど、やっぱり屋台の焼き芋は、ひと味違うよね♪」

「外で食べるから、おいしく感じるのかも」


 公園内で座って噛り付く。

 甘味と香ばしさが口いっぱいに広がる。


「昔は燃え盛る石を積んだ小型トラックが走って売っていたものだけど、最近は見かけないな」

「やっぱり、危ないんじゃない?」

「ゆっくり走っていた記憶があるんだけど」

「じゃあ、渋滞の原因になって文句が出たとか」


 雑談を交えながら、食を進める。

 久しぶりに食べたが、止まらない。

 確かに焼き立ては、ひと味違う。


「種類も増えたよね。安納芋とかシルクスイートとかの焼き芋もあるし」

「焼き芋っていったら、紅あずまって印象なんだけど、古いのかな」


 品種も大事だが、最近は貯蔵技術も発達しているらしい。

 さつまいもは寝かせることにより甘味が増す。

 よく家庭菜園で、収穫したさつまいもが甘くないといった話を聞く。

 それは、寝かせていないことが原因であることが多々ある。

 もったいない。


☆★☆★☆★☆★☆★


「そういえば、休みの日は出かけないの?先週もピコピコしていたみたいだけど」

「趣味だ」

「いい歳なんだから、一緒に出かける彼女とかいないの?」


 ぐさっ


 余計なお世話だ。


「この時期は花粉症が酷いからな」


 ちょっと見栄を張ってみた。


「11月は花粉、収まってるよね」


 お見通しだった。

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