第24話 蒼い悪魔

 あおいと言われて思い浮かべる色はどれだろう。


 青 ・・・ 青い鳥

 蒼 ・・・ 蒼い月

 碧 ・・・ 碧い海


 人によって、それぞれだろう。

 ちなみに、自分は2番目を思い浮かべている。


★蒼い悪魔(風邪ひき上司)×1が現れた★


「げほげほ」


 先ほどから辛そうな咳をしているのは課長だ。

 そういえば、最近、涼しくなってきた。

 季節の変わり目に、風邪でもひいたのだろう。


 誰でも体調管理に失敗することはある。

 それを責めるつもりはない。


「げほげほ」


 ないのだが、せめてマスクをして欲しい。

 周囲の人間にうつしたら、どうするつもりだろう。

 あと、言いたくないのだが、咳がうるさい。


「あの、課長?」

「なんだい?」


 蒼白な顔を向けてくる。

 どう考えても、とっとと帰って寝た方がいい。

 効率も悪いだろう。


「具合が悪いようですし、帰宅されたらどうですか?」


 周りにうつすな、咳がうるさい、と言うわけにもいかないので、やんわり帰れと言う。

 けっして邪魔にしているわけではない。

 純粋に心配しているのだ。


「次の会議の資料を作ったら帰るよ」


 その会議には、まだ数日の猶予があるはずだ。

 今日中にやらないといけないわけではないだろう。

 体調を崩していると、いつも気にしないような、小さいことが心配になるというやつだろうか。

 自分も経験はあるが。


「そうですか。無理しないでくださいね」


 しばらく様子をみよう。


☆★☆★☆★☆★☆★


「げほげほ」


 あいかわらず、咳がうるさい。

 追い打ちをかけるわけにもいかないので、言葉にはしないが。


「大丈夫ですか~?」

「ああ」


 後輩も声をかけているが、帰る様子はない。

 体調を崩しているときに作業をしていると、妙に頑張っている気分になるのだが、はっきり言って効率は悪い。

 体調を治してから作業した方が、早いし楽なのだが。


「あの、手伝える作業なら、手伝いますけど」

「もう少しだから、大丈夫だよ」


 聞く耳持たない感じだ。

 もう、好きにさせよう。


☆★☆★☆★☆★☆★


「じゃあ、今日は帰るよ」


 と言って課長が帰っていったのは、結局、定時になってからだった。


「つらそうでしたね~」

「早く帰ればいいのになぁ」


 上司としては、部下が残っているのに、自分だけ帰るのは気が引けたのだろう。

 部下としても、上司が具合悪いのを見るのは、無理をさせているようで気が引けるのだが。


 ケホッ


☆★☆★☆★☆★☆★


 次の日、一晩ぐっすり寝たのか、課長の体調は戻ったようだ。

 タフなところは、さすがだ。


 ・・・・・


 と素直に感心できない。

 今日は入れ替わるように後輩が休暇を取っていた。

 朝、連絡があって、熱が出たそうだ。

 ちなみに、自分も喉の調子が悪い。

 どう考えても、うつされた可能性が高い。


「風邪が流行っているようだから、みんな体調に気を付けてな」


 課長が周りに声をかけている。


 あんたが言うな。

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