隠れた存在

   

 今回は、自分への覚書のような小ネタかもしれません。以前に書いたテーマと、やや重複するかもしれません。

 些細な話になりますが、こういう小さな部分こそ「あるある」と思っていただけるかもしれない……。そう考えて、敢えて書いてみます。



 先日『異世界裏稼業 ウルチシェンス・ドミヌス』という作品を、投稿前に推敲していた時のことです。

 三度目の見直しの中で、それまで少しだけ引っ掛かりながらも「でも何がおかしいのか、よくわからない」とスルーしていた、こんな文章に目が留まりました。



『この魔法で眠った相手の頭を水晶玉で叩き割る、というのが、復讐屋として標的を始末する場合のゲルエイの手口だった』



 どこに私は違和感を覚えたのだろう、と考えてみました。

 まず、一文中に「を」が二回あることかもしれない、と思いました。

 でも構造的に「を」の重なりが問題になるのは「……相手の頭を水晶玉で叩き割る、というのを、復讐屋として標的を始末する場合の手口に……」みたいな文章の場合でしょう。


 次に、文章の主体の問題かもしれない、と考えてみました。このエッセイの二番目で記した「視点」(読み手の立場という意味での「視点」)の問題です。

 パッと見た感じ、文章の主体は「相手」ではなく「ゲルエイ」で統一されているはずです。

 しかし、よく見ているうちに気づきました。

 確かに「水晶玉で叩き割る」のも「標的を始末する」のも、「ゲルエイ」です。

 ただ問題になるのは、冒頭の「この魔法で眠った相手の」という部分でしょう。

 そこでは「この魔法」を使ったのが「ゲルエイ」だから、まだ「ゲルエイ」が主体のつもりでしたが……。

 よく考えてみたら、少し変です。「眠った相手」という表記において「誰が?」と考えたら「ゲルエイが眠った」のではなく「相手が眠った」わけです。その意味で、一瞬だけ「相手」視点が混じっているわけです。

 この視点の変化のために、自分で読んでいて「この魔法で」という語句が「眠った」にかかっている感覚が薄くなり、もっと先の部分を修飾しているかのような錯覚まで生じていたのです。


 あくまでも「ゲルエイが」を貫くならば、「眠った」ではなく「眠らせた」という言葉を使うべきでしょう。

 ようやく問題点を理解したような気分になって、私は、最初に提示した文章を、以下のように書き直しました。



『この魔法で眠らせた相手の頭を水晶玉で叩き割る、というのが、復讐屋として標的を始末する場合のゲルエイの手口だった』



 しっくりきました。

 客観的に正解なのかどうかは別として、少なくとも私は、この方がいいと感じました。


 おそらく、この程度の小さな違和感は、今までも数多くあったのに、見過ごしてきたことだと思います。

 私が今まで投稿してきた作品の中でも、同様の点はいくつもあったのでしょう。

 しかし既存の投稿分から今回のようなポイントを探し出して修正するとしたら、気が遠くなるような大変な作業であり、とても出来そうにありません。


 だから、せめて今後、同じことが起こらないように。

 なぜ今回、最初に例示したような文章を書いてしまったのか、原因を考えてみました。

 おそらくそれは、私が、隠れた主語を意識していなかったからではないでしょうか。

 日本語にありがちな、主語の省略ですね。


 少し話が逸れるかもしれませんが。

 別のサイトでそもそも最初に私がネット小説の投稿を始めたのは、今から十年以上昔、英語圏で生活している頃でした。

 一ヶ月以上日本人と話をすることすらない、という時期も出てくるほどだったので、日本語に飢えていました。そしてネット小説を読み漁るうちに、自分でも投稿するようになった、というのが、始めたきっかけの一つです。

 そうやって英語にまみれた生活の中で、日本語を書いていると……。

 文章構造上は日本語より英語の方がわかりやすい言語だな、と感じることもありました。


 当時それほど意識していませんでしたが、今にして思えば、主語の省略というのも、日本語の特徴の一つでしょう。英語でも文法を崩した日常会話では、主語を省略する場合がありましたが、それでも日本語よりは少ないはずです。


 私が今回、最初に例示した文章も、主語を――述語に対して省略された主語を――意識していなかったからこそ、出てきてしまったのだと思います。

 そんなわけで。

 これからは「隠れた主語」にも注意しながら書いていこう、と思いました。どれだけはっきりと意識して実行できるか、自分でもわかりませんが。




(2019年2月4日「小説家になろう」に掲載したエッセイから一部を削って転載したものです)


(あちらでは現時点で全七話、これは第七話に相当するのですが、第六話は完全にあちらでの活動を基にした話ですので、カクヨム版からはカットします。あちらでは続ける可能性もゼロではありませんが、こちらでは『カクヨムに来る前に考えたもの(書いたもの)』というコンセプトですので、この転載版エッセイは、これで終わりとします。お読みいただき、ありがとうございました)

   

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ネット小説を書いていて思うこと ――素人なりの注意点――(抜粋転載版) 烏川 ハル @haru_karasugawa

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