箱庭のクロニクルウォーズ〜追放傭兵結社の下克上〜

作者 富士鷹 茄夢

19

7人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

これほど知的で、戦略的で、権謀術数渦巻くバトル物のラノベはかつてお目にかかったことがない。

電脳バトルだから人死には出ないけれど、だからといってお遊びの戦いじゃない。意地と、プライドと、信念をかけてぶつかり合うバトルシーンはひたすら熱い。しかもこの作品の一大特長となっているのは、ひとつひとつの戦闘が精緻に編み上げられた情報戦の上に立って行われていること。単純なパワープレイはひとつもない。主人公もその敵も、チートすれすれの技を繰り出し合って派手にぶつかり合うけれど、最後の決め手となるのはやはり情報。そこにただただ惹きつけられる。本当の意味で「面白い」と言わせられる。

この作品の魅力はそれだけではなく、複数組織間の勢力争いが全体のテーマになっていること。個々のバトルシーンの「戦術」は、全体の勢力争いの「戦略」における一要素でしかなく、その全体の「戦略」における駆け引き、裏切り、騙しあいがたまらない。つまりここでも高度な情報戦が繰り広げられるわけで、それがまたノートでも取りながら読みたくなるような極めて丁寧に描きこまれたものであるところが実にいい。

登場人物全員のキャラがしっかりと立っている。章ごとのラストでふっと力が抜けてしまう絶妙の「外し」。読みやすい文章。軽妙でセンスを感じさせる台詞回し。安易な恋愛関係に走らず、けれども艶めいたものを感じずにはいられない人間関係……と、優れた点を挙げれば枚挙にいとまがない。

時間をかけて読む価値があると自信をもって断言できる作品です。