『極剣聖』対『天魔王』——刹那の斬撃
「………………一体、なにが起こってるんだ……?」
半ば放心するように、僕は呟く。
先ほどフィーリアさんがサクラさんに向かって、あの
瞬間、炸裂するは爆光。鼓膜を破り捨てんばかりの轟音。それが気の遠くなるほどまで続いて、ようやく収まることには僕の耳朶は痺れ切ってしまっていた。
魔法結界が解除され、無力化したそれが崩れて、宙に溶けるようにして消えていく。
——サ、サクラ……さん……。
心の中で、呆然としながら、結界の中に閉じ込められていた彼女の名を呟く。
……あの、爆撃だ。大陸一つを容易く吹き飛ばせるほどの爆撃を、サクラさんは受けた。
それも一回二回ではなく、万を超える回数まで。
恐らく、身体の一片すら残っていないのだろう——そう、思っていた時だった。
「…………え?」
濃過ぎる煙幕が晴れ——そこに、サクラさんが立っていた。五体満足の、無傷なサクラさんが。着ている衣服ですら無事であった。
——そんな、あ、あり得ない……!
目の前の光景が信じられない。現実が、現実だと認識できない。それほどに、僕は
だが————こんなもの、まだ序の口であったと、これから僕は散々思い知らされる。
キンッキンッキンッキンッ——合計四回。先ほどと全く同じ音がその場に鳴り響いた。
——…ッッ?!
瞬間、言い知れぬ、途轍もない悪寒をフィーリアは感じ取った。感じ取ってしまった。
その感覚を、彼女は知らない。知らないが——本能が、全力で警鐘を鳴らす。
今すぐ、その場から離れろと
——【転移】ッ!!
そう心の中で思った瞬間、その場からフィーリアの姿が一瞬で消え去った。
そして刹那も過ぎずに————
ザンザンザンザンッッッッ——フィーリアが直前まで立っていた場所に、深々と斬撃の跡が刻まれた。
跡は止まらず、彼方にまで地を走る。大地を裂き、余波として無数の亀裂を残していく。
そして亀裂が拡大し、瞬く間にちょっとした渓谷にまで成長してしまった。
「………ふむ。これも躱す、か」
呟きながら、サクラは上空を見上げる——そこには、こちらを見下ろすフィーリアの姿があった。
「……………………」
フィーリアは、見下ろす。眼下のサクラを。
——これは、ちょっと気を引き締め直す必要がありますね。
完全に見縊っていた。完全に侮っていた。
『極剣聖』。自分以外の、Lv100————
——………………久しぶりに、ちょっと力出そうかな。
宙を浮遊していたフィーリアが、ゆっくりとサクラの目の前に着地する。
「『極剣聖』。あなたのこと、少しだけ認めてあげます」
「それは光栄だな『天魔王』。私も先ほどの攻撃を、君が躱せるとは思っていなかった……賞賛させてほしいよ」
二人の《SS》
そして、再度フィーリアの姿が消えた。かと思えばサクラからだいぶ距離を取った場所に立っていた。
「嬉しいお言葉ですね。素直に受け取っておきます」
フィーリアがそう言うと同時に、彼女の周囲にまた色鮮やかな
だが、今度はその数は少なかった。少なかったが——その分、その輝きを増していた。
「ですから、遊ぶのは止めて——少しだけ本気を見せてあげますよ」
にいっ、と。口端を歪めて、フィーリアは両腕を振り上げた。
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