11 ヒャッハータイム

車を走らせること数分。

俺達は農学部の建物の前にいた。


「誰もいないですね」

「ゾンビすら見当たらないわ」


早見さんと沢城さんが言うように辺りに人影がない。

やっぱり生存者は無理そうか、と考えていたら悠木がドローンで何か見つけたようだ。


「ここから北西に行った所にある農場にゾンビが集まってるぞ」

「農場?」

「というよりも、その外れにある建物にだがな」

「よし行ってみよう」


今までのパターンから、ゾンビは人のいる所に集まるはずだ。

その建物に生存者がいる可能性は高い。

クルマを走らせ建物より離れた場所に停車する。


「あれは牛舎か?大きい車庫もあるな」


悠木が持っていた双眼鏡で見てみると複数の建物が建っているのが見えた。

その周りには何かを探すようにゾンビがウロウロしている。


「ゾンビは牛舎に集まっているか。ん?あれは赤目ゾンビか。複数いるな」


赤目ゾンビには王の力が効きづらいから面倒なんだよな。

さっきみたいに燃やせば早いがガソリンがもうない。

そう考えていると、いつの間にかドローンを飛ばしていた悠木がまた何かを見つけたようだ。


「牛舎の二階に誰かいるぞ」


引きこもりマジ有能。

牛舎の二階には干し草を保管しているからそこにいるのだろうな。

確かこういう所は梯子でしか二階に上がれないから、登れないゾンビはウロウロするしか出来なかったのか。

問題はどうやって救出するかだな。


「トラクターはどうでしょう?」


早見さんが、悩んでいるのを感じてか提案してくれた。

そうか、二階に干し草を入れるということは、車庫にトラクターがあるかもしれない。

悠木に頼んでドローンを車庫の中に入れてもらうと、三台のトラクターがあった。

一台は何も付いてないタイプ。

もう一台はフロントにフォークが付いていて、ロール型の干し草に刺して運ぶタイプ。

最悪これでも良かったが、最後の一台を見て歓喜した。

フロントローダーのトラクターで、高めの位置に運転席があり、ドア付きのタイプなのでゾンビに襲われる心配がない。

しかもバケットの部分を二階に付ければ楽に救出ができる。


「早見さんありがとう!これで何とかいけそうだよ」

「お役に立てて良かったです」


頬を染める早見さんに礼を言い、早速トラクターがある車庫に向かう。

赤目ゾンビに見つかると厄介なので、車庫の裏側の方に周り入口を探す。

裏口があったのでそこから車庫に侵入し、先程のフロントローダーに乗り込む。

幸いな事に鍵は付けっぱなしだった。

さすが北海道。田舎では家の鍵さえ閉めないからな。

まあ多分トラクターを使ったあとにゾンビが現れて、鍵を付けたままで逃げたんだろう。

周りには血の跡が沢山あるし。

トラクターの運転は初めてだったが、マニュアル車とほぼ同じみたいだ。

エンジンをかけるとゾンビ共が気付いて寄って来るがもう遅い。

これからはヒャッハータイムだぜ!

俺はアクセルを踏み込み、悪い笑みを浮かべてゾンビを轢き潰して行く。


「ヒャッハー!」


と叫んでいると近くをドローンが横切った。

声は聞こえてないだろうが、悪い顔は見られたから、早見さんの説教タイムは確実だ。

ヒャッハーは自重する事にし、おとなしく牛舎に救出に向かう。

常識人マジ怖いからな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る