10 お兄様と呼ばれたい

そのあと悠木にも紹介する。


「何だよその胸部装甲は!」

「あら。お子ちゃまには刺激が強いかしら」

「ぐぬぬ。俺だってそのうち・・・」


最後の方の言葉はよく聞き取れなかったが、ぐぬぬなんて本当に言う奴がいるんだな。

自分の薄い胸を見てブツブツ言っている悠木に話しかけ、こっち側に戻って来てもらう。


「おーい。悠木」


返事がない。ただの貧乳のようだ。


「おーい。ひんにゅ・・・ブヘッ」

「てめぇそれ以上言ったら殺す」

「ごべんなひゃい」


なんだよ聞こえてるじゃないか。

てか殴るとか、どこの戦姫さんですか?

絶唱して変身しませんよね?

俺は恐る恐る再度話しかける。


「そ、それでドローンの方の情報は?」

「今は充電が切れたので休ませている。あと30分は使えないな」

「それじゃ直接行ってみるか」


次の目的地は農学部があるエリアだ。

農場や畜産に詳しい人を探すのが目的だ。

まだ抱き合ってる二人を呼ぶ。


「おーい。エロ獣医」

「一緒にしないで下さい!」

「あら、織ちゃんも同じ格好する?」

「しません!」


因みに沢城さんは薄手のピチピチのセーターに、膝上10cmぐらいのミニスカートをはいている。

俺的には早見さんのスーツ姿もグッと来るんだか言わないでおこう。

ギャーギャー言い合う二人を車の後部座席に乗せ、農学部の方へ移動する。

道中、病院内で起こった事を留守番二人に説明し、『死者の王』の事も話した。

二人には呆れられた顔をされたが、報連相は大事だから話しておかないとね。


暫く進むと、食堂があったので寄ることにした。

沢城さんが「お腹空いた。ビール飲みたい」

と駄々をこね出したからだ。

あなたもう良い歳してますよね?

心の声が読まれたのか、睨まれてしまったので素直に従う事にした。

食堂には客と店員らしき人がいたが、もれなくゾンビになっていたので、王の力で丁重に外に送り出してあげた。

それから店内に三人を呼び寄せる。

まだ電気は止まっていないみたいなので、冷蔵庫には食料がそのまま保存されていた。

そこで活躍したのが早見さんだ。

一人暮らしやお爺さんとの暮らしで料理歴は長いらしい。

早見さんが料理をしているのを眺めつつ周りを見ると、悠木は相変わらずパソコンを弄っていて、沢城さんは早速ビールを浴びるように飲んでいた。

何か言おうとしたが睨まれたのでやめておいた。

そうこうする内に料理が出来上がった。

テーブルに出されたのは肉と野菜の炒めものだ。

ご飯が欲しいところだが時間がないので諦めた。


「おお美味そう」

「冷蔵庫の余り物で作った簡単な物ですが」

「いやいや十分だよ」

「うめー」

「ビールに合うわね」


悠木と沢城さんがいつの間にか食べてて感想を言う。

俺も美味しいと伝えたところ、顔を真っ赤にして照れていた。

そのうち『お兄様』と呼んでくれないかな。


料理を間食し食堂の外に出ると、道路の向かいにセイコーマート、略してセコマがあったので、保存が効くものを中心に持って行く。

女性陣はデザートをカゴの中に入れているようだ。

それにしても店内があまり荒らされてないところを見ると、生存者はほぼ皆無と思った方が良いかな。

もしくは建物に立てこもって出られない?

農学部の方もあまり期待出来ないかなと考えながら、車に乗り込み目的地へ向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る