仲間No.3 沢城 雪(さわしろ ゆき)
私の名前は 沢城 雪。
29歳独身。身長は165cmぐらいかしら。
体重は52kg。スリーサイズは上から99・55・88よん。
ふじこちゃんとほぼ一緒ね。
髪も茶髪にウェーブがかかっているわ。
彼女は私の憧れなの。
職業はお医者さん。
大学病院の救急科で寝る暇もなく仕事をしてたわ。
来る日も来る日も治療治療。
でもね、私は充実してたの。
私の両親もお医者さん。
今は二人で海外の紛争地帯で仕事をしているはず。
はず、というのもすぐにいなくなるから居場所がわからないのよね。
まああの二人の事だから心配はしてないけどね。
そんな親を見ていたら、今の私の忙しさなんて屁みたいなものよね。
だから私は頑張れてたのよ。
あの日までは。
その日、一人の男性患者がドクターヘリで運ばれて来たの。
新千歳空港で暴動が起きたらしく、その際に首筋を噛まれて肉が抉れてしまっていたの。
すぐ手術を開始したけど治療の甲斐なく亡くなってしまったわ。
私は自分の未熟さに嘆いて手術室の前で缶コーヒーを飲みながら黄昏ていたわ。
すると霊安室へ運ぶ準備をしていたはずの手術室から悲鳴が聞こえて来たの。
手術室のドアから飛び出てきた看護士に話を聞こうとしても、一目散に逃げて行ってしまったわ。
私はドアから中を覗いたの。
そこにいたのは先程亡くなられた男性患者だったわ。
何故立っているの?
何故噛みついているの?
何故看護士達が倒れているの?
さすがの私も足が震えたわ。
倒れていた看護士が起き上がり出したから、近寄ろうとしたのだけれど固まってしまったの。
その子は元は笑顔の可愛い子で、いつも先生、先生と懐いてくれてたわ。
でも顔を上げた彼女の長い髪の隙間から見えたのは、青白い顔に浮き出た血管と白く濁った目だったの。
私はすぐに確信したわ。
これはゾンビだと。
仕事柄、血を見るのに慣れている私は、休みの日にはよくゾンビ映画を見ていたのよ。
それを見た瞬間、手術室のドアを閉め逃げ出してしまったわ。
慕ってくれていたあの子を見捨てて。
お父さん、お母さん、もう私、頑張れないよ。
それから必死になって二階に降りる階段まで逃げた時、下の階から悲鳴が聞こえたの。
どうやらさっき逃げた看護士が既に噛まれてしまっていたようね。
この状況で一番安全なのはどこかしら。
三階も二階もゾンビだらけになっているとしたら、屋上しか選択肢はないわね。
私はフロアにいた人達と一緒に屋上を目指したわ。
それが悪手だと気付かずにね。
屋上に逃げ延びたのは私を含め6人だけだったわ。
20代のカップルと50代ぐらいのご夫婦に70ぐらいのお爺さんよ。
みな救急で運ばれた患者のご親戚の方ですって。
屋上に出たと同時に扉を閉め鍵も閉めたわ。
鍵はたまに屋上でサボるので持っていたの。
内緒よ?
扉を閉め一息吐いていると、ゾンビのうめき声が聞こえてきて、扉をバンバンと叩き始めたわ。
私達はゾンビが扉を叩く音に怯えながら一晩屋上で過ごしたの。
そして次の日のお昼ぐらいかしら。
空を見上げると一台のドローンが飛んでいて、カメラが付いていたから映ってると思ったから、とりあえず手を振っておいたわ。
それから他の人たちとこれからどうするか話し合っていたら、駐車場から煙が上がって爆発音まで聞こえたの。
そして暫くして扉の外が急に慌ただしくなったと思ったら、扉が壊されゾンビが溢れ出て来たのよ。
一緒にいた人達はそいつらに襲われどんどん倒れてゾンビになっていったわ。
私の前にも赤い目をしたゾンビがゆっくりと近づいて来て、さすがに終わったと思ったわね。
でも救われたの。
あの人が入って来た途端、ゾンビ共の動きが止まって、次々に屋上から飛び降りて行ったわ。
私はまだ生きていて良いみたい。
私も助けられる命がある限り最後まで頑張ろう。
私に罪滅ぼしのチャンスをくれた、あのちょっと間の抜けたヒーローのように。
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