9 エロリスト

まずは状況を整理しよう。

白衣の女性(エロい)は赤目ゾンビの前で腰を抜かして固まっている。

他の生存者だった人達は、俺が屋上に来た時点で全員噛みつかれてしまっていた。

今はゾンビと化して他のゾンビと一緒に止まっている。

まずはゾンビをどうにかするか。


「死者の王が命じる。全員、飛び降りろ!」


(イエス ユア マジェスティ)

(イエス ユア マジェスティ)

(イエス ユア マジェスティ)

(イ、エー ユーハ マジスカァ)


どんどん屋上から飛び降りて行くゾンビ共。

これがギア、いや王の力か。

頭が痛くなるのは何とか回避できたようだ。

何か変な奴が一体いるみたいだが気にしたら負けだろう。

全員飛び降りたと思ったら赤目ゾンビが残っていた。

命令に抗っているのか小刻みに震えている。

やはりあの変異体は他とは違って力が強いようだ。

それでも一歩一歩屋上の縁に向かって行っているから命令には逆らえないのだろう。

時間がかかりそうなのでサクッと倒す事にしよう。

俺はジャケットの内ポケットに入れていた銃を取り出し赤目ゾンビに突きつける。


「ガアアアアアア」


最後の抵抗なのかこっちを威嚇してくる。

やはり他のゾンビと違い、少し声になっている声だった。

パンッという音とともに赤目ゾンビの頭に穴が空き奴は倒れた。

念のために手に持っていたバットで頭を殴りつけ止めを刺す。

頭から脳漿が飛び散っているからもう大丈夫だろう。

ふと横を見ると白衣の女性(エロ)が若干引いていた。

だってもうエロだよ、エロ。

スカートがはだけて、おパンティーが見えているんだもん。

エロい格好を通り越してエロテロリストだよね。

もうエロリストで良いか。


「ちょっとあなた。さっきから変なこと考えてないかしら?」


エロリストがスカートを直しながら立ち上がる。


「い、いえ。め、滅相もない」


慌てて噛み噛みだったのでバレバレだろう。


「まあいいわ。私は 沢城 雪。ここの救急科の医者よ」


女医さん来たー!

しかも救急とはラッキー。

まあ医者であるのは白衣の時点でわかっていたんだけどね。


「俺は 福山 瞬。今は、旅人かな?」

「怪しいわね」

「えー。そうだ、早見さんの知り合いなんだだよね?」

「えっ?織ちゃんを知ってるの?」


ドローンの映像で見た人に間違いないないようだ。

まあエロい格好の人なんてこの人しかいなかったしな。


「さっき他の場所で会って、今一緒に行動しているよ」

「んー。じゃあ少しは信用してあげるから、織ちゃんの所に連れてって」


少しというのが気になるが、俺は沢城さんを連れ三階に降りる階段へ向かう。

まだ残っているゾンビがいるので命令する。


「死者の王が命じる。全員、外へ出ろ!」


ゾロゾロとゾンビが二階への階段を降りて行く。


「さっきもそうだけどそれは何なの?」

「死者の王の力だよ?」

「たからそれが何なのよ!」


俺は今までの事を沢城さんに説明する。

信じてなさそうだけど、実際に見たからか納得はしてもらえたみたい。

そのあと二階と一階でも命令を繰り返し、やっと病院の外に出る事ができた。

途中沢城さんの治療室に寄り、医療道具が入ったバッグを回収しておいた。

車に戻ると早見さんが後部座席のドアを開け沢城さんに抱きついた。


「うわーん。雪ちゃん、良かったぁ」

「織ちゃんも無事で良かったわ」


泣きながら抱き合う二人。

犠牲は出してしまったが、この光景を見る事ができて良かったと思う。

全てを救う事なんてできないが、目の前にいる人達ぐらいは守れるようになろうと誓う俺であった。

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