第58話 家族愛をコンビニ経営で確かめる6

「軽い過労ですね。2、3日入院しましょう。」

 コンビニ経営の夜勤で体調を崩した父、晋男は病院に入院することになった。

「お父さん、大丈夫ですか?」

「すまない、みんな。深夜はアルバイトでも雇って、おまえたちは、しっかり寝るんだぞ。」

 こうして安倍家の暗黒のコンビニ経営が再スタートされた。家族は病院を後にした。

「はい。安倍さん。血圧を測りましょうね。」

「よろしくお願いします。」

 きれいな若い看護婦さんが晋男の病室にやってきて、血圧を測る。

「安倍さん、お注射しましょうね。あ!? 抜け駆けはズルいわよ!」

「何よ! 早い者勝ちよ!」

「まあまあケンカしないで。」

 2人目の看護婦は注射を持ってきた。

「安倍さん、点滴の時間ですよ。」

「安倍さん、入浴の時間ですよ。」

「安倍さん、リハビリの時間ですよ。」

 次々と晋男の病室に看護婦たちがやってきた。

「安倍さん、コンビニのオーナーなんでしょう?」

「そうだよ。」

「安倍さん、お金持ち?」

「お金持ちだよ。オーナーだからね。」

「キャアー!」

「安倍さん、私、ブランドのバックが欲しい。」

「いいよ。買ってあげよう。」

「安倍さん、付き合うから、お金ちょうだい。」

「いいよ。家族には内緒だよ。」

「安倍さん、病院って、最高でしょう?」

「ハーレムだ! まさに病院はハーレムだ!」

 安倍晋男。コンビニを経営して一番良かったことは、コンビニのオーナーというだけで、世間知らずのバカ女が群がってくることであった。お金持ちでなくても、お金持ちと相手に思わせることができれば、簡単に遊べるのだ。


 その頃、コンビニでは。

「よろしくお願いします。」

「深夜のアルバイトのトランプさんよ。私の国はアメリカです。」

「じゃあ、後はよろしくね。」

 こうして安倍家の母、2人の息子は家に帰って行った。

「誰もいないコンビニ。まずはレジから売上金を奪う。そして、スマホを出して撮影。おでんの卵を口に入れ、そして売り場のおでんの中に戻す。おお! アクセス数が100万アクセス。これで1万円ゲットだぜ。次にペットボトルを取り出して、開けて少し飲む。そして、そのペットボトルをケースに戻す。おお! 200万アクセス。これで2万円ゲット。まったく良いアルバイトだ。日本人は簡単に人を信じるから、こういう目にあうんだ。ワッハッハー!」

 安倍家のコンビニは一晩中、外国人アルバイトのバイトテロの餌食となっていた。外国人は朝、安倍家が出勤すると姿を消していなかった。


つづく。

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