第56話 家族愛をコンビニ経営で確かめる4

「今日から研修だ! がんばるぞ!」

「エイエイオー!」

 安倍家のコンビニオーナーへの研修が始まった。安倍家は研修センターで、コンビニ経営の基礎を学ぶ。

「どうも、私が研修担当のザキヤマです。」

「て、どうみてもザキヤマ社長じゃん。」

「どこも人手不足なので。」

 研修もザキヤマ社長が担当する。

「怪しい。詐欺じゃないだろうな?」

「帰ってもらっても結構ですよ。デイリーザキヤマとの契約解除、違約金を2000万円を払ってもらいますよ。」

「ふざけないで! なんで払わないといけないのよ!」

「残念。契約書を読まなかったんですか? 契約解除も違約金も書かれていますよ。これは裁判の証拠にもなる法的な書類です。安倍家のハンコも押されていますからね。」

 コンビニの会社と個人のオーナーとの契約は理不尽なものなのだ。気軽にハンコを押してはいけません。

「そ、そんな!?」

「オヤジ!? なんで契約のハンコなんかを押しちゃったんだよ!」

「そうだ、そうだ。」

「おまえたちだって反論しなかったじゃないか!? 父さんだけを悪者にするな。」

「あなたたちやめなさい。わかったわ。研修を受けましょう。」

「そうこなくっちゃ。」

 こうして安倍家は研修を受けることになった。

「まずはレジ打ちから練習しましょう。」

「レジか俺と兄貴は若いから大丈夫だな。」

「そだね。」

「私もレジくらいはできるわよ。」

「問題は、オヤジだな。」

 こうしてレジ打ちの練習が始まった。軽やかにレジを打つ息子の晋一、晋二。

「いいですね。さすが20代。レジの操作なんかは簡単ですね。」

「任せとけ。」

「お茶の子さいさいだ。」

「奥さんはどうですか?」

「キャア!?」

 その時、ザキヤマ社長が母、利子のお尻を触った。

「何するんですか!? やめてください!? セクハラですよ!?」

「セクハラ? 契約書を読まなかったんですか? 契約書に本部の人間には絶対服従と書いてありますよ。」

「セクハラは別です!」

「別じゃありません。セクハラではなく指導ですよ。それに役に立たないオーナーの旦那に愛想が尽きて、オーナーの奥さんと本部の担当者が浮気・不倫することはよくあることです。夫婦で12時間交代で店に立つんです。旦那がコンビニいる間に、オーナーの家で本部の人間と奥さんが愛し合っていても、旦那にはバレませんからね。これもコンビニ本部の人間の奥様へのサービスの一環です。それとも私を怒らせて、契約解除の違約金を払いますか?」

「負けた。」

 母はコンビニ本部の言いなりになるしかなかった。

「クソジジイ! レジくらいできないのかよ! おまえなんか契約した時点で客じゃねえんだよ! 死ぬまで働いて金を稼げ! 半分はロイヤリティーで本部がもらってやるぜ! ケッケッケ!」

「何も言い返せない。」

 契約解除と違約金で脅された安倍家。父の晋男がザキヤマ社長からパワハラを受けても、言い返すことはできない。

 つづく。

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