第44話 切ない別れ3

「別れか。」

 俺は今までの人生で考えたことのないことを考えている。今まで普通に暮らしてきた。身長も伸びれば、体重も増えた。幼稚園、小学校、中学校、高校、そして大学。俺は順調に成長してきて、前に進むことに精一杯で、過去を振り返ったことが無い。

「まず、学校の別れから考えて見るか?」

 今までに何度も学校の卒業というものを経験してきた。幼稚園や小学校を卒業しても、小学校や中学校には、同じ友達の顔があった。なぜか? それは学校が子供の住んでいる近所に無ければいけないからだ。だから近所というか、同じ顔触れで中学校まで進級していく。

「初めて別れを実感するのが、中学校を卒業して、友達と離れ離れになって、高校に通い出してからだろうか?」

 高校になると、人間はふるいにかけられる。学力だの、偏差値だの、頭の良さによって、大学に進学する者と、就職する者に分けられる。まあ、俺みたいに、ただ高校を卒業するためだけに、普通の三流高校に行く者が大半だが。

「地元の友達とは、学校が違うので完全に時間軸が違う。会うことも容易ではない。俺のような田舎者の地元には、就職できるような会社も無いので、中学校の時に将来を誓い合ったとしても、別れるか、県営住宅で生活保護をもらって暮らすしかない。それも、もらえないなら、生きてはいけない。」

 別れは必然である。別れる前から、貧乏に耐えるのが前提で、耐えられなくなった瞬間、別れはやってくるだろう。

「大学に行くのだって、人生をあがいているだけだ。生まれながらに金持ちの子供には勝てないように社会はできている。お金があれば、別れは、やってこないのだろうか?」

 貧乏人の俺に分かるはずがない。ただ、分かっていることは、お金持ちは子供を幼少期からお受験させ小学生や中学生から、名門大学の学校に通わせる。自分たちの子供が受験戦争をしないでいいからだ。そして学校の名前でも、コネでも、大手企業や公務員になり、今の時代でも、大金と安定した生活、結婚、子供を手に入れることができる。

「俺にとっては、ゲームの中だけの世界だよ。」

 人間には別れがやってくる。ただ、それに気づいているか、いないか。それだけである。人は自分の都合の悪いことは考えないように生きていく。

「まただ、また俺は別れを経験しようとしているんだ。」

 俺は大学を卒業しようとしている。大学を卒業するということは、大学の友達を失うことを意味する。違う時間、違う会社で新たな人々と生活を送るために。


つづく。

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