第28話 悪魔と天使が笑う1

 天使。神の使徒。聖なる光を司る者。天使は人々に祝福を与える。この世界には天使と悪魔が存在する。人間の心は輝きを放つこともあるが、儚くも簡単に割れることもある。人は天使にも悪魔にもなることができる。


「おまえ、悪魔だろ?」

 高校生の制服を着た男の子が、大人の男を問い詰めるように言う。ここは渋谷のスクランブル交差点。日本人も外国人も、大人も子供も多くの人間が行きかう場所で男の子と大人の男だけが立ち止まって睨み合っている。

「貴様!? 俺が悪魔だと、なぜ分かった!?」

 大人の男は自分の正体が悪魔だとバレて動揺している。信号が青から黄色に変わり、スクランブル交差点を渡る人々が駆け足で目指す歩道に移動していく。

「それは俺が天使だからだ。天使の時間(エンジェル・タイム)。」

 男の子は、聖なる光を放つ天使の輪を頭の上に、背中には天使の羽を出す。普通の高校生が神の使徒、天使になった。この世界には天使も悪魔も、神さえも存在する。

「天使は殺す! ギャオ!」

 大人の男の体が服も溶けるドロドロの悪魔スライムに変わっていく。信号は赤に変わり、スクランブル交差点には天使と悪魔しかいなくなっていた。

「大人しく魔界にいればいいものの。天使の領域(エンジェル・エリア)。」

 天使は現実世界とは違う次元をスクランブル交差点周辺に作り出す。その同じ消しだけど別の次元で天使は悪魔と対峙する。現実世界では信号が青になり車が走り出している。

「天使こそ、天界に帰れ! スライム・アタック!」

 悪魔スライムが天使にドロドロの体で迫ってくる。

「下級悪魔の分際で天使に歯向かうのか? 神の裁きが怖くないのか?」

「神なんか知るか! おまえを取り込んで堕天使にしてやる!」

「愚かな。神の裁きを受けるがいい。天使の剣(エンジェル・ソード)。」

 天使は聖なる光の剣を何も無い手から生み出す。片手でしっかりと剣を握り構える。剣に聖なる光を集約させる。

「神の使徒が偉大なる神の言葉を伝える。天使の剣斬り(エンジェル・ソード・スラッシュ)!」

「ギャア!?」

 聖なる光が悪魔スライムを切り裂き光の中に呑み込んだ。

「神の裁き(ゴッド・ジャッジメント)。」

 天使は悪魔を倒した。そして何事も無かったかのように、天使の領域が解除され別次元から現実世界に戻る。何事も無かったかのように、スクランブル交差点は多くの人々が行き交っていた。

「悪魔に化してしまった人間に神のご加護を。」

 そして何事も無かったかのように、天使も人間に戻り交差点の中心から歩道に渡っていた。

「やばい!? 学校に遅刻する!? ギョエエエエー!?」

 男子高校生は学校に遅刻すると慌てて駆けだしていった。天使も人間に戻れば、普通の16才の高校生だった。彼の名は、渋井光。


つづく。

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