追跡
スタンの懸念は最悪の形で当たっていた。
キリチェックは途中からアンナ達を追っていたのだった。
国連ビル前で一度スタン達を捕捉するが、部下からの報告を受けてその場で車を降り、徒歩で血液を飲みながら能力を最大展開する。
すると脱出口から接続する地下鉄構内を逃走するアンナ達をたやすく見つけた。近辺で男女2人組で地下を歩く足音はそれしか居なかったからだ。
地上を歩きながら2人を追跡する。
アジトを見つけたら手前で始末してデータを奪取してやればいい。それにスタン達は始末するのは手間と戦力が掛かる。後回しでも問題はない。
ゆっくり泳がせ、最後に刈り取る……
そのために距離を置き、周囲に気を配りながら追跡をする。
トンネルで移動する2人を見失わないようにフェリーに乗り、先回りをしてマンハッタンからロードアイランドに渡る。
地下鉄を抜けた先にあるロードアイランドシティ駅の出口から出てくるのを遠距離からそれと無く観察した
野暮ったい服で誤魔化してはいるがブースと
そこにスマホに呼び出しが掛かり、目標から目を離さずに電話に出ると声の主、キャロルは興奮気味に話しだした。
「ドラガン? 例の少年の件だけど、どうやら凄い事になりそうよ」
「凄い事?」
正直、期待はしていないといった感情ありありでキリチェックは答える
「ロードアイランドで聞き込みを行ったら、市内のグロサリーストアでその少年と別嬪の女が連れ立った買い物に来てたと証言があるの……」
「ほう?」
「興味本位で関係者の写真を見せたところどうやらJP隊の女らしいって話……」
「なんだとッ?!」
視界のアンナを凝視しながらキリチェックは流石に声を上げた
(途中で始末するつもりが尋問になるとは……)
運が向いてきたと思い、キャロルに部隊に銃火器装備させて待機を指示した
そして距離を気付かれないように慎重に保ち、ブルックリン地区に入る
アンナ達はそこで一旦止まり、ゆっくりと歩きながら1ブロック先に止めてあるバンに飛び乗ると急発進しだす
(ちぃ! 気づかれたか!)
バンを走って追いかけつつ、視界に入る手頃な車を一瞬で探り、配達に来た運転手が乗り込もうとした配送トラックを強引に分捕り追いかける
その標的たるアンナも正直面くらっていた……
もうじきアジトのビルが見える寸前にスマホにメッセージが届く
(2マイル後方に
かなり長距離で後を付けられているとリカルドに教えて貰い目を剥いて驚く
最初の打ち合わせでロードアイランドに到着した時には連絡し、ビルの上からチェックする手筈であった
その時は
(そんな所から追跡をチェックしても見つからんと思うんだけど……)
そう内心呆れたがチェックが功を奏してキリチェックを発見し、手前で待機していたバンにはグレゴリーが待機していて辛うじてアジトの明確な位置はバレずに逃走に移れたのは流石、一流の技術と能力が成せる連携であった
急発進や旋回により後部座席で悲鳴を上げながら転がるエリクソンとアンナをしり目にグレゴリーは慣れない車で必死に付いてくるキリチェックをバックミラー越しに確認する
「流石、
そう呟きながらたちまちのうちに距離を離していく……見えなくなってもお互い、手を抜く事などしない
お互いの
「畜生、負けるかッ!」
必死にそのテールに食らいつくキリチェックのトラックのタイヤが突如バーストし、操舵不能になりガードレールに接触して止まると車から降りて、乱立する後ろのビルやアパートを見る
あの後方のビル群のどこかでタイヤを狙撃した
そしてゲートをみると強行突破するグレゴリーのバンがマンハッタンに消えていった
その場でキリチェックは追うのをやめキャロルを呼び出す
「どう首尾は?」
「逃げられた。 だが、目標や奴らのアジトはブルックリン地区のどこかだ。ゲートを閉じて地区封鎖して徹底的に洗うぞ! 部隊を連れてブルックリン橋のゲートで会おう」
もはや追い詰められなりふり構わなくなったドラガンは悲愴な面持ちでキャロルに合流すべくブルックリン橋に徒歩で向かう
そこにはかなりの人数の武装隊員やZ、それを引き連れたキャロルがすでに移動して待機していた。
「そちらの状況は?」
探索中心のキャロルが追跡担当のキリチェックに尋ねる
「スタンとグレッグは現在追跡中との知らせが来てる。今、守備はリカルドしか居ない」
「
キャロルが防弾チョッキを着こみつつ軽口を叩くとキリチェックが尋ねる
「なんだ? 意味が分からん」
「
「それでも
冷徹に窘めるとキリチェックは部下にZを放つように指示をする
「急げ、時間がない」
スタンにグレゴリー、そして
(奴らが戻ってくる前に身柄を確保せねば……)
のたのたと動くZにイラつきながらもキリチェックは前を向いた。
――――――――――――――――――――
一方、リカルドが別のビルから店に走って戻って来ると全員を呼び寄せ、装備を持たせて移動に入る
「アンナ姐さんは? ブースさんは?」
「二人ともとりあえず無事なはずだ、迎えに出たドライバーが天才だからな」
心配するソフィアに代わりリカルドに尋ねるマーティだったが、いきなり棒をナップサックを持たされる
その隣のソフィアにナップサックとライト、ジュリアとアニーに銃と装備を持たせると地下道への隠し扉を開き、全員を移動させる
「リカルド、この後はどうすんの?」
ジュリアがサイレンサー付きのUZIを携えてリカルドに尋ねる
「スタッテン島に出る。あそこは本土でもどこでも逃げやすいからな……それとこの後しゃべんなよ! 奴は聞こえるから!」
キリチェックの能力のヤバさを知るリカルドは全員に沈黙するように指示するとスマホでスタンとグレゴリーにメッセージしたのち、扉を閉めて地下道を進んでいく
マチェットを片手にM-16の先に中国製のOlight X9R Marauderを取り付け強力に先を照らしながら進む
本来なら裸眼で疾走するところだが、護衛対象が居るので
アニー達に気が付いたZが寄ってくるのをリカルドは難なく蹴り飛ばして、頭を蹴り潰して処理する
出来るだけ早く音を立てずに始末するが、これでもヤバイと内心イラつく
(気が付くなよ……やりあうと面倒だから!)
攻めのリカルドと護りのドラガン、体術や運転技術はほぼ同じだった、本気の戦闘なら正直わからんが、戦闘になった時点で無勢のリカルドは詰んだようなものだ
(一刻も早く逃げないと……)
下水への通路を開け、ジュリアを殿にして周囲を確認する。
反吐が出る臭さだが背に腹は代えられない。眉間に皺をよせバンダナをマスク代わりにして先を進む
ルートは頭の中に入っている。先頭に立ちZや目撃者が居ないか確認しながら進む
流石に大した障害もなくブルックリン地区の海兵隊ターミナル付近の廃棄物処理工場に出る
(流石に誰も居ないか……ツッ!)
窓から外を偵察して目を剥いて驚く
街中をうろつくZの群れとそれを操る部隊がそこら中に展開していた……
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