一蹴
自分の秘密の機材置き場代わりの工場で貯め込んだ銃器を総動員して出発し、現場である研究所まで10数マイルまで来たところで何かに気がついた先頭のトレーラーのモーリーがクラクションを鳴らし、無線で警告する
「うーい、もうパーティーが始まってるぜぇ~……俺、帰って良い?」
「帰るな! 後方に回れ、トラック隊は俺、エディ、エリック、トーマス、モーリーの順で……ホセとマーカスは斬り込んでくれ」
JPが指示を出しながら前方を確認するも音も煙も確認できない……ただでさえ連結したトレーラー3台の隊列で足取りは重い、そこでピットブルの二人を先行させる
暫く森に向かいながら住宅街を走ると寂れた大型ゴミ処理施設が見えた……
予め車に付けられた赤外線のコード発信機が認証されると通常の運搬車両の出入り口と別のフェンスが動き出し、道路を形成する。
ピットブルを先頭にトレーラー隊がそこを全力のスピードで走りぬけると同時にフェンスが閉まっていく
「この工場の中に擬装通路とは……穏健派も中々やるねぇ……」
工場を走り抜けながら、ピットブルを駆るホセが感心する
処理施設は住宅地の近くの設置は嫌がられるため、住宅地より離れた場所に配置されることが多い
それを隠れ蓑にして、ジョシュ達が苦労して侵入した入りにくい表玄関と身内は入りやすい勝手口を用意したのだった
工場内に入り収集車用の通路を通り抜けて工場の向こう側の墓地へフェンスを開けて通り抜ける……
墓地だけにZが徘徊しているのではないか? 下手に踏みつけてスリップしては大事だととエディは気をつけるが、全く居ない……それどころかどこか異質だったが次のJPの一言で疑問は晴れた
「擬装墓地を抜けると擬装用のゴーストタウンがある。敵先遣部隊はそこに居る筈だ! 叩くぞ」
無線での指示が飛ぶとモーリーの文句が流れるが、エディ達は座席の横のライフルを確認する
今は休業中の廃処理工場にも訳を知らない一般人が勤務している
その目を誤魔化す為に墓地を作り、その裏に偽造用の住宅地を作る。老後でもない限りは墓地に関心なとそう持たないし、その墓場の近所の住宅などなるべくなら住みたくないのが人情だ
そしてマーカスがピットブルの上部ハッチを開け、私物として確保した回転式弾倉型グレネードランチャー・ダネルMGL-140を構えながら準備をする
「おい、
そうホセが叫ぶとゲートを突破しゴーストタウンのメインストリートにスピード上げ突出したピットブルが躍り出る
そこにはJPが予測した通り、先遣部隊の本部用のトラックとストライカー、騒音に反応した警護の兵士達が居た
「ほい、戴き!」
MGL-140から連射された対戦車榴弾がトラックとストライカーを破壊し、その衝撃と熱波は周囲の兵士達をも巻き込む
そしてM240機関銃に持ち替えるが、攻撃に気が付いた教会兵士達が家々の影から動き出しては反撃を開始しだした
「ホーセー?」
「お任せあれ~」
マーカスにあおられたホセがピットブルを突進、旋回させると機関銃の射線もなぎ払うような形になり兵士達が倒れていく、ジョシュとシュテフィンのピットブルの動きが狂犬なら、ホセとマーカスの動きは闘犬であった……技術と意志が連動し、殺戮の相乗効果を生み出していた……
一掃射するととりあえずこの近隣の兵士は一掃されたようだった……
「掃除完了、先行くか?」
無線で後方で待機するトレーラー隊に連絡する
「ああ、後を付いていくから、とりあえずドンパチやってるゲートまで行ってくれ」
「
ホセは返事をするとそのまま発進し、トレーラーよりかなり速い速度で森へ続く道に入っていく……
心配したエディがJPに尋ねる
「JP、先に行っちゃうけど……」
「距離を開けたのは此方を発見させない事、先に
「俺は警戒ブザーじゃねぇぞ!」
エディにそう解説し、扱いに対し怒鳴るモーリーを宥めながらJPは使えると感心した
マーカスから予め聞いていたモーリーの能力は微妙にユニークで≪殺気がわかる≫のだ
細かい数値や内容までは判らないが、来る殺意の方向とその濃度と規模が大、中、小で表現されるのだ
それを使えば早期に敵が来るのが判る……それだけでも対応が迎撃、奇襲、逃亡等の選択が獲る事ができる
ゆえに合併する以前は移動の際にはモーリーは定期的に血液を補給しながら運転をし、マーカス達はリラックスする。モーリーの
「とりあえず、前方の殺気はなくなったぜ?」
モーリーがそう急かすとJP達はスピードを上げるとゲート前でホセ達が保安員達と言い争っていた
「俺達がそちらに厄介になる予定の特務隊だってーの!」
「二人って此方は聞いてねぇぞ!」
「てめぇ! 後から本隊来るって言ってるべ?」
いらついたマーカスも参戦し激化する
トレーラーから降りるとゲート前にJPは歩いて行き
「ホセ、マーカス! 黙れ! 我々は中央から派遣されて参りました独立特務隊であります。私はこの隊の隊長ジャンポール・フィリップと申します。何卒、保安部長か施設長であるランバート教授にお取次ぎ願いたい」
恭しくも形式が整った気迫のある挨拶で保安部員を畏怖させる
「わ、わかりました。直ちに問い合わせますので、申し訳ありませんが、暫く待機の程を……」
「了解致しました、では、挨拶がてら周囲に展開する先遣隊を一掃してきますのでお味方にご一報を願います」
「え? この隊で行かれるので?」
「いえ……モーリー! ピットブルの運転席へ、トーマス、ホセ、マーカス! 攻撃は頼んだぞ!」
『
ヤレヤレと言いつつもピットブルに乗れるのが楽しいらしく喜んで運転席に座ると外側のステップにマーカスとホセがHK416アサルトライフルを片手に、上部ハッチにM240機関銃を構えたトーマスが配置する
「おい、トーマス! オレっちの指、吹っ飛ばすなよ?」
「頭じゃないのが悲しいな……」
背の低いホセの無口なトーマスへの弄りに代わって突っ込むマーカスにJPの怒鳴り声が急かす
「とっとと行って来い! この分だと仕事が山積みだぞ!」
発進するピットブルをJPとエディ、周囲を警戒するエリックが見送る……その予想は想定外に
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その頃、新たな愛銃としてマクミランTAC-50を選択し、専用射撃場で慣熟訓練中のトーレスに先遣隊全滅の報を知らされた
配給された新型の戦闘薬はポケットに仕舞い、持って来させた鎮痛剤代わりのIWハーパーをボトルであおると秘書代わりに付けられた補佐官に部下の治療状況を尋ねる
「全員ほぼ、治癒しております。新型の戦闘薬の効果は絶大ですね。それと先ほどS3が到着したとのことです」
それを聞いたトーレスは痛みに溜息を吐きながら補佐官に指示をする
「ほほう? それは良いな、では各
「3は帰島途中に各種データは取れましたが……至急、問い合わせ致します。装備については畏まりましたが……」
戦闘薬を飲んでなさげなトーレスを問いただそうとするが機先を制される
「それと……ちょい聞いて良い? 通常の人間のクローンを作るのに何日掛かる? 生きてるだけで良い、通常教育さえも要らんのであれば?」
「推定1週間もあれば可能です」
「そうか……1週間か……ならば頼みが有るんだけど……」
そう言って肩に手を回し、内緒話のように話して補佐官に依頼すると血相を変えて反論してきた
「え!? ダメですよ! 出撃前に売春婦を抱かせるなんて……」
「大丈夫だ、勿論、3は除外する……そうして連中を毒抜きしとかんと俺が制御出来ないぞ?」
戦闘薬の
ガス抜きして、薬は切り札として持たせる……褒美にクローン慰安婦抱かせてやれば……これならば自分でも制御が出来る筈だ
「しかし……」
「スレイヤーの1と2は殆どデータ取ってるだろ? ならば違う
渋る補佐官に畳み掛けるようにトーレスが説得する……数日前とはまるで性格が豹変したようだった……
先日、
以前は現場に出ては
相手を観察し、その弱みや求める物を餌に交渉して自分に有利に運び、場合によっては前に出てくる事も厭わない……より前向きに行動するようになった
「判りました。……実はスレイヤーの素材の為、各都市部の直系の病院にて現地で募集した女性達に卵子の提供をして貰ってます。その中で卵子の提供が出来ない
「遺伝子データも取ってな……それと志祭、志教が教会の金で本部宿舎に呼んでる高級娼婦もデータを取らせてもらえ……そうすりゃ卵子を獲る手間が少なくなるだろう? 場合によっては作ったクローンをお偉いさんにあてがえる……金庫の金も減らないぜ……」
その相談をしながらほくそ笑む二人の顔は少なくとも善人の顔ではなかった……
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