ガルダの楽園 21



 最終的にシグネは北部『アラゼ』の庁舎近くへセヴァート族を移住させることに賛成した。一方で光重はアガナ語の学校と彼らの狩猟技術、また防寒具の加工技術を教える学校を開設する事で協力を得た。


 セヴァート族はアガナ語を公用語としていたが、シグネは「あの貧乳女と塩辛女の言っている意味がわからんのは苦痛だ。言葉を教えろ」と光重に詰め寄った。

 勉学に触れたことがないシグネだったが、フェオドラが言うに「なかなかに素質はあると思うわよ。くさいけど」とのことだった。

 言葉は心で伝えるものだ、と偉い言語学者が残した言葉があるそうだが、シグネはまさにそれだった。彼女は本能的に言葉を理解し、意志疎通をする術を心得てゆく。これは信じがたいことだが、アガナ人の多くは「動物と会話する」特殊な力を持っていた。言語を持たない動物との意思疎通が出来るのだから、異言語を持つ人間と言葉を交わす事は比較的難易度が低いのかもしれない。


 そもそもアガナ語は独特の音韻を踏むためか、その『音の響き』が動物たちと対話するのに重要な役割を果たしているのではないかと光重は推測した……が、それを立証する術はない。ただルモイをはじめとした森の動物たちはアガナ人と対話するように反応を示し、最終的には彼らに従って道中を進むのだ。

 それはガルダの春塵がユキヒョウ『ヤブユム』と会話する姿を彷彿とさせた。

 言うまでもないが、光重でさえアガナ語の発音には苦労している。

 光重がシグネとともに庁舎に戻ったのは、年の瀬もせまった寒い日のことだった。光重が庁舎に戻るなり内山文京が叫んだ。


「内幸流斬星が怒ってる! 武力で『アラゼ』を制圧するって言ってきてる!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます