「作家として認めない」ことと対応して、「若いひとたちにやたら言いたがる」ひとたち
(前のエピソードと、関連してです!)
さて、前のエピソードでは「作家として認めない」って相手に明言するのもなんだかおかしな話だよねえ首をひねる、みたいなことを書いた。
私自身もずいぶん悔しい、理不尽な思いをしてきたけれど、まあ、そのうえで「書き続けてくることはできたし」、結果オーライかなって思ってもいる。
そのうえで私がさらに、ざわざわした気持ちになることは。
たぶん、そういうことを言うひとはいつでも一定数なぜかいて、もしかしたら私にそういうことを言ったひとたちというのもそういうところはそのまんまで、だから、いまでもそういうのを
たいてい「作家として認めない」なんて言うひとはなんらか自分自身への疑いとかが足りてないんじゃないかというのは前の話で書いた通りだ。私は正直なところ、「作家として認めない」と言いたがるひとは、相手のことを想ってではなく言いたくて言ってんじゃないかなあという印象がある。そうやって判断することを、まずしたいんじゃないかって。相手が見えてるんじゃなくって、「自称作家」のやつをやり込めてやるぞお、みたいな。
私はそういうふうに「作家として認めない」と言われてもやってこれた。私は、悪い意味でも強いのだが、こればかりはよい意味でその強さが作用した。私の強さは、裏を返せば鈍感さでもある。だからこそある程度は気にせず、それでも書き続けることだけが
でもそんでもそんな私でもやっぱり気にはしていたのだ。
こんだけ鈍感な人間でも、やっぱりこうやって振り返って書くくらいには、そういうのは、のこる、のだ。
だったら敏感なひとにとってはいかほどか。
そしてもうひとつだいじなのが、どうしても社会の構造上か人間の構造上かなんなのか、人間は、「未熟とされる」人間にやったらめったら、そういうことを言いたがる。
つまりして若い人間に対してだ。
若さというのは自由さでもあるがもどかしさでもある。当然。若いというのはまだなにものにもなっていないということだ、あるいはいまなにものかになりつつある最中だということだ。そうやって過程にいるので結果としていまは実績とかの目に見えるものはないかもしれない。だが水面下では進んでいるのだ。確実に。
そういう相手に対して表面だけを見て「作家として認めない」ということの、すさまじい酷さよ。「才能があるなんて認めない」って、だって、そんないままさに才能をひらこうとしている相手に対してなんだってそんなことが言えるのだろうか。
私はそれでも筆を折ることだけはなかった。でもそれは、私自身がほんと能力的に全般的に無能だったゆえ文を書くくらいしか差し当たってできることがなかったのと、やっぱり、強さによってなのだ。あとはもうほんとうにのちに夫になるそのときの彼氏が全面的に信頼してくれたので、助かったっていうのもある。
つまりはめぐりあわせでしかなかったのだ。
だったらほんらいはそうなれるひと、そうなるべきひとが、たまたま偶然ほんとにちょっとした単なる偶然で、そのときだけにはめぐりあわせがなくて、そういう言葉によって潰されて、折れて、筆を折ってしまう――その可能性とは、いかほどか。
暗澹たる気持ちになる。
私自身がそんなに優しいほうでもない。思いやりがあるほうでもない。わりと無自覚にひとを潰しているらしい。だから私だって、いままでだれかのなにかを奪ったり、摘んだり、理不尽に断ち切ったりしてきたのだと、思う。
でもだからこそ、自覚できる範囲ではそういうことはやりたくない。
とくに、とくに。若いひとたちに、対しては――。
信じてくれた上のひとたちがいるからやってこれた。人生の先達の、ほんのちょっとの視点や言葉やその温度が、生涯道を照らす道しるべになった。
だからなにがあったってほんとうはその真逆にはなりたくないのだ。
若いひとたちにとっての、暗闇にはなりたくないのだ。……でもね、むずかしいよ、もう私もおとなである以上、ほんとうはもうすでに若いひとたちのなにかを、わからず、知らず、認識できず、軽視して、まるでてんで無知でいて、なにかを、そのひとたちのなにかを損ない続けているのだから。でも、歴史は繰り返すだなんて澄ました顔でいたくない。私はこれからのひとたちにとっての暗闇ではなく、ほんのちょっとでいい、ヒカリゴケ程度でもいいからその道標になれたらどんなに幸いだと、私自身がどんだけどうしようもなかったとしてもそう想っているその気持ちだけは、ほんとうだ――自分自身が若かったころに、「作家として認めない」という心ない言葉と同時に、その真逆の、心ある言葉を受けてきて、それでどうにかなってきたから、それはなおさら思うんだ。……おとなはいつだって、自分勝手。
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