第14話 孤島の名探偵②

 三日月島には小さな港があった。その港にクルーザーを到着させると、碇を下ろした。


「ここが三日月島か……。それにしても何もない島ですね」


 三日月島の大半を別荘が占めており、小さい公園がある程度だ。

 その三日月島で三日間共に過ごすとは言え、何をすれば良いのだろうか。僕達にはさっぱり分からない。

 それにしても、池下さんが持つ大量の荷物はいったい何だというのだろうか。あまりの量に僕と桜山さんも持つのを手伝わされている訳なのだが、彼はこれが何であるか一切教えてくれやしなかった。教えてくれても良いだろうに、どうして教えてくれないのだろう。


「何もない島だから、僕達の宇宙研究部の活動に最適な場所だって訳さ。貸してくれた親戚には感謝してもし尽くせないよ」


 そう言った部長は、扉を開ける。

 中に入ると、広いホールに僕達を待ち受けていた。

 ホールの右側に案内されると、そこには食堂がある。


「ここは食堂になります。毎日朝・昼・晩の食事はこちらで提供されます。時間になりましたらこちらにお集まりください。時間は、朝の場合は七時、昼の場合は十二時、晩の場合は十八時になります。よろしくお願い致します。それでは、それぞれの部屋についてご案内致します」


 そうして、そこから離れ、階段を登っていく桜山さん。

 僕達もそれを追いかけるように階段を登っていった。

 それからは、それぞれの部屋を案内していった。

 一番右奥が部長、次いで池下さん、金山さん、あずさ、アリス、そして僕。

 順番としては、こんな感じだっただろうか。


 部長 池下さん 金山さん あずさ アリス 僕 階段


 だから、階段に誰かが向かうときは、足音で気づくということだ。流石に誰が降りていくかどうかまでは、実際に目の当たりにしないと分からない訳だけれど。


「では、後は娯楽施設について説明致します。各自荷物を置きましたら、一階にお越しください」


 そう言って、桜山さんはすたすたと下に降りていった。

 僕達はそれぞれの部屋に入って、荷物を置いた。

 部屋の大きさはビジネスホテルのワンルーム程度の大きさ。トイレも風呂も部屋の中に完備されており、廊下を通ると、ベッドがあるというシステムだ。テレビは流石に用意されていなかったし、コンセントも必要最低限しか用意為れていなかった。これじゃスマートフォンは使わない方が良いだろう。そもそも電波が通らないって言うし。

 荷物を置いて、僕は一階に向かった。すると、既に全員が揃っていた。何というか、早い仕事っぷりだと思う。


「遅いぞ、いっくん。部屋で一眠りしていたんじゃないだろうな」

「まさか、そんなことがあるとでも?」

「まあ、いっくんの不祥事は別に良いじゃないですか。取り敢えず、娯楽施設について終えて貰って、ほんとうに解散してしまいましょうよ」

「それもそうだな」


 そういうことで。

 再び桜山さんによる三日月島別荘の説明の再開だ。

 食堂と逆の通路を歩くと、蔵書室に到着した。蔵書がたくさん用意為れており、埃も被っていない。常に掃除をしているのだろう。というか、誰が掃除しているのだろう、この部屋を?


「……蔵書室は自由に使って良いの?」


 言ったのは、アリスだった。


「ええ。大丈夫ですよ!」


 桜山さんは直ぐに頷いた。

 考えたら、アリスは良く参加してくれたものだと思う。

 だって、生徒会選挙すらボイコットした人間だぞ? そんな人間が、部活動の合宿に参加してくれるのか、と言われるとまた微妙なところだと思ったからだ。

 ほんとうに全員が集まるのか――なんてことを考えていたら、桜山さんが僕達の前に立った。


「さて! これで説明は以上になります。何か質問はありますか?」

「特になし」


 部長の言った言葉が総意になった。

 そうして僕達は、説明から漸く解放される形になるのだった。



   ※



 説明から解放されたから、好きなことをして良いって?

 そんなこと、誰が決めたんだい?

 部長はそんなことを言い出しそうなオーラを放ちながら、僕達を食堂に集めるのだった。


「一応言っておくけれど、今回の合宿はただの遊びじゃないことは君たちも理解していることだろう」

「はあ? ただの遊びじゃないなら、何だというの。私、生徒会の仕事溜め込んでわざわざここまでやって来たんだけれど。だったら私帰るわよ」

「それは出来ません。三日後に貴方達を届けるという約束になっていますから」

「そういう訳だ。……だから、僕達がやることをここで発表しておこうと思う」

「何をするのよ?」

「答えは単純明快。……UFOを観測すること、だっ!!」

「……あんた、まだそんなこと考えていたの?」

「考えていたの? ではない! 実際に我々はUFOを目撃しているのだ、それも二度! そうだな、いっくん!」


 そこで僕に振るか!?

 僕は突っ込みを入れたくなったけれど、でもUFOを見たのは事実だし、うんと頷くことしか出来なかった。


「あっきれた……。あんた、ほんとう昔から変わっていないわよね。UFO関連の番組がやっていたら毎日釘付けになっていたレベルだったし」

「今でも釘付けになっているぞ? 放送回数が減って若干悲しいけれどな!」


 いや、どや顔で言われても困るよ。

 それに対して不満な表情を浮かべている金山さんも金山さんで困るよ。

 というか、何をするのか結局はっきりと見えてこないのだけれど……。


「あ、あの、結局僕達は何をすれば良いんですか……?」

「それは良い質問だな! 僕達がやること、それは天体観測だっ!!」

「……見えない物を見ようとして?」

「望遠鏡を担ぎ込んだ……じゃなくてだな! 冗談抜きで、僕達が行うのは、天体観測だ」

「……ええっ。UFOはどうなるんですか?」

「焦るな、諸君。UFOもちゃんと観測出来るカメラを用意している。天体観測はいわば二の次。この三日月島は名前の通り、三日月が良く見える島として有名な無人島なのだよ。僕の親戚が買い取るまでは観光スポットとしても有名だったらしいがね」


 それって、とどのつまり、金に物を言わせて観光スポットを買いあさったってことか?

 それって何というか、残念な結果しか生み出さないような気がするけれど……。


「という訳で、だ。天体観測をしながら、ついでにUFOも目撃してしまおう! というのが今回の目的だ。二泊三日だから観測出来る機会は二回しかない。その二回でUFOをうまく観測出来るかどうか、それは君たちの運に関わってきているっ!!」


 という訳で。

 天体観測WithUFO観測。

 その火蓋が切って落とされるのだった。



   ※



 二階は、ベランダのようになっている。

 どういう風になっているかというと、説明するのが大変なので、簡単に言ってしまうと、二階の窓側は全て引き戸になっており、そこから外に出ることが出来るようになっているのだ。

 そこに三脚と望遠鏡を持ち込んで、天体観測に浸っている。

 ……と行きたいところだが、この日程では午後六時では未だ夕日が沈みきっていない。

 だから星空を見るなんてことは難しいのだ。

 だから先ずは、食事を取ることになった。

 夕食に集められた面々は、既に配膳されている夕食を見る。


「本日は、給食のようで申し訳ございませんが、皆様の舌に合わせてメニューを選ばせて頂きました」


 ハンバーグに付け合わせの野菜、ポテトサラダにバターライス、コーンスープといった感じだ。確かにファミレスに行けば八百円ぐらいで食べられそうなレシピのような気がするけれど、味はどうなのだろう?

 ハンバーグを一口分切り分けて、口に入れる。

 直ぐに肉汁がしみ出してきて、とても美味い。

 さらにハンバーグにかかっているグレービーソースが食欲をそそっている。これはバターライスも進むって訳だ。


「バターライスはおかわりも出来ますから、事前に言ってくださいね」


 それは助かる。

 何せ中学生という食べ盛りの人間にとって、おかわりが出来る環境というのは大変有難いものなのだ。

 そんなことを思いながら、僕はポテトサラダを食べ始めていく。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます