第66話旅といえばコンシェルジュ、コンシェルジュといえばヤミちゃんかリットさん


 …………次どこ行こう。


 サガットの栄光が通用して、かつ離れすぎてないところ。いや、サガット金貨との交換ができないとやはり金銭面で厳しいんだよね。

 かなり遠くまで栄光は届いてるはずだけど……



「それで私ですか」


「旅といえばコンシェルジュ、コンシェルジュといえばヤミちゃんかリットさんですから。お願いしますよーリットさんー」


「旅行は業務の範囲外なのですが……そうですね、南はリュウケンより南までいけますが、リュウケンが国内通過を嫌がるのではないでしょうか。西はサンクチュバリヌスが蓋をしていますが迂回してその先に進むのであればなら結構先までサガット金貨が通用しますよ」


「東はどうなんですか?」


「ブキョーの東に海がありまして、その海を渡った島に島国にみんな大好きブッシドーという島国があります。大好きすぎて飽きられていますね。」


「東はないな。ググルガンを南下というのはどうでしょうか。良い直感が働いているのですが」


「狐の直感は重要ですよね、わかりましたググルガン近くのギルドをリストアップしてみます。」


 待つこと数分、良い顔をしたリットさんが戻ってまいりました。


「直感はすごいですね、ググルガンから南に10日といったところに交易町『トレビス』が存在します。もちろん冒険者ギルド付きです。現在の情報ですとリュウケンの領土ではありますが、交易町なら通過させないわけにはいかないので、まずここに行ってからその先を探すというのはいかがでしょうか。踏み固めた道程度ならあるそうです」


「おおー、なんか異文化が交流していそうな感じがしますね。今なら道もつながってますし言ってみようと思います!」


 赤ちゃん大切にね、と声をかけて冒険者ギルドを後にし、いろいろ準備……うん、準備ね。




 うん!よし!




 旅人のバックパックと希薄のクロークを新たに装備して、荷物を馬車に詰めてしゅっぱーつ!


 順調にサカキまで到着し、ググルガンへの通称『最初の道』を通過。ググルガンで一休みをした後更に南へ。


 高Lvポニーとドワーフ馬車の組み合わせは本当に凄くて、ここが踏み固めた道であることを忘れるレベルで快適に進んでくれています。

 泥道でも、それが登り道や坂道であったとしても、ものともしません。一度滑ってハマったけど両軸に動力を回したら簡単に抜け出せたよ。

 もしかして、そこら辺の王族の馬車より凄いのでは。


 ちなみに1人で冒険するリスクってのもあって、今わかっているのは睡眠が十分に取れないことです。

 私は睡眠耐性が熟練まで上がっているので夜間寝ずに見張りをやっていても良いのですが、朝だからって安心というわけじゃないですからね。

 熟練した疲労耐性を利用して、日中に小刻みに睡眠をして補っている形です。

 あー、そういえば1人じゃ遺跡やダンジョンは危なくて無理ですね。リカバリに入る人がいないのに突入するのは無謀です。蛮勇です。

 各地に用意されている、初心者ダンジョンは別ですが。

 アンナさん拉致るべきだったか?でも多分Lv20で止まってると思う……


 つらつらとそんな事を考えていたら町の周りの村落が見え始めました。もうそろそろ町ですね。もしかすると町レベルを訪れるのは初めてかな?

 村いって街いって大都市いって……ググルガンは街ですし……うん、殆どないのはわかりました。楽しみですね。


 そろそろですねーどんな光景が広がっているのかなー


 交易馬車がいっぱいタムロしている光景が目に入ってきましたーなにそれー


 聞き込みましょう

「こんにちはー、皆さんなぜ町に入らないのですか?」


「おお、可愛い嬢ちゃんだな、それで交易してるのかい?立派だねえ。ええとな、町がアンデットで溢れかえっちまって、交易どころじゃなくなってるんだよ。幸い町の外にはアンデットは出ねえから、こうやって兵士が来るのを待ってるってわけよ。」ぱっと見雑貨商かな


「無理だよ無理無理、ここの町長の無能さを知ってるだろ?まともな兵士なんて呼べっこない。ギルドに遠方依頼出して冒険者を募るしかねえよ。」武器っぽい匂いと音がする、金属系かな


「それを町民じゃない俺たちが出すってのか?交易する金がなくなっちまうよ。俺の家には腹すかせた子供が今か今かと帰りを待っているんだからよ。」匂いも音もないので希少品系小物かな。


 その方法、その言い分、凄くわかるなあ。出来ないこともまたわかる。互助会でもアレばよかったのにね。


「厳しいですねえ……町長ってどこですか?避難はできているのですか?」


「町長の邸宅は町とは一本道で離れているところに建ってる。そこに引きこもってるぜ」


「ありがとうございます、ちょっと行ってみます、私冒険者なんですよー☆」


 挨拶をしてその場を離れ、町を一周している道を走らせて様子見しつつ町長の家へ。

 とりあえず昼間もしくは侵入者がいないとアンデットが出てこないみたいだ。

 そして壁は木の杭に木の板を貼り付けただけの超簡素なもの。スタンピードが起きにくい土地なんだろうね。『壁とスタンピード、その関連性。』より。


 町長の邸宅につくと、そこには避難民が2分されていて、その間で小競り合いが起こっていました。あ、これ面倒くさいやつだ。


 えっと、叫び声はですね、「町長辞めさせて新たな町長で事態を収束しよう」と、「今やっても遅い、町長を貴族領に運んで直訴しよう」

 この2種類ですね。……無理じゃねえ?兵隊こないってことは、どこの貴族もここは呪われたってことで捨ててるよね。騒動が始まって何日か知らないけどさ。


 しかし私はですねえ、見捨てられない立場なんですよ。


 ググルガンの必要品はここで一手に担っているんですって。つまりそれは恐らくその奥の本国のも。

 コムギを運ばなければ最悪ググルガンが飢餓に陥るかもしれない。本国に続くあの隠れた道で小麦輸送なんて、出来そうにない。


 ググルガンの軍隊を呼びたいけれど、ググルガンは今のところどこにも所属していない都市なので、そこの軍隊を呼んでくるのは少々よろしくないです。

 侵略とみなされて最悪ググルガン街に攻撃が来てしまう。来れるかどうかは別としてもね。敵対される可能性があるんですわ。



 ふーん、どこからパズルを解いていこうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る