第42話 残せなかったもの

あれからまた1週間経ち、倫典と終活ノートを見返す。


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俺のやりたいこと。


・三葉とデートしたい!!!

→まだ!



・悠子と話をしたい

→まだ!


・職場に行きたい

→○


・剣道をやりたい

→○ 欲を言えばまだやりたい


・好きな焼肉をたくさん食べたい

→食べたい……


・桐生と会って話をしたい。殴るかもしれんから誰か付き添い頼む

→もっと話をしたい、湊音付き添いで。


・桐生と剣道したい

→○


・大島家の借金問題を解決

→×


・スケキヨの体調を病院で診てもらう

→少し胃が弱ってるようだ


・三葉の胸のしこり

→○良性。


・俺の荷物整理

→○



・三葉の再婚相手選び

→倫典でいいのか?


・湊音とも話をしたい

→もう少し話したい


・婚活メンバーで飲み会をしたい

→室田の連絡先が変わっていた。


・悠子の結婚式に行きたい

→行く方向で。もちろん。誰で行くかは…


・三葉とやりたい

→やりたい


・三葉のフレンチトースト食べたい


・李仁と三葉のことがきになる




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「まだ、僕は再婚相手と認めてくれないんですか?」

「その件に関しては後回しだ」

「三葉の身体でそう言われると三葉に振られた感じがするぅ……」

倫典は終活ノートを持ったまんま後ろにひっくり返って、駄々こねてる。みっともないな、アラフォーの男が。再婚も大事だが……



大島家の借金問題の方が先だ。

「結婚よりお金かよー、そうだよー、金がないとダメだもんなぁー!はははーっ!!!」

まぁ、やけになるな。


俺はまた三葉に乗り移り、スケキヨを太ももに乗せ、別のノートを見てる。そう、借金ノート。


遺品整理した際に売れそうなものを倫典を中心に高値で売れそうなところで取引してもらったのだが、そこまで高値では売れなかった。


なんかよう知らんがフリマアプリとやらで取引したみたいだが、なかなか売れずに値下げに値下げしたらポツポツと売れたがまだ売れ残っている。


「李仁が常連のお客さんで目利きの良い古物商がいて、掛け合ってくれたみたいだが……期待はできないみたいでさ。」


……俺の残った貯金も使い切っても、保険金払っても……て、俺もあんなに早く死ぬとは思わなかったし、貯金もほとんどしてなかったに近い。俺も倫典のこと言えないな。

「ニャー」

「スケキヨ、お前も心配だよな……俺は何も残せなかった。財産も、子供も」


子供の代わりに捨て猫のスケキヨを育ててきた。先の見えない不妊治療……不妊治療に充てたお金も泡のように消え、子供はもう無理だから諦めた。

その矢先の事故だった。


「三……じゃなくて大島さん、泣くなよ。お金は……最終的には僕がなんとかします。」

なんとかしますって、倫典の財産ではない、倫典の家のお金だ。こいつは金持ちボンボンの頭だからそんな余裕ぶった考えなんだ。


子供だって……倫典とだったらすぐ子供はできるに違いない。だがもう三葉も43だ。子供だけでなく母体である三葉の負担も大きい。それを言われたのも不妊治療をやめた要因だ。


それにもし子供を産んだとして、働き手が減るとさらに借金返済に遅れが出る。


情けない、俺は本当に情けない。こんな俺と一緒になったから三葉は……。

「大島さん、今そんなに泣いたら……抜け出た時に三葉がなんでこんなに目が腫れてるのって、不思議に思いますよ……今保冷剤持ってくるから。」

……なんだ、このイケメン……やべ、惚れるだろ。


恥ずかしいことに涙がボロボロ出てきたようだ。鼻水まで出て。


三葉と俺は20数年前に出会ったんだ。俺が教師で、三葉は大学生で教育実習生で。

彼女は俺のことを好きだったのがすぐ伝わった。でもその当時俺が好きだったのは同じ教育実習生の元妻の美帆子だった。


実はその時はまだEDでは無かった。だからその時もし、美帆子でなく三葉を選んでいたら……きっと子供はいたのだろう。


そんなこと言ったら悠子は……生まれなかったことになるか……人生ってわからんな。



「はいはーい、冷やして冷やして。シャ○レーゼのお菓子みんなお供え物として持ってくるから、保冷剤たくさんあって助かるわ」

ガーゼに包んだ小さい保冷剤2つを倫典は俺に渡してくれた。


気が効く男だ。……俺もあくまでも体を借りている身だということを忘れてはいけなかった。あー、冷えるー。


倫典はウーンと何かを考えてたかと思ったら手を叩き、思いついたようだ。

「もうこうなったらやっぱりあの手を使うしかない!」

「あの手?」

倫典は三葉の机からあの日記帳を取り出した。


「三葉さんの日記の出版化!これしかないって!」

「最終手段きたーーーーー」

俺は正直嫌だったのだが、最終的には、とは思っていたが……



「て。実は!もう話は進んでいる。」

何気にドヤ顔?そして勝手に話を進めるな!

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