遺品整理編

第37話 部外者

『いやー、もう少し長く続くとは思っていましたけどね。残念でした。』

 と、語る懐かしの顔。俺の元妻の元夫であり、俺の友人でもあり、今や遅咲きながら人気役者になったそんタケルだ。


 久しぶりに見る彼は俺と同じ年(俺が生きてたら)とは思えぬほど、生前より若く見える。何か整形したりとか注射とかでなにか入れてるのだろうか。


 まぁ室田は、こいつは室田尊むろたたけるが本名なんだが、母親が歌劇団の女優さんだからその遺伝か顔の造形は美しいんだよな。掘りの濃い顔、うらやましい。

 まぁ背格好はずんぐりむっくりなんだが。その辺は鍛えたのか、昔よりもバランス良くなっている。はぁ、芸能人だから色々お金かけてるんだろうなあ。




「もぉ、スケキヨったら。お行儀悪い!机の上に乗らないで。」


 だってー、机の上に乗らないとテレビが見にくいんだよ。今はスケキヨに乗り移ってまったりしていた。

 彼の妻だった美帆子は一般人のため名前も顔までは出なかったが……彼女はどうしてるのだろうか。バツ3だぞ?塾講師をしてるとは聞いていたものの……。


 気になるが、三葉がテレビを消してしまった。


 また昨晩は三葉の体でみんなとバーに行ったのだが……まずは彼女の胸のしこりはまぁまぁいいってことでホッとしている。だが油断はできない。良性であるという見解を信じよう。


 今日も1人でお留守番……三葉に行ってらっしゃいを言い、(もちろん、ニャーニャーなんだけど!!!!)部屋でゴロゴロする。あ、スケキヨの首元にアクセサリーは戻したからスケキヨに乗り移れた。しかし仏壇も飽きるし猫も飽きる。


 テレビも見放題、にゃおゼリーを多めに隠しておいたからうまくスケキヨの体を使って食べることもできる。


 まぁ猫なら移動できるからいいかと思ったが、猫専用のドアは塞がれてしまった。これくらい多目に見てくれ。少しは運動したいんだ。外の世界に出たいんだ。


 んー、今日は何をしようか。そうだ、俺の遺品っつーやつ?荷物はどうなってるかだよな。スタスタスタ四足歩行して和室に戻る。和室の押入れに入ってそうだからなぁ……



 ガラッ……襖を開ける。




「うわっ!!」

「ニャオーン!」

 だ、だれだ?黒ずくめの男。ベランダの窓が開いている。



 明らかに、空き巣だ。


「なんだよー、猫かよー」

 びっくりしたのはこっちだよ、て、部屋の中物色してる。……土足で上がるな!!てか、10階のこの部屋にどうやって上がったんだ?


 俺も遠巻きながら見張る。なぜなら奴の腰元に金槌とナイフが……



 下手に動けば……俺……いや、スケキヨ……が。



 やつは小太りで丸めがね。見た目は優しそうだが、野暮ったい。


 あ、三葉の机を……やめろそこには彼女の日記が!!!


「たく、なんだよ、金目のものないな。」

 その手にしてるノートを見ろ、借金の額が書いてあるぞ!金目のものはないからさっさと出ろ!


「仏壇……若い男の写真だな。なるほどー、未亡人の家か。」

 ……。


 やつは仏壇の横にある俺と三葉の写真を手にする。

「やべぇ、こんな綺麗な未亡人……そうだ、仕事帰ってくるまで待って、襲ってやるのもいいなぁ……」

 うわあああああ!!!それだけはまずい!!!でもまだ午前中……てか白昼堂々よく忍び込んだよな、こいつ。このやろう…。


 ニヤニヤする顔が気持ち悪い。

「なんだよ、猫。こっち見んな!」

 見ちゃ悪いか!この部外者!


「はぁー、この男は俺と同い年くらいかなー。若くて死んだか、こんなべっぴんさん残してよー」


 こいつは幾つだ?たしかに俺が生きてたらこいつくらいなのか?

 んー。でもこいつが俺と同い年としたらこんな生き方してねぇな。


「俺もこんなべっぴんさんいたら死にたくても死ねねぇな。運が悪いなぁ。腹上死か?ハハッ。」


 死にたくて死んだわけじゃねぇし、腹上死したくても勃たなかったんだよっ!俺は!!!



 て、スケキヨの状態ではそう言えない。くそお!!!


 あ、今度は仏壇を……あ、やばい。終活ノートが……



「仏壇の備品とかもまぁ売れるから持っていくか」

 ……こいつは常習犯だな。金目のものはなんでも盗る。


「なんだ、このノート。字、きったねー」

 おい、そのノートに手をつけるな!!!


「終活ノート……こいつのか?」

 ウワーーーーやめろっ!!!!やつはふむふむとノートを見てる。


「奥さん三葉っていうのか?『やりたい』って?俺が堪能してやるよ。」


 くそっ、てめえなんかに三葉触らせるもんか!!!


「なぁ猫、お前のご主人様は全部やり切れたのか?何個か線引いてあるけど、やり切れなくて死んだのか、残念だったな」

 ……今現在進行形だ。まだまだ俺はやりたいことあるんだ!



「近くに来い、怖がんな猫。俺は猫が好きだ。昔飼ってた猫になんとなく似てる。」

 いや、近づいたらお前のその腰にある金槌で殴るんだろ?


 近づかないぞ。しかし奴が近づいてくる……。手が伸びる。

「おう、猫。お前いいのつけてんじゃん?」


 ……やめろ、それは……






 ブチッ!



 乱暴に引き抜かれたアクセサリー。金具が曲がってる。



 ニャー!!!!!!


「るっせぇ!猫!!!……刻印してあるのか……売れるんかなぁ。まぁ溶かせば売れるだろ。あ、猫も売れるかなぁ。まぁ老いぼれだから無理かっ。」

 ケタケタ笑う男。ほら、やっぱりこいつあぶない。




 ん?手にはそのアクセサリー……ポケットに入れた……





 まさか、まさか……






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