第33話 やっぱりあなたがいい。

 俺は朝起きると……見慣れた仏壇からの景色だ。


 俺は一旦仏壇に戻った。アクセサリーは再び湊音の持つ部室の鍵に取り付けられたが、今度乗り移る時は許可を得てからと、怒られてしまった。

 教え子に怒られるなんてな……。



 三葉はお酒の効果もあって深く寝ている間に抜け出たのだ。倫典は一緒に眠ってた。彼女はなぜ倫典が横に寝てるのか不思議そうだったが。


 彼女はいつも通り朝ごはんを作っている。今日は病院の日。あの胸のしこりの。


 俺はスケキヨに乗り移って2人の朝ごはんの横でにゃおゼリーを食べる。(キャットフードが美味しくなかったから倫典にたのんで用意してもらった。)



 三葉は顔の表情が暗い。

「頭痛いわ。病院行くの明日にしようかしら。」

 わ、やばい。また延ばす気か?それはやばい。

「いや、ダメだ。延期したら。早めに診てもらって少しでも気持ちを楽にしよう。」

 倫典が説得するものの、三葉は首を横に振る。


 なぜだ。もし何か悪いものだったら……治療すればいいのだが。お願いだ、行くんだ。


「三葉、僕は心配なんだ。悪くても良くても……結果がどっちであれ……僕は君を支えるって覚悟はしている。」

 三葉はそれでも首を横に振る。彼女は頑固なところもあるんだよな。でもなんでここまで拒否をするんだ。


「気持ちは嬉しいわ。ありがとう。

 わたしね、悪いものだった方が良いと思うの。」

 え……どういうことだよ。


「今日も和樹さんが夢の中に出てきたの。こんなに倫典に愛されているのに……愛してるのに、和樹さんが私の夢の中に出てきて……。わたしは和樹さんがやっぱり好きなの。」

 三葉は珍しく両目から涙を流す。……倫典は絶句している。


「もうこのまま放置して……何も手をつけられないまま、死にたい。

 不妊治療も体外受精も全部ダメ、借金も膨らんでる……もう絶望しかないの。それに倫典を、巻き込みたくないの。わたし1人でひっそり死にたい!!!!和樹さんのそばにいたいの!!!」

 三葉!!!!ダメだ、そんなことしてはダメだ!!!


「もう倫典はここに来ないで!!!!」

「三葉さん!どうしたんだよ!急にこんなことを!!!」

「ずっとよ!!!!五年前から毎日毎日考えてた!自殺しようとしたの。でも、あなたが、倫典がいたからなんとかなってたと思ってたけど……和樹さんが……忘れられないの。無理してた、無理して笑ってあなたといた!もう限界なの。」


 どうすればいいんだ?倫典には乗り移れない。三葉に乗り移ったら……説得できない。


 ……すると、倫典がスケキヨの首輪からアクセサリーを外した。それと同時に俺は再び仏壇に戻った。

 皿の割れる音がした。三葉……。あの時見た日記を思い出した。錯乱してるのか?



 そして数分後に倫典が仏壇の前に来た。


「大島さぁん!!早く僕に乗り移って!!!!早く!!!!」

 半泣き状態の倫典……。ネックレスをつけようとしてるが、なかなかつけれないようだ。



 ……なるほどな……。

 よし、倫典。乗り移るぞ。仕事遅れたらすまん!!!!


と思った時だった

「なあに?乗り移るって……」

三葉!!彼女は泣きすぎて目が腫れている。メイクが落ちてないのは……ウォータープルーフなのか。


そんなことよりも……あ、乗り移るタイミング……


すると倫典はネックレスを床に置いた。え?外した?


俺乗り移れないぞ!!倫典。おいいい!!!!


「よし、今日僕ついていく!仕事休む。

病気がなんだ、借金がなんだ。もう前も言ったでしょ。僕は三葉を支える。守る。色々思い出して辛くなったら僕に気持ちをぶつけて。死にたくなったら僕の胸で泣いてくれ。ずっと付き合う。なっ。

大島さん、いいだろ?」

お、おう……三葉は呆然としてる。


「誰に話してるの?」

倫典は仏壇にいる俺に向かって

「大島さん。」

「どこにいるのよ……」

俺喋れないっつーの。だから倫典、アクセサリーつけろ。お前にも俺の声聞こえないっていうのに。


「あ、早く病院行かないと。大島さんも怖がらずに言って来いって言ってるよ。心配ならその胸元のアクセサリー握りなさいって。何のためのアクセサリーだ?って。」

おい、倫典。勝手に……まぁ確かに、三葉……怖がるな。


三葉はアクセサリーを握った。

「今後のことも考えていこう。大島さんもなにか考えてくれるはずさ。」

おう、考えるさ。終活リストにも書いてある。借金問題の解決を。って、倫典。アクセサリーつけろ!乗り移りたい。


「ごめんな、大島さん。今日は僕が三葉について行く。お留守番してて。」

ちょ、まて!まて!

「もう、独り言?」

「独り言じゃないよ……」

と2人は部屋から去っていった。

おいー!!!



……まぁいいか。倫典、頼んだぞ……

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