第27話 俺はここにいる

 俺はまた仏壇から眺める。この三人の混乱してるところをなんとかするにはもう1人話せる人間が欲しい。残ってるのはスケキヨだけだ。


「なーんかさっきから倫典も三葉さんもおかしいよ。スケキヨの中に大島さんがいるとか、ないとか。」

 やはり湊音は信じてくれていない……。でも三葉はクスッと笑い出した。


「スケキヨの中に和樹さんねぇ。ふふふ。この子ったら最近ニャーニャーうるさいの。なんかお話ししてるみたいに。まるで和樹さんみたい。」

 ……三葉……俺はいつもここで見てたぞ。それにこないだはスケキヨに乗り移ってたぞ。気づいてくれたのか?三葉。今度は俺のいる仏壇を見た。


「和樹さん、どんな形でもいいから戻ってきて欲しいな。」

 ……三葉……いますぐにでも湊音か倫典に乗り移って……抱きしめたいが……


「なんてね。もう、5年も経つのに……いい加減に前に進まないとっ。ね!」

 ええええ、笑顔で三葉あっさりー!!!倫典と湊音は苦笑いする。彼女なりのその場を明るくする方法だったのか……なんか寂しいな、あっさりすぎて。倫典もいたたまれなくって俺の方を見ながら大声で笑う。笑うところじゃねーよ。


 すると湊音が声をあげた。

「あ、スケキヨの首輪にも同じネックレストップついてる……」

 え?スケキヨの首輪にも?気づかなかった……。倫典も確認して部室の鍵と、三葉のネックレスを比べた。


「全部お揃いよ。」

 三葉はネックレスを外した。どう見てもたかそうだが……それと刻印に俺の名前と日付。


「三葉、もしかしてこれ……」

「まさか気づいた?」

 なんだよ……これはなんなんだ?


「この日付、大島さんが死んだ日の刻印……」

 俺の死んだ日……。三葉は頷いた。


「この中に、和樹さんの骨のかけらが入ってるの」


 ……!!

「あ、僕聞いたことある!遺骨ジュエリー!ピンからキリまで値段するけど、刻印してあるから高いんじゃ……」

 そうなのか?湊音?てかそのアクセサリーの中にどうやって俺の骨を?それになぜ五年もたった今、それを……


「最近、知り合いの人がつけてるのをみて……。ほら、お墓ないから小さいけど仏壇買ってそこに骨壷置いてるじゃない?今更だけど、作っちゃった。私のとスケキヨの分作ったらもう一つサービスしてもらえたの。だから剣道部のみんなにもって湊音くんに一つ託したの」


 ……そうか、仏壇の中に俺の骨壷があったのか。だから俺はずっとこの中にいたのか……?


「なんかこんなの作っちゃって……未練タラタラね、私……」

 三葉……。


「そんなことないよ。大島さん、そろそろ外にも出たかっただろうし。大島さんも喜んでると思うよ、ねぇ。」

 ああ……。って返事できねぇなぁ。仏壇だと。



「そうか、スケキヨにこれつけてるから……大島さんがこの中に入れたのかな……」

 湊音がスケキヨを抱き上げて微笑む。

 すまん、湊音。またお前に乗り移るぞ。









「三葉……さん、大島さん喜んでますよ。絶対に。三葉が、今でも俺のこと思っててくれてありがとうって。」

「だといいな。……はい、この話はおしまい。ゆっくりしてってね。私はあっち行ってるから。」

 三葉、少し涙目だったが涙を見せず部屋から出て行った。



「そうか、このアクセサリーを身につけていると、大島さんが乗り移りできるってことか……」

「そんなファンタジーなことあるか?」

「それしかない……て、今は湊音に乗り移ったな……大島さん」

 湊音は、にやけた。倫典も笑ってる。


「でもこれはいつまで続くかわからんし、はい、終活ノート。今のうちにやりたいこと書いときなよ。」

 と一冊の緑色のノートを倫典から渡された。……たしかにいつまでこんなことできるかわからんよなぁー。


 俺は机に向かってノートを書いた。相変わらず俺は汚い字だな。右手だと書きにくいのは湊音の利き手が左だからか?


 倫典もチラチラ見てくる。やめろよ……。

「書き終わったら写真撮らせて。一応共有しといたほうが実現しやすいでしょ?」

 まぁそうかもしれないけどなぁ。変なことは書けねぇ。だからジロジロ見るなって。




 ……書いたものの、実現できるだろうか。


「じゃあそろそろ湊音から出て湊音を帰してやったら?」

 湊音はガラスの反射越しに見えた姿を見る。



 ……。


「しばらく湊音のままでいようかと思う。」

「は?明日僕も湊音は仕事だし……何かあったらやばいよ、やめときなって」

 湊音は首を横に振った。このノートに書いたことを全部やりきるには早めに行動だ。


 倫典はやれやれとした表情。



 ……。



「湊音の家、わかんないんでしょ?」

「うん、わかりません……」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます