第22話 猫で歩けば

 ぶらり猫散歩。今日の天気は快晴。散歩日和である。


 とテレビのように陽気に始めたものの、流石に人間と猫、見える景色も違うし楽しかったが数分で疲れてきた。


 そして車通りも多く怖いものである。車なんて猫なんぞ見やしない。あぶねぇな馬鹿野郎を何度思ったことか。アスファルトもガタガタしている。


 やっぱり人間がいい。



 そんなこと思いながらついたところは……「槻山つきやま家」

 湊音の実家である。前は確か二階建てだったが、平屋建てになっている。綺麗だから建て替えたばかりか。家庭訪問とか色々と家に行ったことがあったからな。

 周りはあまり変わってなかったし、苗字も珍しいから間違いないだろう。


 やっぱり一番に会いたいのは……娘の悠子だ。彼女が一人暮らししていたアパートがどこかわからないからとりあえず来たのだが、居たらラッキーだよな。居なかったら……



「ん?猫?ノラ猫か?……首輪ついてるから……」

 確かこのおっさん……あ、俺もおっさんだが……


「ひろみじぃー、ケーキ焼けたよー。あ、その猫ちゃん!」

「悠子、知ってるのか?この辺の猫か?」

「う、うん。てか隣の市からここまでどうやって……」


お、悠子……来てたのか?ラッキーだなぁ。そしてケーキを作ってたのか?

 たしかにそうだな、かなり……かなり……歩いた……もんな……













「あ、目を覚ました!」

 うわっ!!!!倫典!お前は三葉と朝っぱらからイチャコラしてたんじゃないのか?


 隣には悠子が座っている。とても心配そうであった。場所ここは……?


「スケキヨ……?大丈夫?ちょっとミルク持ってくるね。」

 悠子は俺を撫でてくれた。とても優しく……柔らかい手で。


 彼女が部屋から出てすぐ、倫典が

「大島さん!勝手にでちゃダメだろ。しかも三葉の家からこの家までどれだけあると思ってる?!いくらなんでも魂は元気でも体はご老体のシロなんだぞ!」

 悠子って、馴れ馴れしく呼び捨てすんな。元カノだからといって。もう悠子は他の男と結婚するんだ。お前は三葉と結婚するんだろ?未練なんてないよな?


「悠子が僕に電話してくれたんだよ。うちの前に三葉の家にいた猫が来てるって。

 さっきからニャーニャー言ってるけど今猫だから何も話せないと思うけどさ。」

 ああ、言いたくても全部ニャーだよ。



 すると玄関から聞き覚えのある声が聞こえた。……湊音!!!今彼は李仁と結婚して新居に住んでるはずだが?


 すぐ湊音は部屋に入ってきた。

「倫典、どっしたの?あれ、その猫……確か…」


 なんか俺、胸騒ぎがした。湊音をじっと見る。……まさか、乗り移れる?











 ニャー……

 スケキヨに抱かれている倫典を見てる俺。まさか……



「倫典!」

「どしたの?湊音。」

「じゃなくて!」

「まさか!!!!」

 倫典はスケキヨと湊音を交互に見る。


「大島さん……!湊音に!?」

「乗り移り先増えた」

 口の端が上がった。湊音はスケキヨを抱いた。ごめんな、無茶させて。ああ、久しぶりの抱き心地。少し痩せたな、こんな体でごめん。


 すると悠子がミルクを持ってやってきた。

「パパ、シロちゃんにミルクをあげて。はい、大人たちはわたし特製のケーキ♪つわりが治まったから焼いちゃったー!」

 ……悠子……。

 湊音はスケキヨにミルクを舐めさせた。


「どうしたの、パパ。私をじっと見て……」

 悠子……大きくなったな。全体的には元妻に似ている。

 俺には似てないが一緒にいた頃の赤ん坊の時の可愛さからぐっと大人になったな……


 湊音は勢いよく悠子を抱きしめた。

「ちょっと、パパ?!」

「あ……大島さん……やっちまった」

 倫典は小さい声で呟いた。


 もっと早く、こう抱きしめたかった……温かい……この温もり……


 幸せだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます