第21話 日記

 三葉と倫典は日記を読み終え、2人、とても沈んだ気持ちになってしまった。


 読むべきものではなかった。


 いつも明るい倫典でさえも目に涙を浮かべている。俺も三葉の体に入ってるが涙が出てきた。


「これ、本にして売ったら売れるよ……」

 て、一言目はそれかよ。


「事故のことから闘病生活とかさ……妻の心情とか……って冗談だけどさ。」

 少しいつもの倫典に戻った気もするがやはりこういう空気が苦手な彼らしく笑わせようとするが無理だったようだ。


 日記はどうやら俺が死んだあと彼女は精神科に通い、カウンセラーに日々の記録をつけるようにと言われてつけたものであるようだ。三葉は養護教諭であり、カウンセラーの資格もあり、生徒たちの心のケアもしているのだが……



 そして、何ページか


『死にたい』



 の文字があった。



 ボールペンでぐちゃぐちゃになっているページもあれば、ボールペンで刺したいくつかの穴。


 涙の跡で文字が滲んでいる。筆圧が強くて下のページに写っている。


『和樹さんに会いたい』



 所々に散りばめてあった。2年目くらいから少しずつこれが楽しかった、笑った、面白かったなど感情が書いてあり、少しずつ良くなってきたのかと思ったが、違ったようだ。


 俺もそばにいてやりたかった。何でこの五年、お前のそばにいてやれなかったんだよ。どんどん目から、三葉の目から涙が、涙が、こんなに流れるのか?というくらい……




 どうすればいいんだ、これから。








 とりあえず俺は三葉からスケキヨに乗り移った。もちろん日記は元のところに戻し、涙も拭いて。



 彼女はキョトンとしていた。


「あらいやだ、もうこんな時間なのに……倫典、着替えなきゃ……」

「うん、着替える」

「なんか元気ないよ?」

「そんなことないよ……」


 なんか2人、ん?この雰囲気……。


「わたしが結婚のこと、断ったと思ったの?」

「えっ……ん、そ、その……ううん。

 てか……結婚……」

 三葉……?少し顔真っ赤にしてる。


「嬉しかったよ。でも結果聞いてからで良いかな?返事……。」

「ま、まさかっ?……良い方向で、考えて良いの?」

「うーん……まぁ、そうだけどね……断る理由はないけどさ。反対にこんなわたしでも良かったら……」

 ほぼオッケーじゃねぇか!!!!倫典は喜んでスケキヨに抱きついた。く、苦しい!てか、まだオッケーじゃないって。早とちりするな、ボケ。

「やったぁ!!!!!!大島さんっ!!!」

「え?」

 おい、俺は今スケキヨだって。


「なんでもないよぉ〜。」

「倫典だっておかしい。」

 2人は笑ってる。スケキヨを挟んで。……て、キス?キスすんのか、そこでっ!!!


「痛ぇ!!!嫉妬すんなよ、大……じゃなくてスケキヨ!」

 猫パンチ連打!!!!


「スケキヨってヤキモチ焼きね。

 和樹さんみたい。」

 ドキッ……!!


 悪かったな、ヤキモチ焼きでよ!こんな美人で聡明な女は他にはいない、自慢の妻だ。他の男には渡したくない……


「いつも睨みきかせて他の男の人寄せ付けないもん。」

「そりゃあー三葉美人さんだしぃー。大島さんの大切な大切な奥さんだし?」

「もう、そんなこと言っても何も出ないよ?」

 おい、朝からイチャコラするのか?チュッチュって……夜もあんなに……くそおおおおおおおお!!!!


 俺は走った。

「あ!スケキヨ!」

 三葉が叫んだ声は聞こえたが追っかけないんだろ?どうせ?


 あ、そういえば……このマンションはペット可で猫用の出入り口がある。俺はそこにめがけて走り、外に出た。


 スケキヨの体だから目線はかなり低く不思議な感じである。そうだ……スケキヨ、すまんがしばらくお前の体、借りるぞ。


 俺はとあるところに向かった。

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