第13話 ウラシマタロウ

 モールに着いた。5年ぶりだが、入ってるテナントが変わってたり、変わらず残ってたり、とりあえず綺麗になっていた。昔からある建物だからリニューアルでもしたのだろう。

 特に倫典は「どこにいく?」とは言わずに、三葉にペースを合わせてくれているようだ。


 とりあえずキョロキョロとする。気づけばヒールの高さにも慣れている自分がいた。


 たまにここで二人、買い物したよな。俺はどこ行くんだ?って聞いて、三葉はあっちもこっちもふらふらーっとして。それについてくけど途中で疲れて本屋の横のカフェで本を読んで待っていた。

 そして買い物をし終わって満足した彼女が「おまたせ」ってやってきて、最後は地下のご飯屋さんで食べる。


 それはそれで幸せだった。


 こどもは俺の体が原因で出来なかったけど。子連れの夫婦を見ても、赤ちゃん服売り場見ても三葉は顔色を変えずに、二人で前向きに治療しましょうって。それまでは二人の時間、大事にしようね。って言ってくれた。


 でも本当は子供が欲しかったのは知っているんだ、三葉……。


 ごめんな。


「どっしたのー、三葉。やっぱり今日はおかしいよぉ〜」

 倫典が顔を覗き込んできた。顔が近い。三葉はこういう明るいやつが好きなのか?俺にはできん明るさだ。


「おかしくないよ。大丈夫だよー」

 って返事をしておいた。



 それから二人で本屋に向かう。

「本屋、綺麗になったなぁ……」

 と、つい呟いてしまった。

 隣のカフェもまだやっている。自分たちの思い出の場所が残ってるのは嬉しいものである。

「前もきたじゃん、リニュアールオープンの時。」

 はっ、そうなのか……しまった、黙ってたほうがいいな。


「そ、そうよね。だって本当に綺麗になってるし、ね!ね!」

 倫典は流石に何か変に感じたのか、ちょっと笑いながら首をかしげる。


「李仁もさー、すごいよなぁ。配置とか設備とか全部考えて使いやすいよう、スタッフも働きやすいようにしたんだってすっごく自慢してさ。同じ年の人間がこんなことできちゃうのは尊敬できるな。」


李仁とは、俺たちの遊び仲間の一人で。里志李仁さとしりひとというバーテンダー兼本屋のオカマ……て言っちゃいかんのか、ゲイである。


実は……湊音と結婚しているのだ。


「あら、おふたり。仲良くデートかしら?」

 もしかしてこの声……噂をしていたら。


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