第11話 嫉妬

 台所からそっと離れて仏壇の前でゴロゴロしていた。鏡があったので見てみると、スケキヨが鏡に映る。そうだよな、うん。


 にしてもちょっとスケキヨ、老けた気もする。そりゃ五年たったからな。長いこと一緒にいるからな。


 すると玄関の呼び鈴が鳴った。

「はぁーい」

 と三葉の声。あ、まさか……もうきたのか?あいつが。俺も体を起こしてささっと玄関まで出迎える。そんな姿みて三葉は驚く。

「お出迎えしてくれるの?スケキヨ、珍しい」

 彼女はにっこり微笑んで抱きかかえてくれた。甘くていい匂い。


 玄関を開けると……

「お邪魔します。三葉が家に来てって珍しいよね」

 お、素直にメール通り来てくれたな!倫典!服は送りつけてきた写真の服ではなくてポロシャツであった。ブランドものの。

 相変わらずギザな男だな…。しかし三葉はキョトンとした顔をしている。


「わたし、そんなこと言ったかしら」

 あ。やべ。三葉はメールしたことわかってない。俺が乗りうった時は記憶がないってことか?


 すると倫典が俺を撫でて

「スケキヨ、こんにちは」

 と笑いかける顔が猫みたいだ。しかしその後すぐに彼は三葉にキスをした!!!

 目の前?で長く長くネットリ妻がキスしてるのを見てるとかなり複雑、というか悔しい。


 クソォ……しかも三葉の腰に腕回して……

「ねぇ、デートの前に……家でゆっくりしようか?」

 ゆっくりってなんだ?なんだ?なんだ?しかも三葉の耳にキス?ん?甘嚙みか??

「倫典くん……」

 三葉?!おい、この状況……!!!


 うおおおおお!!!!


「きゃっ!!!スケキヨ!!!」

 俺は大暴れした。三葉をっ!!!三葉をっ!!!こんな軽い男に!!!!

「うわぁ!スケキヨ、やめてやめて!!!」

 あ、爪が立ってる!そうか、怒るとこうなるのか!!ふと動きを止めると……


「スケキヨが嫉妬してるね。そんなにスケキヨは三葉が好きなのかな?」

 ……好きで悪いか?!スケキヨの頭をポンと撫でてくれた。


「まぁ出かけようか。」

「そうね。じゃあ、スケキヨ。お留守番しててね。」

 ……え、出かけちゃう?!そ、そんなっ!!外であんなことやこんなことっ?!


 三葉はスケキヨを置いて、準備を始めた。その間も倫典は俺に構ってくれた。

「もう、そこまで怒らなくてもいいじゃんー。怒ったの初めて見たぞ、スケキヨ。」

 いや、俺はお前に何度も怒ったことあるぞ?お前が俺の生徒だった頃に。


 ズボン腰履きにしてたり、授業中に鏡見てたり……。

 怒ってもニコニコして、いいじゃーんってさ、おちゃらけてて反省してなかったな。


 でもこいつと大人になって再会してたまに飲みに行った時に、ふと彼の複雑な家庭事情を話してくれたのを覚えている。


 彼は他の兄弟と血が繋がってない。母親の不倫の末に生まれた。そのせいか父親などに疎まれて育ったものの、その辛さを隠すためにずっとおどけたようなことをしてたようだ。

 たしかに彼はムードメーカーで常に笑顔で暗い雰囲気を明るくしてくれるいいやつだったな。他人に優しい。



 がっ!!!非常にチャラい。チャラすぎる!!!!


 聞いた話だと大学の頃から派手にやってて取っ替え引っ替え。かなりもてたらしい。


 そして、悠子とも付き合ってた。まだ高校生前だった悠子と!!!!年の差いくつあると思ってんだ?!


 しかも、悠子と付き合ってる時に三葉と浮気して……二人の女性を傷つけ……そんな過去もありながら今、再び三葉と付き合ってるってどういう心境だ?!あん?!


「スケキヨ……なんか今日は機嫌悪いかな?」

 苦笑いする倫典……。


「なんか昨日からすっごい活発なのよぉ。なんか猫語みたいにニャーニャー喋って。」

 そりゃ、俺が乗り移ったからな。


「じゃあ、行ってくるね。スケキヨ。」

 ……俺は三葉の足元にしがみつく。ふくらはぎが締まってて美しい……。いや、連れてってくれ。俺も。


「スケキヨ、なんかかまってちゃんね……おとなしく待ってて。」

「お土産買ってくるからね。」

 クソォ。……。





 三葉に乗り移れたわけだし、倫典に乗り移るぞ!!!!


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