第8話 妻のスマホの中身

 一瞬暗くなったのだが、すぐ明るくなった。ふと左を見るとさっきまで俺がいた仏壇。


 スケキヨもいる。あくびをして眠たそうだ。


 じゃ、じゃあ……今俺は……髪の毛…長い。指…柔らかくて細くて白い……そして胸!!!!胸!!!


 何度も揉んだが、少しハリがないが、三葉の胸だ!!何度もさわるぞ、触り放題だっ!!!!れ



 ……よ、よそう。これ以上。


 窓の反射で、俺は三葉になってることに気づく。あ、こんなにも簡単に乗り移れるのか!?


 三葉の魂はこの辺に浮いているのだろうか。キョロキョロするが見える訳もない。

 ふと仏壇を眺める。

 ……遺影の俺の写真……もうすこしいいのなかったのか?三葉よ。まぁ君が選んだんだし、選んでる暇もなかっただろう。


 いや、それよりも今は!三葉がスマホで誰と連絡を取っていたか、それが問題だ。


 ……しかし、倫理的な問題で……人のスマホを見ることは良くない、とは思う。


 ほらよくいうじゃないか、恋人や配偶者のスマホを見ることは地獄にしか過ぎない。実際付き合った相手のスマホなんて見たことないし、かといって自分のはみられて困るものはなかったと思うし、そして三葉のスマホも見たこともないし、見ようと思ったこともない。

 信じてるが、三葉は俺のスマホなんて見たことはないと思う。


 それなのに、今、見ようとしてる俺がいる。スマホは暗証番号だったら見ることはできない。

 どうやら相手の記憶まではわからないようだからな。そうだ、見ちゃいけない、見ちゃ……とホームボタンを押したら


「ロックかけてないのかよ!」

 と声を出したら三葉の声が出た。


 するとそこには綺麗にまとまったアイコンと、壁紙は俺と三葉の写真……もう五年も経って、スマホも替えたはずなのに……俺の写真かよ。

 ふと涙がこぼれた。

「三葉ぁ……」

 やはり声からは三葉の声が出る。当たり前か。肉体は乗り移った相手のままだからな。


 じゃなくて、さっきは誰のメールを見てたか?それな、それ。


 でもダメだ、やはりダメだ。見てはいけない!


 しかし、せっかくというか三葉に乗り移ったわけだし……これからモヤモヤする前に、見よう。見よう!


 恐る恐るメールを開いた。5年ぶりにスマホというものに触るがなんとなくアイコンで分かるって、すごいよな。

 スマホの軽さに画面の綺麗さに、と関心してる場合じゃない。



 メール……


 受信ボックス……



 一番初めに出てきたのは……


大森倫典おおもりとものり……」

 俺の教え子だ。そして、内容……読み上げる。

三葉は43歳、倫典は38歳くらいか?まぁ悪くは無いような、ああ。あいつもまだ独身だもんな……。たしか。



「……明日のデート、どっちのスーツだと三葉と釣り合うかな?

 はっ?て、写真もあんのかよ」

 二枚のスーツの写真を送りつけてきたのか。洗面所の前でポーズをとる倫典……カッコつけやがって。ナルシストが!


 メールの履歴を見ると、まだ返信してない。

「そんなのどうでもいい!」

 と短絡的に返した。てかデート……そんな中なのか?


 過去のメール……罪悪感あるが覗いてみる。いろんな普通の会話だらけだが、デートは何回かしてるようだ。


 俺の妻が浮気してるような気持ちになる。でも俺は死んでるから世間的には問題ないのだが……。


 実は倫典は以前、悠子と付き合っていたが(15.6以上の年の差!!)いつのまにか別れて、悠子は桐生と付き合ったということなのか。

 悠子の次が三葉、未亡人の女か。複雑である。


 そしてとある一文……



「倫典くん、こないだのあなたは素敵だったわ」

 何が素敵だったのか?俺はその返信である倫典のメールを見た。

「ありがとう。そんなことないよ。三葉見たらとても抱かずにはいられなくて、いきなりごめんね。」

 三葉の返信。

「ううん、嬉しかった。わたしを女として認めてくれたんですもの。」

 俺は読む声が震えてるのが分かった。そしてメールを閉じた。やっぱり見るものではない。


 嫉妬ではない、三葉には幸せになってもらいたい。矛盾してる。


 ……明日、デートなのか。うむ。現実を受け止めよう……



 しかしやはり!!何をしてるのか気になる。スケキヨに乗り移って連れてってもらう、なんて無理だよな。


 ……三葉に乗り移ったままでデート?嫌だなぁ、それも。



 とあれこれ考えた結果。俺は三葉の指を動かした。


「とりあえず明日はわたしの家まで来て。少し家でゆっくりしてからデートに行こう」


 ……と。

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