まじょの心得を破ったら

 あたしは一生懸命にキサラおばさんに、事情を説明した。


 今まで大の親友だった絵美ちゃんのこと。


 その絵美ちゃんと今、距離が離れてしまっていること。


「もう、嘘をつくのはやめにしたいんです。だから」


 あたしがまじょだってこと、絵美ちゃんに話していいですか。


 キサラおばさんは、あたしの話を真剣に聞いてくれた。


 いつもなら、あんなに不機嫌なのに。


「いいんじゃないか、アンタの思う通りにすれば」


 キサラおばさんは、少し考えた後にそう言った。


 え? あたしの思う通り?


 つまり、まじょのことを、絵美ちゃんに話していいってこと?

 

 あたしがあっけにとられていると、キサラおばさんはあたしを見つめた。


「けど、まじょの心得を破ったら、まじょでいられなくなるかもしれないよ」


 それだけは、覚悟しときな。


 それだけ言うと、キサラおばさんはこの話はオシマイ、と席を立った。


 後には、どうしたらいいかわからないあたしだけが、残された。


♦♢


 絵美ちゃんが見知らぬおばさんと一緒に歩いていた次の日から。


 絵美ちゃんは、学校に来なくなってしまった。


 だから、あたしは絵美ちゃんにまじょの話をできずにいた。


 友情をとるのか、やりがいをとるのか。


 あたしはいまだに決めかねていた。


 まじょで、いろんな人を助けられるのは、とても素敵なこと。


 助けてあげた人の笑顔が見られるのは、とっても素敵。


 でも。


 だからって、後から出てきたまじょのやりがいのために。


 今まで大事に積み重ねてきたものがなくなっちゃうのも、嫌。


 あたしが日に日に悩む時間が長くなっているのを見て杖も悲しそうだった。


 あたしの周りをくるくる回っては、止まって。また回っての繰り返し。


 はげまそうとしてくれているのは、分かったんだけど。


 杖の期待に沿うことは、できなかったんだ。


♦♢


 ある日。朝起きたら、いつもは傍で寝ているはずの、杖がいなくなってたの。


 部屋の中を隅々まで探したけれど、見つからない。


 まさかと思って、まじょの心得の本を探すけど、これも見つからない。


 今まで集めてたまほうせきの入った小瓶も見つからない。


 あたしはさすがに焦った。


 たしかに、まじょのことを話すかどうかで迷った。


 そして、昨日一度、思ってしまったんだ。


「まじょになりたいなんて、願わなければよかった」


って。




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