絵美ちゃんと、謎のおばさん
次の日の朝。
あたしは学校へ着くなり、絵美ちゃんの姿を探した。
教室に着いたら、もう絵美ちゃんは来ていたの。
だから、絵美ちゃんの席まで寄って行って、声をかけたの。
「絵美ちゃん、おはよう」
「あ、立夏ちゃんおはよう」
絵美ちゃんは前と変わらないあいさつを返してくれる。
でもその表情は、どこかぎこちなく感じられたの。
どこか、無理に笑っている感じ。
あたしは、急いで謝った。
「ごめんね、絵美ちゃん」
あたしが謝ると、絵美ちゃんは驚いた顔をした。
「なんで謝るの、立夏ちゃん」
なんで? それを聞かれるのは予想してなかったな……。
「えっと、それは……」
一人で寂しい思いをさせて、ごめんねってこと。
そう言いたいけど、うまく言葉にできない。
頭の中では、伝えたい言葉は確かに、存在するのに。
それを口に出して、文章にできないの。
言葉が、頭の中で飛び回ってるみたい。
あたしが言葉に詰まっていると。
絵美ちゃんは、がっかりしたような顔をした。
「謝る理由が分からないなら、謝らなくて、いいよ」
それから、ぷいっとそっぽを向いて教室の外へ出てしまったの。
ああ、かえって絵美ちゃんを怒らせてしまった……。
あたしは、俯いて自分の席に戻る。
黒原くんが心配そうにあたしの顔をのぞきこんでくる。
「おい、大丈夫か」
「元気マンが元気なくしてどうするんや」
星谷くんもまた、私をはげまそうとしてくれている。
「だから、元気、マンじゃないから……」
そう返す自分の声が思った以上に力なくて。
ああ、相当落ち込んでるんだなって自分で気づいた。
そりゃあ、絵美ちゃんとは長い付き合いだもん。
同じ幼稚園に通って、同じ時間をたくさん過ごした。
ありさちゃんと、高園寺さん、遠野さんたち三人と同じくらい。
たくさんの思い出を作ってきた。
それなのに。
「あたし、何してたんだろ」
今まで、ずーっと一緒だったのに。
まじょになったことに浮かれて、絵美ちゃんの気持ちも考えなかった。
友達じゃなくなっちゃったって仕方ないよね。
絵美ちゃんがその方がいいっていうなら、友達をやめよう。
でも、まだ絵美ちゃんからそう聞いたわけじゃないから。
あたしに何かできないか、考えなくちゃ。
あたしは、一生懸命絵美ちゃんのために何ができるかを考え始めたの。
♦♢
今のあたしにできることはやっぱり、正直に話すことだと思う。
あたしは放課後、キサラおばさんのところへ急いで向かおうとしてた。
キサラおばさんに理由を話して、まじょのことを話していいか聞いてみよう。
校門を出たところで、あたしは絵美ちゃんを見かけた。
全く知らない、おばさんと一緒だ。
あれ? あの顔、どこかで見たような……?
一瞬どこで見たのか思い出そうと思ったけど。
一刻も早くキサラおばさんのところへ行きたかったあたし。
絵美ちゃんとは反対の道を走って、キサラおばさんの店に向かったの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます