全力疾走!


 どうやら、女の子にもあたしが伝えたいことは、伝わったみたい。


 無くしてしまったら、その物に宿った気持ちや、想いまで失ってしまう気がする。


 でも、本当はそうじゃない。


 気持ちや想いは、自分が忘れない限り、消えない。


 でも、自分という人間は、命を失ってしまったらオシマイだ。


 今回は、そんな大ごとじゃないけれど。


 おばあちゃんにとってはこの子が無事なら、どうってことないんじゃないかな。


 女の子は、河原の近くまで来ていたおばあちゃんの元へと駆け寄った。


 そして、泣きながらあたしに話してくれたことと同じ話をする。


 おばあちゃんは、そんな女の子の小さな背中を優しくさすりながら話を聞いてる。


 そして、最後まで話し終わった女の子を、ぎゅっと抱きしめて言ったんだ。


「大丈夫だよ、そんなに泣くことじゃないよ」


 そんな感動の中で。つんつんと肩に何かがあたる感触が続く。


 なによ、今いいところなのにさ。


 あたしが振り返ると、あたしの杖がくるくると回ってた。


 その杖の先っぽに。


 何やら、キラキラしたものがぶらさがってる。


 ん? あんなかざり、最初からついてたっけ?


 あたしは考えながら杖に近づく。そして、かざりの正体に気付いたの!


「おお! でかした、杖!!」


 あたしは杖を抱きしめて、杖からかざりを取り上げると、二人の元へ走る。


「ブレスレット! あったよおおおぉぉぉぉっ」


 その声に、抱き合ったままのおばあさんと、女の子がぎょっとして振り返った。


 あたしの手には、キラキラしたブレスレットがしっかり握られてる。


 しわくちゃになった女の子の顔が、ブレスレットと同じくらい輝く。


「え!? ほんと!! 見つかったの!!」


 女の子はおばあさんの元を離れ、あたしの方へ一直線に駆けてくる。


 あたしは、駆け寄ってきた女の子に、ブレスレットを差し出した。


 少し泥とかついちゃって汚くなっちゃったけど……。


 家に帰って洗えば、きっと元通りになるよね!


 女の子は、ブレスレットをあたしから受け取ると、大事そうに抱きしめた。


 そして、あたしの方を見ると、とーっても嬉しそうに笑った。


「お姉ちゃん、ありがとう! 探してたブレスレット、これだよ!」


 おばあちゃんがゆっくりこちらに近づいてくる。


 おばあちゃんもまた、とーっても笑顔。あたしもなんだか嬉しくなっちゃう。


「お姉ちゃん、ありがとねぇ。あなたのおかげで、見つかったわぁ」


 おばあちゃんと女の子の笑顔。よかったよかった。


 その時、二人の胸のあたりから、何か光るものがあたしの方へと飛んできたの。


 なんだろ、あれ。


 あたしが不思議に思っていると、光るものをあたしの杖がちょん、と触った。


 そしたら、光るものは、なんと杖に吸い込まれちゃった!


 うわあ、どうなってるの。


 それは置いといて……。


 あたしは、空を見上げる。


 あたりはもう真っ暗。街灯が光り始めて、辺りの家の明かりもつき始めてる。


 まずい、これはとーってもまずい!


「それじゃあ、あたしはこれで失礼します! 見つかってよかったね!」


 あたしは女の子に言うと、家に向かって猛ダッシュ!


 後ろで女の子とおばあちゃんがお礼を言っていたけど、振り返る余裕はない。


 あたしの後ろを、杖が一生懸命ふわふわ浮いてついてくる。


 うわああん、お母さんに怒られるううぅぅっ!





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