1-17 取材デート 午前の部 (紅音視点2)

 ゲーセンの下りはカットしました。

 初めてラブコメっぽい展開(?)を書いた気がします(おい)


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 ゲーセンを出ると、既にデパートの中は人でいっぱいでした。

 さっきまでは開店直後でガラガラだったのですが、そこそこ時間をつぶせてたみたいです。


「はー、楽しかった!」


 結局私はあらゆるゲームでセンパイをボコボコにして、罰ゲームで一緒にプリクラまで撮ってもらいました!

 私はゲームと名のつくもので負けたことがないのです。

 エアホッケーでも完封してやりましたよ。


「また来ましょうねセンパイ!」


「…………気が向いたらな」


 自力でキャプチャーした人面ネコは柔らかくて、ギューっと抱くととても気持ちがいいです。

 私は圧倒的犬派ですが、記念すべきセンパイからの2個目のプレゼント(になったかとしれない代物しろもの)なので、ベッドで毎晩一緒に寝るとしましょう。


「少しゆっくり歩こうぜ。普通の買い物シーンだって作中に出すだろ?」


 センパイはだいぶ疲れたみたいで、少しフラフラしています。

 まあただの画面酔いでしょうし、センパイの言う通りゆっくり歩いていれば勝手に治りますね。


「そうですね。じゃあ上の階に行きましょ!」


「分かった。分かったから引っ張るのはよせ」


「ええー……」


 いつもなら無視して引っ張って行くところですが、ゲーセンで連れ回したのは私ですからね。ここは素直に聞いてあげましょう。


「そんな時こそ────」


「リードは持たんぞ」


「まだ何も言ってないのに!?」


 確かにバッグから朝付けてたリード(言われて外してた)を出そうとしたのに、一瞬でバレてしまいました!

 流石に私のことを熟知しているようですね…………。


「じゃあコレ持っててください!」


「コレって、マフラー?」


「そうですよ。はい、端っこ持って」


「お、おう」


 長いマフラーの、背中に垂れている部分をセンパイに手渡すと、理解できないままに受け取ってくれました。

 こうやって当然のように事を進めるのが、最近気がついた操るコツです。


 センパイがマフラーを両手に握ったのを確認し、私が構わず前方に走り出すと──!


「あ、バカ急に動いたら──」


「へぐっ」


 首元に巻かれてたマフラーがキュッと締まって、何とも言えない声が思わず漏れてしまいました。


 いえセンパイがすぐに緩めたので苦しさは全然ありませんが、問題はそこじゃないんです。


「大丈夫か? 端持てって言ったのに、急に歩き出すからビックリしたぞ」


「────ふ、」


「ん、どした?」


「ふふふへへへへへへへへへへへ」


「マジでどうした!?」


 おっと、思わず笑いとヨダレが漏れてしまいました。

 だって不意打ちとはいえ、センパイがマフラー散歩リードを持って、飼い主センパイを無視して勝手に歩き出す私を引っ張って制止したんですよ!?

 もうこれは飼い主と犬の関係と言っても過言ではないですね!

 通り過ぎる人々の視線が私とセンパイに向いていますが、それすらもご褒美です。


「とりあえず落ち着こう、な? ほらそこにベンチあるから座ろうぜ」


「ふ、ふへへ……」


 センパイはマフラーから手を離して、私をベンチまで連れて行ってくれました。


 もしもセンパイに彼女ができたら、絶対こんな(Mが喜ぶような)ことしてもらえませんからね。

 義理堅い彼のことですし、二人きりでこうして出掛けることすら少なくなりそう。


「お前、今日はやたら俺に手綱を持たせるな。新しい遊び?」


「新しい遊びというか、悦びというか……」


「いや、やっぱ言わなくていいや」


 センパイはこれ以上聞いたら負けと思ったのか、すぐ横の自販機で水を買って渡してくれました。


 しかし、そうですね。

 私の計画ではこんな急いで進めるつもり無かったんですが、思いのほかこの前クロハ先輩に聞いた話が残ってるのかもしれません。


「ふう……」


 とりあえず少し落ち着くとしましょう。

 センパイに彼女ができたとしても、ペットは別枠かもしれませんし。


「落ち着いた?」


「ええ、そこそこ冷静になりました」


 大きく深呼吸して、少し急ぎすぎた自分をなだめます。

 こういうのは緩急が大事なのであって、あまりしつこいと嫌われるので気をつけないといけませんからね。


 よし、今日はもう穏やかにいきましょう。

 好きな人だって、考えてみれば私には関係のない話ですからね。


「なら、そろそろ飯でも食いに────」


 ベンチから立とうとするセンパイが、動きを止めてこちらに振り返りました。


「…………あ」


 私は無意識のうちにセンパイの袖をしっかりと掴んでたみたいで、ちょうど今、自分でもそのことに気がつきました。


「どうした、まだ休むか?」


「いや、えっと……」


 私が返答に困っていると、視界の端にセンパイの腕時計がチラリと見えました。


「あ、そ、そういえば12時にコハク先輩と交代の時間でした! 私と待ち合わせした場所と同じ所にいると思いますよ!」


「おま、そういうことは早く言えよアホ!」


「アホとは何ですか! 本気で罵るつもりなら牝犬メスイヌって言ってください!」


「何言ってんのお前!?」


 センパイも時計を確認して、既に12時を少し回っていることに気づいたようです。

 いやこれは私もうっかりしてました。てへぺろ。


「コハク先輩には、私が謝ってたって言っといてくださいね〜」


「分かったよ、じゃあな!」


 センパイは私に別れを告げて、すぐに来た道を戻ろうときびすを返した。

 私も後でコハク先輩に謝罪と一緒に、センパイの秘蔵写真でも送ることにしましょう。


「センパ〜〜イ、今日は楽しかったで〜す! また明日〜!!」


 私は主人を見送る犬のように、人目をはばからず大声で叫びながらセンパイ飼い主に両手を振りました。


 恥ずかしそうな顔で「しっしっ!」とジェスチャーするセンパイ。全力疾走で来た道を引き返して行き、やがて角を曲がって見えなくなりました。


「…………ふう」


 さっき咄嗟に腕を掴んだときは自分でも驚きでしたが、きっと無意識に時計を確認したかったからですね。

 じゃなければ何を言うつもりだったんだって話ですし。


 また明日文句言われるのが楽しみです♪

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