第59話 キジ
金田一
「はい、お次は誰かな?」
司会
「えと順番では次はキジですね。ではキジさんどうぞ」
キジ
「はじめまして」
司会
「はじめまして。今日はよろしくお願いします」
キジ
「こちらこそ」
司会
「早速ですがキジさん、今日はどのことわざを提訴されますか?って言うかキジさんの出てることわざってアレですよね」
キジ
「はい、少ないですからすぐにわかりますよね。『キジも鳴かずば撃たれまい』です。このことわざをぜひ提訴したいと思ってまいりました」
司会
「一般には『しゃしゃり出なくて黙っていれば大きな圧力がかからない』とか『余計な一言を言ったばかりに損をする』と言う意味で使われますね。これをどうされたいんですか?」
キジ
「はい、私たちの立場をもうちょっと考慮してほしいのです」
司会
「と言いますと?」
キジ
「考えてもみてください。鳴いただけで撃たれるんですよ。そもそもこのことわざは、私たちが簡単に殺されることを前提としたことわざですよね」
司会
「言われてみればそうですね」
キジ
「こんな非人道的なことわざは他にありません!」
司会
「確かにそう言われてみたら物騒なことわざですよね。そこは理解します」
キジ
「しかも『鳴く』なんて言う行為はどの生物にも平等に与えられた自由生存権に入ります。何も悪い事していないのに殺されるなんていうのはあまりにも非人道的ではないでしょうか?」
キジに熱が入ってきた。
司会
「まあまあ、キジさん落ち着いて」
キジ
「もっと言えばこのことわざは別に私たちキジでなくてもいいですよね。例えばスズメやカラスでも鳴かなければ撃たれませんよね!」
司会
「わ、わかりました。金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「あ、これはキジさんの生態に問題がありますね」
キジ
「私たちの生態に問題がある?」
金田一
「はい、キジは他の鳥に比べて動作がゆっくりなんです」
キジ
「はい、ゆっくり生きていますがいけませんか?」
金田一
「さらに生活圏が平地の林などの明るい草地に無防備に生息しています。また地上を歩き、主に草の種子、芽、葉などの植物性のものを食べますから人間からすれば狙い易いのですね」
キジ
「そんな・・・どこで何を食べて暮らそうが自由だと思いますが」
金田一
「追い討ちをかけるようですが、オスは縄張りを主張するために『ケーン』と大きな声で泣きます。よくとおるこの声が致命傷です」
キジ
「はー・・・やはり私たちは撃たれる運命にあると言うことですね」
金田一
「残念ながら、生活態度を改めない限りはそうなります」
キジ
「しかし!そう思いまして今日はこういうモノを用意してきました」
さっとキジが上着を脱いだ。
司会・金田一
「「あ、防弾チョッキ!」」
キジ
「そうです。今日の交渉が難航すると思いまして、これからは鳴く時は必ず防弾チョッキを着ることにします。小型ですがかなりの高性能です」
司会
「なるほど!これなら散弾銃くらいならなんともないですね」
司会がキジの防弾チョッキを触りながら関心して答える。
金田一
「鳴く時は防弾チョッキ着用ですか、わかりました。明日からはこうしませんか?『キジも鳴かずば撃たれまい。でも撃たれても平気よ❤️』ではいかがでしょうか?」
司会
「いいですね。なんか今までひ弱に見えていたキジさんが最後のハートマークで余裕すら感じますね。ことわざって一言で変わりますね」
キジ
「少し長いですが、いいですね。何より私たちの『弱っちいイメージ』がなくなりました」
司会
「キジさん、よかったですね」
キジ
「はい、満足しました」
司会
「お疲れ様でした」
「ケーン」
と大きな声を出してキジが帰って行った。
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