オフィスに流れる時間

くるくると椅子は回されていた

忙しなく 右に左に回されていた

オフィスの薄く固い灰色のカーペット

他の椅子たちはそんなに回されず

そのひとつの椅子だけが回される


朝は九時から夜十時 時には0時過ぎるまで

くるくるくるくる くるくる

四つのモニターの方向へ右に左に

三半規管がなくてよかった

その椅子が思ったかどうか


ある日椅子は回されなくなった

時折誰かが座るものの

たまに動かされたものの

 くる くる    くる

蹴られたことが三度あった


その椅子を回す者は現れなかった

朝は九時から夜は六時 せいぜい七時

他の椅子と同様に向かうモニターはひとつ

回っていた日々は充実か過労か悪夢か

椅子に特段思うところはない


オフィスの隅に追いやられ

隣にはベンジャミンの葉が青々と

じきに廃棄されるのだろう

 ガギッ

椅子は一声啼いて傾いた


劣化した薄い灰色のカーペットの上

椅子の断片が転がった




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