代償

第1話 不老不死

ある日、僕の前に、ひとりの女神が現れた。

「おめでとうございます」

「何がですか？」

「この度、全人類を対象にした厳選なる抽選の結果・・・」

「はい」

「あなたが、人類の不老不死に選ばれました」

僕は愕然とした。

「お断りします」

「どうしてですか？不老不死は人類の夢でしょ？」

「ゴールのないレースには、参加したくありません」

本心だった。

「そういう考え方もありますね。でももう決まったのです。

拒否は出来ません」

「ちょっと・・・」

文句を言う前に、女神は消えた。

死ぬのは嫌だ。でも、死ねないのはもっと嫌だ。

転生は、なお嫌だ。

これから、どうすればいいんだ・・・

「あっ、言い忘れていました」

女神が戻ってきた。

「取り消してくれるのか？」

「違います」

「じゃあ、何ですか？」

「あらゆる生物を、ひとりずつ不老不死にしましたので」

「動物なら、匹や、頭、羽、ぱい・・・とかにならないのか？」

「長くなるので、ひとりで統一します」

それだけいうと、また去って行った。

不老不死

恐れていたことが起こった。

もう、社会生活は出来ない。

山奥へ行こう。

そこなら誰も来ない。

飲まず食わずでも、生きていけるはずだ。

こうして、僕は山奥に移住した。

そこで、とんでもないものを眼にする。