第十三話・11
──真夜中。
寝ていた私は、ふと目を覚ます。
別にお手洗いに行きたくなったとか、そういうわけじゃない。
ホントになんとなく目が開いたのだ。
傍らには楓が寝ていて、今もスースーと寝息を立てている。
私は、寝息を立てて寝ている楓を見る。
暗くてよくわからないが、楓の寝顔を見ることくらいはできる。
男の子に対してこんなこと言うのは失礼かもしれないが、あどけなさがあって可愛い。
そんな楓を見て、私の表情からはふっと笑みがこぼれる。
こんなのを見せられて何もするなと言われても、無理な話だ。
「私のベッドで寝てるんだから、何してもオッケーってことだよね?」
独り言のようにそう言って、私は楓の顔に近づいていく。
楓に近づいていくと、私はゆっくりと瞼を閉じて、楓の唇にキスをする。
「ん……。んん……」
それは楓から漏れ出た声だが、抵抗はしてこなかった。
それどころか、楓はそれを受け入れたかのように私の身体に手をまわしてくる。
私のことを抱き枕にするつもりだな。これは──。
私は全然構わないんだけど、楓はどんな反応をするんだろうか。
普段なら、絶対にこんなことはしないから、起きたらビックリするだろうな。
私は、そのまま身を委ねた。
楓は、ギュッと私のことを抱きしめてくる。
「う~ん……」
何かの違和感を感じたのか、楓の手が私の胸にいった。
ちょっと……。楓⁉︎ 何をするつもりなの?
そう思ったのも束の間、楓の手は私の胸を掴んでそのままにぎにぎと揉み始める。
あ……。ダメ……。その揉み方は、ダメ……。
変な気持ちになっちゃう……。
私は、楓の手を優しく添える。
途端、楓の手の動きが止まった。
ん? どうしたんだ。
揉むのをやめてとは言ってないんだけど。
私は、思案げに楓を見る。
すると楓は
「う…ん……?」
と唸り声を発して、身体をもぞもぞさせた。
これは、起きる前兆だ。
そう思った瞬間に、楓がゆっくりと目を開ける。
やばい。寝たフリをしないと。
私は、咄嗟に瞼を閉じる。
「ん……。香奈姉ちゃん?」
と、呼ばれても反応はしないぞ。絶対に。
私は、スースーと寝息をして、楓に寝ているんだっていうアピールをする。
「寝てるのか。それなら、こんなことをしても大丈夫かな」
え……。こんなことって、どんなこと?
ちょっと待って。
楓ったら、私に何をしようっていうの?
目を閉じている状態なので、何かされちゃうっていう不安が一気に押し寄せる。
次の瞬間、ギュッと抱きしめられる感覚が身体を駆け巡った。
まさか、そのままセックスとか⁉︎
待って……。まだ心の準備が……。
私は、楓に起きてるってことを悟られまいとわざとゆっくりと目を開ける。
「何してるの? 楓」
私が平静を装って声をかけたのだが、楓にはバレてないようだ。
楓は、ビックリした様子で私の顔を見た。
「香奈姉ちゃん⁉︎ …起きてたの?」
「『起きてたの?』じゃない! 寝ている女の子にセックスを要求してくるなんて、ずいぶんと度胸があるじゃない」
「こ、これは……。違うんだよ」
「言い訳なんか聞きたくない! こんな時間に抱きついてきたら、誰だって勘違いしちゃうじゃない」
私は急に恥ずかしくなり、楓から視線を逸らす。
赤面しているのが私にも、わかるくらいだった。
楓は、焦り気味に私に言う。
「だから、違うんだって……。これは──」
「一体、何が違うのかなぁ。寝ている私に抱きついてくるっていうのは、エッチがしたいからでしょ?」
「そうじゃなくて……。香奈姉ちゃんは、勘違いしているよ」
「何を勘違いしてるっていうのよ。寝ている私にここまでしておいて、やっぱり何もしないってことはないでしょ?」
「それは……。そうだけど……。でも──」
「『でも』も『だって』もない! そういうことをしてるんだから、最後までやってくれないと女の子は喜ばないぞ」
「う、うん……。ごめん……」
楓は、素直に謝った。
いやいや……。謝られても、もうすでに遅いし。
「わかればいいのよ。…それで。何をしようとしてたの?」
「それは……。香奈姉ちゃんの身体のサイズを確認しようと思って……」
「私の身体のサイズ? そんなの確認してどうするの?」
「いや……。これといって、特に意味はないんだけど。その……」
楓は、そう言って私から視線を逸らす。
何だろう?
楓が私に隠し事をするなんて、めずらしい。
そもそも、何の意味もなく楓が私の身体を抱きすくめてくることなんて、絶対にないことだ。
ましてや、寝てる時にである。
これは、絶対に何かあるな。
まぁ、私の胸を揉んでくるっていう凶行には、ちょっとビックリしたけど。
私は、不服そうな表情を浮かべて楓の顔を見る。
「何よ? はっきり言いなさいよ」
「はっきり言うと、香奈姉ちゃんの身体の感触が、あまりにも気持ちよくて……。つい抱きしめたくなっちゃったっていうか……」
楓は、恥ずかしそうに顔を赤くしてそう言った。
何よ、照れちゃって。可愛いんだから。
私は、楓の顔に手を添えて、無理矢理こちらに視線を向けさせる。
「そっかぁ。抱きしめたくなっちゃったのかぁ。それは、仕方のないことだね」
「…うん。仕方ないんだ……」
楓は、そう言って私に笑顔を見せた。
要するに、私のことが愛おしくなったってことだよね。
私は楓の頭に手を回し、そのまま胸元まで引き寄せる。
「そうだね。そう言われたら仕方がないね」
この後は、どうするのかな。
もし楓がエッチなことを要求してきたら、私はそれに応えなきゃいけないんだよね。
私は、楓のリクエストに応えられるだろうか。
楓は、ギュッと私の身体を抱きしめてきた。
「何してるの?」
と、私が問いかけると、楓は落ち着いた様子で答える。
「香奈姉ちゃんの匂いを嗅いでるんだ」
「私の…匂い?」
「うん。香奈姉ちゃんから発せられる匂い。嗅いでいると、心が落ち着くんだ」
そう言って、楓は私の匂いを嗅いでくる。
シャワーを浴びてからベッドに入ったので、体臭などは気にならないはずだ。
「ボディソープの香りかな? それだったら、普段のものとそんなに変わらないと思うけど……」
「ううん……。違うよ。香奈姉ちゃんの匂いは、それとはもっと違うものだよ」
「そうなの?」
「うん。たぶん、今の僕にしかわからないと思うんだ」
「そっか。楓にしか、わからないか……。それなら、私は楓のものになったのかな?」
「そういうことだと思う。はっきりとは言えないけれど……」
楓は、自信なさそうにそう言う。
──もう。
私の恋愛対象なんだから、その辺りはしっかりしてほしいな。
「私は、楓の恋人なんだから、その辺だけはハッキリしてよね」
「うん……。ごめん」
「そこは謝るところじゃないよ」
そう言うと私は、楓をギュッと抱きしめる。
結果的には、お互いにギュッと抱きしめ合う形になった。
──どうしよう。
嬉しい気持ちが隠せない。
きっと楓も同じだろう。
楓は、一旦私から離れると、私が着ている寝間着のボタンを一つ外した。
ブラジャーは身につけてないから、一つ外すと胸がポヨンと動く。
私のおっぱいでも見たくなっちゃったのかな?
それにしては、楓の表情が真剣そのものだ。
「どうしたの?」
「香奈姉ちゃんの匂いは、そこからしてるような気がして──」
「私の胸から? どうして、そう思うの?」
「前に誰かから聞いたんだけど、女の子の匂いはおっぱいから出てるって、言ってたんだよね。本当なのかなって──」
「それ──。誰から聞いたの?」
私は、自分の胸元を押さえて、楓にそう訊いていた。
「え……。誰って言われても……。僕自身、よく覚えては……」
楓は怯えた様子でそう言って、私を見てくる。
多少、威圧をかけたのかもしれない。
でも、女の子の体臭のことを言われたら、黙っているわけにはいかないじゃない。
ましてや、楓から出た話ではなく、別の人から聞いた話だったとしたら余計に気になるし。
「よく思い出してよ。誰から聞いたのかな? それ──」
「いや……。実は僕も、よく──」
楓は、引きつったような表情を浮かべる。
そんなに言いづらいことなんだろうか。
「そっか。私には、言いづらいことなのか……。それなら、仕方ないね」
私は、しょうがないと思いつつ寝間着を脱いだ。
さっきも言ったとおりブラジャーとかはしてないので、寝間着を脱いだら、完全に裸だ。もちろん、楓におっぱいを見せることになる。
まぁ、楓になら見せても別に構わないんだけどね。
「何をするつもりなの?」
楓は、私のいきなりの行為にビックリしている。
別に脅すわけじゃない。
ただ、楓には女の子のことを知ってもらいたいと思っただけだ。
「誰から聞いたのか忘れたんなら、今ここで試してみようか」
「試すって、何を?」
「私のおっぱいから匂いが出ているかどうかだよ。楓になら、わかるんだよね?」
私は、そう言って楓に大きめな胸を見せつける。
胸のサイズには、少しだけど自信がある。
「いや……。それは……」
楓は、私の胸を見て躊躇していた。
そんなに顔を赤くして。
照れているんだ。可愛い。
「…だったら、私のおっぱいの匂いを嗅いでみなさいよ」
私は、問答無用で大きめな胸を楓の顔に押し付ける。
「むぐっ⁉︎」
私の胸元から楓の声が漏れてくるが、今は聞こえないふりをしよう。
楓は、私の胸に手を触れてくる。
私の乳房は楓の口元にいくようにしたから、後は私の乳首を舐めてみるだけなんだよね。
たぶん、匂いはそこから発しているんだと思うし。
私の乳首を舐める感触が、いつ私に伝わってくるか楽しみっていうかなんというか。
そう考えると乳首の感覚が敏感になってしまう。
楓は、私の乳房の匂いを嗅ぎ始めた。
「どう? 匂い…してる?」
私は、思案げな表情を浮かべてそう訊いていた。
ホントはすごく恥ずかしいけど、表情に出すと楓はこんなことしてくれそうにないので表面には出さないようにする。
楓は、もう片方の乳房の匂いを嗅ぐと、こくりとうなずく。
「うん。甘い香りがしてる」
「それだけ?」
「それと……」
「うん」
「香奈姉ちゃんのおっぱい。柔らかくて気持ちいい」
「そう。…それなら、存分に味わって」
私は、楓の頭を抱き寄せる。
今日は、私の胸を思いっきり堪能させてあげよう。
「うん」
楓は、再び私の乳房に顔をうずめてきた。
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