第217話 奪掠
海原「こっちはテメーなんかと喋りたかねぇーよ」
三ツ葉「この期に及んで私達と何を話すというんです」
中野「だから そんなつれない事言うなよ 三ツ葉 元同僚じゃねぇか」
三ツ葉「いつからそんなお喋り好きになった」
中野「ハッ やっぱ面白味に欠ける野郎だ」
海原「要件があるならさっさと言え」
中野「ハッ わぁーた わぁーた だからしばし休戦… いや休憩だ 攻撃はやめて銃は下ろせや」
何を考えてやがる…
狙いを定めたまま警戒する海原
中野「ほじゃ本題に入ろか」
三ツ葉「…」
中野「俺様相手におまえ等なかなかやるじゃないか 想像以上におまえ等がしぶとく、その上こっちは相当なダメージを負ってしまった」
海原「…」
中野「このまま撃たれ続ければ流石にパワーアップ化したこの身ももたん… そう判断した」
こいついきなり何を言い出すんです…
三ツ葉も銃を構えたまま怪訝と不信を抱いた表情で見つめた。
海原「ほ~ なら降参か? 白旗でもあげてみるか化け物」
中野「ハッハ~ 白旗だぁ それは面白いジョークだ」
海原「違うのか… ならテメェーは…」
三ツ葉「それで? だからどうしたんです?」
中野「このままでは俺はおまえ等に殺られちまう… そこで俺はある事を思いついた」
三ツ葉「…」
中野「起死回生からの貴様等をあの世に送る方法をな」
海原「ちびちび回りくどく言ってねぇではっきり言え 起死回生だと? この状況でそんなもんねぇーよ… ってテメェーまさかそれ… 中野さんを人質にとったつもりか? それでこいつの命がどうなってもいいのか ただちに武器捨てろとかほざくんじゃねぇだろうな もしそうなら中野さんには悪いが関係なく速攻で射殺だぜ」
三ツ葉「そうゆう事です 貴様が死ぬか 私達の弾薬が尽きるか… そのどちらかしかない この状況下でどちらが濃厚かは一目瞭然だろ」
中野「ハッハ~ ハハハハ やっぱおまえ等は間抜けだな」
三ツ葉「何?」
伝達がわりな白眼を剥いた中野の目に瞳が戻り、ニタリと笑みが浮かべられる
中野「おかげで準備は整った…」
ハッとさせた三ツ葉が引き金をひく寸間
瞬間的に腕がイソギンチャク型に変化
その口から複数の触手が伸ばされた。
変形した右腕から幾数もの放出された触手
その内1本が七海の手首から指にかけぐるぐるに巻きついた。
七海「え?」
また三ツ葉のトリガーを引こうとする指にもスルリと入り込み、固定された。
しまった…
三ツ葉、海原、七海の腕にそれぞれ触手が巻きつかれた。
そして三者の反応よりも早く発砲が抑止された…
中野「ふははぁ~」
七海「何よこれ…」
海原「クソ 引き金がひけねぇ」
中野「あ~ハハハ つくづく馬鹿で甘くて油断しすぎなんだよおまえ達は」
三ツ葉「クッ 図ったな」
そして中野の背中に取り付く管が抜けるやクリーチャーが倒れ込んだ
三ツ葉「貴様 乗り移ったのか?」
中野に乗り移りし月島がゆっくりと一歩を踏み出す
月島「あぁ その通り 甘々なおまえ達のお陰で無事にな」
振り解こうにもガッシリと固定され、力んだ海原が近づいて来る月島を見た。
月島「ここは殺し合いの場だぜ 何お人好しに敵さんの話しに耳傾けてんだよ 躊躇無く 容赦無く 即引き金をひけなかったおまえ達が悪い いや どう見てもただのお馬鹿だぜ ハッハハハハハハハ」
海原「身も心も腐った野郎め 起死回生ってのはこれの事か… テメェー 最初から中野さんの身体を乗っ取るハラかよ」
月島「あぁ 火傷のダメージが少々残るが全く問題ない 申し分ない身体だ それもこれもおまえ達が馬鹿なお陰で… 時間が稼げたおかげで 無事転送をコンプリートする事が出来た ハハ HPは満タンだぜ」
海原「何がコンプリートだ このクソ野郎が」
月島「さて 形勢は逆転された 新たな自分に出会えた暁にどう料理してくれようか」
七海「ヒィィ」
唇を震わせ、脅える七海と目を合わせた月島
そして品定めするように三者を目にする月島が三ツ葉に目を止め、近づいていった。
月島「残念だったな… 三ツ葉」
三ツ葉「うぐっ ぅ…」
巻きつきが強められ、苦悶を浮かべた三ツ葉
グリップを握る手が弱められた。
月島「どうした… 早く俺を撃たないのか? もしかしてもういらないのか? いらないなら貰おう」
三ツ葉「ぐぅ…」
そして三ツ葉の手からゆっくり拳銃が奪い取られた。
月島「クリーチャー化した際 おまえ等にしこたま銃弾を貰ったな それはそれは撃たれる度に痛かったんだぞ おまえにこの痛み分かるまい」
銃口を三ツ葉の顎へと押し付け
月島「おまえも撃たれてみるか?」
三ツ葉「ぅ… うぐ」
それからゆっくり銃口を顎から腹部へと移動させた。
月島「この俺様を逮捕する事も出来ず 処理も失敗 おまえは何も成し遂げられずにこのまま死んでいく さだめ なんだよ」
そして腹部に銃口を押し付け、耳元で囁いた。
月島「これから来る新時代… この地でユートピア計画は必ず成就させてみせる」
三ツ葉「うぐっ まだそんな戯れ言を言うか おまえ等侵略者の情報は既にザクトの耳に入ってる 筒抜けですよ ぐぁあ」
月島「それがどうした」
三ツ葉「ザクトがただの寄せ集めな軍事組織でない事は貴様も承知な筈です…」
月島「…」
三ツ葉「この世を いや この地を元通りに… また人々が安心して外を歩けるように… 平和に 穏やかに 誰しもがまた笑って暮らせる世界に戻したいと願う者達の集まり それがザクトという組織ですよ その強い意志のもと結ばれた一枚岩の者達の力を見くびるな そんな計画阻止すると何度言わせる気だ」
月島「ほ~ 一枚岩ときたか ならばこちらも真っ白なキャンパスの地を求める者達の集まり この国土を喉から手が出るほど欲っしている欲深な者達だ 何が何でも手に入れてやろうとする強い欲求… さて 果たしてその思いの強さ どちらが勝っているんだろうな」
そして月島がまた耳元でそっと呟いた。
月島「なら一つとっておきの新情報を教えといてやる…」
三ツ葉「…」
月島「これより世界中から我ら同士が北海道の地に集まる予定だ」
三ツ葉「何…」
月島「戦火輝くドデカい祭りになるだろうに… 残念だがおまえはその幾末を亡霊となって見届けるしかないがな」
すると
パァン
押し付けた銃口から腹部に1発撃ち込まれた。
押し込まれたゼロレンジからの発砲
三ツ葉「うっ」
腹部から大量の血を流し
無表情へと変えた月島が銃口を離すやもう1発
パァーン
発砲させた。
海原「テメェー やめろ」
七海「やめてぇ~」
至近距離から銃弾を受け、俯かせた三ツ葉が吐血
もう続けて1発
パァン
3発の弾丸をまともに受け、衣服がまたたく間に血で染まっていった。
七海「きぁあああ~」
海原「ぶっ殺してやるテメェー」
三ツ葉の顔が月島の肩へともたれ込むや
叫ぶ七海と海原に冷めた目を向けた月島
パァン パァーン
もう2発が撃ちまれた。
三ツ葉「ガバァ」
大量の血が吐き出され、眩んだ瞼が重くなる三ツ葉
七海「いやぁぁぁぁ」
そして膝が落ち、ズルズルと三ツ葉の身体が崩れ落ちていった。
その間 息をひきとった三ツ葉
月島の放った凶弾に倒れ、無念の死を遂げた三ツ葉の身体が…
月島が身を逸らすと魂の抜けたその身体がゆっくりとひざまづき、前に倒れ込んでいった。
月島「…」
海原「テメェー ぜってぇー 許さねぇ」
すると続けざまに月島が無言、無表情で海原に銃口を向けてきた。
それから躊躇無く
銃殺しようと引き金がひかれた。
だが…
ガチガチ
シグザウエルは弾切れを起こし
月島「フン」
拳銃が放り捨てられた。
月島「心配するな 直ぐに後を追わせてやる」
海原「チッ テメェー」
捕らわれし海原、七海に月島が殺意の眼差しを向けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
同刻
北海道 釧路市 陸上自衛隊 釧路駐屯基地
もくもくと黒煙たちのぼる基地上空を飛行する多目的汎用ヘリコプター kaー60 通称カサートカ
その数機のカサートカが飛び回る中
基地門数メートル向かいには積み上げられたゾンビや感染者の死体の山があった。
そしてその山積みにされた死体には火がつけられ、焼却されていた。
その火葬される火の中にいっせーの せいで死体が投げ込まれ
基地内から次々と奴等の死体がロシア人によって運ばれていた。
自衛隊基地を行き交うロシア人達の姿
そんな基地内のある一室
作戦通信センターなる一室のテーブルに座り込む1人の男が無線で話していた。
「да(はい) Подавление закончилось со временем(とっくに制圧は終わってますけど)…… да(えぇ) Это всегда хорошо(いつでも大丈夫ですよ…)」
真紅のベレー帽を被りし、まだ20歳にも満たない若人の軍人
ヴェチェラフ直属の部下
ステラアイランドなる男
同刻
海上自衛隊函館基地
釧路同様 ゾンビ等が一掃され、基地内を行き交うロシア人共の姿
施設の窓際に立ちそれを眺めながら通信を図る男の姿があった。
フィスフロント中尉「……Мы готовы приветствовать вас в любое время(いつでも歓迎可能な状態は整ってます)」
また…
陸上自衛隊岩見沢基地
アイベリック軍曹「Мы готовы пригласить гостей в любое время здесь(こちらもいつでも来客を招く準備は整いました)」
十勝軍事演習場
野営テントがいくつも設営された演習場の無線場に態度デカくのけぞりながら喋る女性兵士の姿
イリヤ准尉「……Приходите(お越し下さいませ) полковник(大佐)」
拠点に盤石な駒が配置され、戦闘準備が整いつつあるヴェチェラフの部隊
ーーーーーーーーーーーーーーーー
地下ホール 御見内達一行vs彩羽vsミナグロvs万頭
高級なトレンチコート下から見える黒のブリオーニスーツ、そしてバッチリ固められた七三のヘアースタイル
薄手な革製の手袋をはめる男 万頭がエレナ達の前に現れた。
エレナ「万頭」
村田「例の爆弾野郎か… またいいタイミングで現れやがる」
山口「クソ」
すると
数歩前に飛び出た美菜萌が万頭を目にしながら皆に発した。
美菜萌「皆さん そのまま進んで下さい」
万頭「…」
美菜萌が木刀を脇構えに構え、ジッと万頭を目にした。
山口「しかし奴が…」
そしてエレナも小銃を向けながら美菜萌の横に着き、口にした。
エレナ「大丈夫よ みんな 行って」
村田「山口さん 俺も残りますんで 後頼みます」
村田も立ち止まり万頭を目にした。
山口「分かった 搬送を終えたらすぐ戻る 行くぞ 吉田」
御見内「佐田さん 臼井さん達をお願い」
佐田「あ… あぁ」
佐田が臼井、妊婦、柊の母親のリードを代わり誘導
皆が進み出そうとした時だ
バラバラと周辺に何やら投げ込まれた。
複数もの黒い円形状の筒
万頭がそれらを辺りに散りばめたのだ
そしてリモートコントローラーらしき物を差し示し、口にした。
万頭「誰がすんなり行かせると言った」
足を止めた山口等の前に撒かれたのは小型爆弾
一同息を呑み、たじろいだ
エレナ「私よ」
そんな中 勇敢にも更に前に出たのはエレナ
エレナ「スイッチなんか押すつもりもないくせに」
万頭「何だと?」
エレナ「それを押せばあんたも巻きぞい食うじゃない はなからそんな見え透いたコケ脅しは止めなさい」
万頭「ふ… ハハハ あぁ~ 止めなさいときたか」
エレナ「それにそもそも目的が違うでしょ」
美菜萌「あの時の続きをしにきたと違いますか?」
エレナの斜め後ろに着ける美菜萌が口にした。
村田「続き?」
美菜萌「はい この男とはちょっとした因縁めいたもんがありまして」
エレナ「女2人に負かされて悔しくなってあの続きをしにきたんでしょ ねぇ そうなんでしょ?国際テロリストさん」
エレナの挑発めいた口調
万頭「ふっふ 悔しいか…… 間違ってはないかもな… だが少々2つ程違ってる… あれしきの小競り合いで俺を負かしたと思ってるのか?あんなのは挨拶レベルだ 勝敗のしの字にも満たない序盤戦 まだ殺し合いは継続中だという事 そしてもう1つはあの時 何故おまえ等2人を生かしたまま去ってしまったのか… おまえ等2人など容易に葬れたのにな… あの時始末しておかなかった事を悔やんでいる まぁ そういった意味での悔やみ そんな所だ」
エレナ「私達を容易に葬れただぁ? テメェー」
挑発返しにあっさり負かされたエレナの方が感情的になった。
万頭「まぁ いいだろう こちらも外野にようはない 通りたければ通れ」
そして万頭もあっさりと通行を許した。
美菜萌「皆さん さぁ 行って下さい」
山口「あ… ああ 行くぞ」
慎重に爆弾を跨ぎ、恐る恐る万頭を横目に通り過ぎていく山口、吉田、佐田、榊原、臼井 そして救出者達
青木「美菜萌さん」
早織を抱えた青木が心配そうな顔で美菜萌の背後から呼びかけた。
青木「ここは俺が残るべきだ」
美菜萌「いえ 行って あいつが用あるのは私だから」
青木「でも…」
美菜萌「早く行って 早織ちゃんをお願いします」
早織「美菜ちゃーん」
美菜萌「お姉ちゃんなら大丈夫 心配しなくても それよりちゃんとお兄ちゃんの言う事聞いてね」
早織「うん…」
美菜萌「さぁ 青木さんも早く」
青木「……分かった この子を安全な場所まで送り届けたら必ず戻って来る」
美菜萌「うん 待ってる」
青木がエレナ、御見内等にも視線を向け、軽く頷くや走り出した。
早織「美菜ちゃーん」
抱っこされ、手を差し伸べる早織を見送る美菜萌
そして青木も万頭の横を駆け抜けて行った。
この場に残ったのはエレナ、美菜萌をはじめ御見内、純や、村田の3名
ルームを出て行く青木の姿を全員が見届けた
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