第183話 蜘蛛

窓際に映る不気味な人影にエレナも注視した。



バスタードと対峙する2人



エレナが照明スイッチを入れパッと明るくなった部屋にバスタードの姿がはっきりと捉えられた。



胸や顔から流血、身体中血にまみれな姿で仁王立っている。



エレナ「フードの奴も外で待ち伏せてる…」



御見内「そうか… なら一戦交えるしかなさそうだ あれもゲットバックしてえし…」



御見内はバスタードの掌に吸いつく小銃に目をやりながら口にした。



様子を伺っているのか…?



立ったまま、大人しく2人を静観しているバスタードを目にエレナも口にした。



エレナ「一戦交えるって格闘で張り合う気?」



数歩前に出てファイティングポーズをとった御見内



御見内「まぁ そうだ これ以上こいつからは逃げ切れそうもない」



エレナが小銃を壁に立てかけ、懐から拳銃を取り出した。



エレナ「それもそうね」



御見内「何してる? 下がってろ」



エレナ「何言ってんの 相手は普通の人間でもゾンビでも無いんだよ やるなら2人がかりでやらなきゃ」



流血が脚をつたい、ポタポタ垂れ落ちた血でフローリングが汚される間



微動だにしないバスタードが猫背の姿勢を取りはじめた。



そして拳銃マカロフを構えエレナも前に出た。



御見内、エレナvsバスタードタイプB



オープンハンドなボクシングスタイルの構えを取る御見内の前でバスタードがいきなり地に伏せ四つん這いの格好を取りはじめ



口を開いた。



「捕獲対象となるお二方には誠意を持って半死になっていただきますのであしからず、その後は捕虜として丁重にお運び致しますのでご心配なさらずにどうぞ」



眉をピクリとさせた御見内



捕獲対象…



すると



バスタードが先制で飛びかかってきた。



素早き地の這いからなりふり構わぬ飛びかかり



御見内、エレナが左右にバラけるやバスタードがまた玄関ドアに激突



その際2人は互いに離れ、壁際にポジションを置いた。



キリッとした目つきでエレナは拳銃を構え、御見内も和弓を取り矢を装填させる



2~3秒程の沈黙の間



「かぁ~~ぺっ」



死角からタンの吐かれる声がし



「ヌルい温いわよ うつけ共」



それからカサカサとトカゲの様に中央まで這い、二足で立ち上がった。



「片腹痛し…」 



そしてギロリとエレナをガン見するや



「わらわの備前流忍術味わってみるか?」 



来るか…?



エレナが引き金に添える指に力を加えようとした直前



「忍法 旋風手殺の刑やぁ~」



そして両腕を広げ、高速スピンさせながら襲いかかってきた。



エレナ「わわ」



エレナは咄嗟に横に逃げた。



バコッ



手刀の竜巻で壁紙は裂かれ、穴の開いた壁に掌から外れた小銃が突き刺さる。



エレナが今度は窓際まで移動



回転を止めたバスタードがにたびエレナに顔を向けると



「おのれ 拙者のこの術をよくぞかわしおった ならば続いて味わえ 忍法 魔利支天 春風の舞」



そう口走り、ジャンプで壁に貼りつくとそのままダイブ



問答無用に頭から突っ込んできた。



しかしこれも不発



バコン



バスタードは自爆で壁に頭を突き刺した。



その間 御見内と共に玄関口まで移動したエレナ



エレナ「なにこいつ… 調子狂うわね」



御見内「チャンスだエレナ 撃て」



頭が壁に刺さって抜けなく、足掻くバスタードに投擲武器を向けた2人から発射された。



バシュ  タンタンタン



くびれた腰に矢が刺さり、背中に銃痕がつけられる



しかし大してダメージを負った感も無く、バスタードは尚も暴れている。



エレナ「こいつも効かない系?」



御見内「いや 痛感が無くて痛がらないだけだ 肉体的ダメージはある筈」



御見内が唐突に弓を仕舞い移動



そして壁に刺さった小銃を抜き取り、手に取った直後だ



バスタードの首がスポンと抜け、勢い余って倒れた。



ギロリとエレナに視線を向けたのち、バスタードは翻(ひるがえ)り、犬居(犬のお座り)な姿勢を取った。



エレナ、御見内共にいつでも射撃可能な態勢で銃口を向け、キリッと睨みをきかせる



バスタードは左右にバラけた2人に目を配り、それから言葉を吐いた。



「半死となる身がちょこざいな抵抗とはもはや遺憾の極み、その動き封じてくれよう 骨身に染みなされ 備前流忍術 封魔忍法 磔蜘蛛」



映画やアニメでお馴染みの忍者が術を行う際に行う印結び、九字護身の印を結んだバスタード  



そして



目にも止まらぬ速度で移動



ドン



エレナ「うっ」



エレナの胸に右の張り手が打ち込まれ、エレナはそのままドアに打ちつけられた。



ドカ



エレナ「うっ」



エレナの口から唾液が飛沫され直撃を受けたエレナの目が開かれる。



御見内「エレナぁ~~」



見た目は単なる掌打の張り手に過ぎ無いがエレナの胸が掌へと吸いついていた。



御見内がバスタードの背中に銃口を向け、狙い定めるやバスタードは振り返り、エレナの身体を盾代わりに差し向けてきた。



何これ… 離れない…



くっ…



御見内が銃撃を躊躇した途端



襲いかかってきたバスタード



左手で掴みかかろうと突き出したストレートを御見内がパンチングで弾くや



ブン ブン



連続で振り回すその手をステップで後退しながら回避していく



ブン ブン



キュキュ



フローリングに靴の擦れる音が鳴り



ダッキングやスィーピングアウェーで巧みにアウトサイドへ逃げ回る御見内に…



バスタードが今度はエレナの身体ごと振り回しはじめた



ブン



くっ…



エレナの脚部が当たる寸前、ギリギリで回避した御見内が角際へと追い詰められた。



次の瞬間



手首が掴まれた。



しまった…



ブン



御見内の足が浮き



ドカァ



持ち上げられた状態から床へと叩きつけられた。



エレナ「くぅ… みち…」



御見内「かはっ」



そして続けざま



ブン



バコン



今度は側壁に叩きつけられた御見内の身体



エレナ「道ぃ」



何これ… 吸いついて身体が離せない…



ガッチリ掴まれた手首から逃れられず強烈な2打を食らってしまった御見内



エレナ、御見内共にバスタードに捕まってしまった。

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