第178話 清算

村田「え?」 海原「奴が…」



麻島「顔は手配書の写真で見た事がある 間違いない 万頭本人だ」



村田「こんな片田舎にそんな悪の大物が…?」



麻島「奴は有名なテログループ カザックの実行班であり また月島もその1人… その繋がりとしか思えないな」



村田「カザック… またその名ですか ここに来てからしょっちゅう耳にしますね」



海原「しかし敵サイドに万頭がいるとなればこちら側はあまりにも戦力不足 三ツ葉が人員補強で部隊を引き連れ戻って来るのを願うしかないですね」



麻島「あぁ だがそれはあまり期待出来ない 今後も俺達だけで対処すると思っておけ」



海原「う… はい」



村田「隊長 次はどうしますか?」



麻島「あぁ 次はあの山道を調べたい 処理場までの道のりに敵の数や監視カメラ、トラップの有無を調べる 尚施設の周辺警備状況、突入の別ルートがないかを探る 海原 今何時だ?」



海原「10時20分です」



麻島「日暮れまでにある程度情報を集めたい  大きく右に旋回し森の中を移動する ついて来い」



村田「了解」  海原「はい」



3人はルート及び廃棄物処理場の偵知で移動をはじめた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



サタナキア(廃棄物処理場) ある一室



四畳程のある小部屋



四方片隅に置かれた蝋台、その上に灯された4本の和蝋燭が1人の男をともし火で照らしていた。



目を閉じ



結跏趺坐(けっかふざ)な足の組で座禅する男



手は法界定印(ほうかいじょういん)な印が結ばれている。



そんな狭く、静かな箱部屋で1人瞑想する男 スキャットマンの身に突如何かが感知された。



パッと目を開けたスキャットマン



結界に3つの生気…



虫が入り込んだか…



ーーーーーーーーーーーーーーーー



豪邸  ある一室



真昼にも関わらず窓は締め切られ、キャンドルが灯された一室



天蓋のベッドは白いカーテンに覆われその中から淫らな女の声が響き渡ってきた。



冴子「あ あっ あん ん すご…幻史… あっ… 奥まで はぅ あっ イキそう は あっ…」



四つん這いで悶える冴子の姿



髪が揺れ、プルプル縦に揺さぶられる胸



両手でシーツを掴み、快楽に溺れた表情で外まで漏れそうな全力な喘ぎ声を発していた。



パンパンパンパンパン



後ろから突かれる音が鳴り



冴子の桃尻が鷲掴まれ、穴に刺しこまれる肉棒



とても魔導士とは思えぬスリムで鍛えぬかれた胸板と6つに割れた腹筋



山吹が激しいピストン運動で性交を行っている



冴子の穴から溢れ出た分泌液がセクシーストッキングを濡らし、シーツまでも濡らす中



冴子「あっ 気持ち あん やば… だめ… あっ あ ぁあ~ ぁ」



一瞬シーツに顔をうずめた冴子



恐ろしい殺人鬼も山吹の前では調教され従順な女と化しているようだ…



そして高速の抜き差しが衰えぬままかれこれ1時間経過したさなか



コンコン



ノック音が鳴り 1人の男が入室してきた。



黒フード「代表 お楽しみ中申し訳ございません 取り急ぎ報告が2点程ありまして お耳に入れておきたいかと」



山吹「何だ?」



パンパンパンパンパンパンパン



冴子「はぁ あ ぁ 気持ひいぃ~ ん あぁ あん あん」



黒フード「1点はサタナキアに万頭様と共に月島様がおいでになったとの事です」



山吹「…」



パンパンパンパンパンパンパンパン



冴子「ん あん あ もう ハァン イッちゃった ん …かも あ ぁん」



黒フード「代表に挨拶したく、サタナキアに早くお見えになって欲しいとの事です」



山吹「そうか 分かった っでもう一点は?」



黒フード「はい もう一点はスキャットマン様からのご報告で法力の結界内で侵入者が感知されたとの事です」



山吹「侵入者? レジスタンスの虫共か?」



パンパンパンパンパンパン



冴子「あん あ ぁ もうらめ あ あん ぁ~~」



山吹「うるさいぞ冴子 少し口を閉ざせ」



パンパンパンパンパンパンパン



冴子「ん ん らって んぐ……」



黒フード「いえ どうやらレジスタンスに協力するザクトの兵士のようです」



パンパンパンパンパンパンパンパン



ピストン運動を緩めぬまま突き続ける山吹



山吹「人数は?」



冴子「う… うぅ…」



冴子はシーツに顔をうずめ、必死に声を殺している。



黒フード「3名との事です」



山吹「フッ たかが3匹か…」



黒フード「どうなさいますか?」



パンパンパンパンパンパン



山吹「放っておけ」



黒フード「よろしいのですか?」



すると



山吹「あぁ 泳がせ… ん 待てよ んん」



何かが閃いたと同時に急にピストン運動が止まり、冴子の膣の中にそのまま射精された。



そして男根が抜かれるや否や



山吹「いい事を思いついたぞ 冴子起きろ これからサタナキアへ出向く」



足腰をガクガクさせた冴子は動く事が出来ず



冴子「む…ハァハァ 無理… ちょっと待って」



ピクピク痙攣した膣から垂れる精子



冴子はそのままうつ伏せに倒れ込んだ



その間着替えをはじめ、赤い衣に袖を通した山吹が魔導書を手に取り、脇へと抱えるや



山吹「月島、スキャットマンにはすぐそちらへ向かうと伝えておけ」



黒フード「かしこまりました 失礼します」



黒フードが退室した。



山吹「冴子 いつまで寝てる気だ 早くしろ」



冴子「ハァハァ どこに行くの?」



山吹「おまえ全く聞いてなかったのか?」



冴子「あんな激しい中 聞ける訳ないでしょ 何を企んでるの?」



山吹「フフフ そうだなぁ…言うなら飛んで火に入る冬のクソ虫共に…… 逆に丁重なおもてなしをしてやらんとな」



冴子「え? どうゆう意味?」



山吹「いいから早く着替えろ 赴くぞ」



尻を突き出したまま起き上がろうとするが…



冴子「駄目 足がガクブルで動け無い」



バタンと再度倒れ込んだ



冴子「幻史 5分だけ待って…」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



レジスタンスアジト メローペAOMORIレジデンスマンション 14時25分



早くも続々とロビーに降りてきた生存者達



80名もの爺様婆様奥様方でロビーはにぎわいを見せていた。



そこへマツ、石田、佐田等がダンボールを抱え戻ってきた。



マツ「お 随分と早いな もうこんなに集まってるのか」



ダンボールには大量の玉ネギやジャガイモ、ニンジンなどが入れられ、それらが3箱分運ばれてきた。



「あら 凄い どうしたのこんなにいっぱい」



皆が興味津々にマツ等に群がり中を覗いている。



マツ「ぎょうさんあるだろ これ全部ビニールハウスから頂戴してきたんだよ これだけあれば100人分はいける」



中野「マツさん 肉の方は解凍しときました あと給湯室で今 御見内さんが米研いでます」



マツ「分かった みんな降りてきたのか?」



中野「いえ あと20人程降りてきます 七海さん達も呼んできますか?」



マツ「いや 子供の世話で忙しいだろうからいい 料理が出来たら呼ぼう こんだけ人手もいる事だしな よし じゃあ少し早いが準備でもはじめるか」



すると



「はい はい みんな皮剥いて」



袖をまくった主婦達が押し寄せ



石田「うわっ 危な」



婆様や奥様方がこぞってダンボールから野菜を掴み取り、皮をむきをはじめた。



「包丁は?」



「流しはどちらかしら? これ一度洗わないと駄目ね」



中野「給湯室です」



「大きなザルも必要よ はい 早く用意する」



中野「あ はい」



「まな板は?」



マツ「ここにある」



「ルーはこれ全部使っていいの?」



石田「あ はい 全部使っちゃって大丈夫っす」



「はいはいはいはい どいたどいた 男は邪魔よ ダンボールそこに置いて向こう行った行った」



石田「みんなで作るがコンセプトなんすけど…」



「こっちは何十年主婦つとめてきたと思ってんだよ あんた達がやる事なんかありゃしないよ」



80近い高齢の婆ちゃんがテキパキ玉ねぎの皮を剥きながら石田に口にした。



ニンジンの皮を包丁で器用に剥いていくおばさま達



完全に女性陣に占領され、給湯室から御見内が追い出される姿を目にした。



中野「ありゃりゃ みんなで勝手にはじめちゃいましたわ」



「ハッハッ おなご共にまかせときゃ~え~よ」



「じゃあ待つ間 一局どうですか?」



「いいですね」



爺様方は椅子に腰掛けくつろぎはじめる者や将棋をやりはじめる者、談笑しながら出来上がりをのんびり待ちはじめた。



「コンロ火点けるわよ いい?」



「ルー 甘口と辛口しかないけど適当に混ぜちゃっていいよね?」



主婦に圧倒され、はじき出された御見内



御見内「途中で追い出されちゃいました」



中野「マツさん… どうします?」



マツ「フ ハッハッ 参ったなこりゃ~ まぁいいじゃないか 活気があっていいんじゃないか 男は向こうに行ってろって言われたら出来上がるのを待つしかないだろう」



佐田「まあ そうすね」



マツ「ツネ婆 旨いの作ってくれよ」



「当たり前だろ 2杯でも3杯でもおかわりさしちゃるよ」



マツ「そりゃ楽しみだ 中野 料理が出来たら呼んでくれ それまで部屋で休んでる」



中野「うす 了解です」



マツ「おまえ等も力仕事したんだ 少し休んどけ」



佐田「はい」 石田「はい」



マツが部屋へと戻って行った。



「ねぇ ゴミ袋はどこ?」



中野「あ はい ただいまお持ちします」




屋上



空から舞い散るパウダースノー



微かだが地面が白く覆われはじめた。



青木「フゥー」



咥えタバコで手をこする青木



ダウンジャケットを着込み、手摺に座って足をぶらつかせながら降りしきる雪を眺めていると



早織「わぁ~い 雪やコンコンだぁ 降ってる降ってるよ~」



早織の声が響き



美菜萌「早織ちゃん やっぱお姉ちゃん寒いよ やるなら中でやろうよ」



そして美菜萌の声も…



早織「え~ やだぁ~ 外でやりたいの」



一瞬ドキッとさせた青木が声の方へ振り向くと



美菜萌「だってそろそろ下行かないといけないよ みんなでカレー作るんだから 時間もあまりないし…」



早織「ちょっとだけぇ~」



カラーボールを持った早織と美菜萌が青木の前にやってきた。



早織「あ~ お兄ちゃんがいるぅ~」



美菜萌「あら ほんと」



青木を発見するや駆け足で近寄ってきた早織



美菜萌「こんにちわ青木さん」



青木「あ ども こんちわ」



青木が早織の頭を撫でると



早織「何してるのお兄ちゃん?」



青木「ただ 雪を見てただけだよ」



早織「ふぅ~ん ねぇ お兄ちゃんも一緒にボール遊びしようよ」



美菜萌「駄目よ 早織ちゃん 迷惑だから邪魔しちゃ やるなら向こうで美菜と2人で…」



青木「いや いいよ やろうよ」



早織「やったぁ~」



美菜萌「もぅ ごめんなさいね」



青木「全然」



早織「ほら行っくよ~ えい」



雪の中行われるキャッチボールに付き合う青木



ボールを受け取り、次に美菜萌へと投げ渡した時



ん? そういえばいつもと雰囲気が違う…



まじまじと美菜萌を目にした。



いつもなら運動性や機能性を重視した迷彩ズボンにミリタリー系の格好をしているのだが



今回はショートパンツにタイツ ダッフルコートを着こなし



首にはマフラー



そして何と言ってもいつもサイドテールで結ばれてる髪が解かれていた。



印象がガラリと変わった私服姿に一瞬目を奪われていると



早織「それ」



早織から投げられ慌ててキャッチした。



三角形になりキャッチ&スローを何度も繰り返し楽しむ3人



早織「美菜ちゃん パス」



美菜萌「ん~ 行くよ それ」



早織「お兄ちゃん~ パース」



青木「よし早織 今度は思いっきり投げて来い」



早織「うん 分かった ん~ それぇ~」



青木「おぉ 上手い 早いじゃねえか」



早織「えへへへ~ やったやったぁ~」



美菜萌「上手上手」



無邪気にはしゃぐ早織、その相手をする青木に視線を向けた美菜萌からも自然と笑みがこぼれ拍手する。



美菜萌「早織ちゃん それ~ あ~ごめん」



美菜萌の投げたボールがすっぽぬけ早織の頭上を越えてしまった



美菜萌「あ~ ごめ~~ん」



早織がそれを取りに行く途中、凍りつく水溜まりを発見



すると



早織「あ~ 見て見て水溜まりが凍ってるよ」



今度はその水溜まりに気が引かれ、急に遊びはじめた。



早織「キャハハハ 氷だ 氷 えぃ えい」



足で氷を割り



ボール遊びも忘れてピンクの長靴でバチャバチャしだした早織を見ながら美菜萌に近寄る青木



青木「もう飽きちゃったかな」



美菜萌「ありがと」



青木「え?何が?」



美菜萌「キャッチボールに付き合って貰って」



青木「え いや 何て事無いよ これくらい」



美菜萌「早織ちゃんも喜んでくれたし良かった」



青木「こんなんで良ければいくらでも それよりどうしたの いつもと格好が違うけど これからどっかお出かけ?」



美菜萌「ううん ただ七海さんにこの前服装の事で叱られちゃって たまには私服でも着てみようかなと思ったの… 変かな?」



青木「いや 全然 凄く感じも変わるしいいと思うよ」



美菜萌「ホント? ありがとう 勇気を出して着てみるもんね」



青木「ハハ どんだけ久々なんだか」



早織を見守りながら話しする2人



青木「しかしなんだなぁ… 子供はこんな中でも元気だよね 雪見てはしゃげるのはゲレンデのスキーヤーか犬か子供ぐらいなもんだ」



美菜萌「ああ見えてもあの子無理してるんだよ…」



早織「パリパリ割れてる~ ひゃは」



青木「え?」



美菜萌「まだまだ母親が恋しい年頃… 必要なんだよホントは… たま~にね 寝言で言うの ママ~ ママ~って 私がいくらお姉さん兼母親代わりを務めたって本当の母親には到底かなわないよ」



青木「…」



美菜萌「早織ちゃんには今に至るまでいっぱい怖い思いをさせちゃってる… だからせめて一緒にいる時はあの子の笑顔だけは絶やしたくないと思ってるの」



青木「うん…」



美菜萌「1日でも早く世の中が元通りになってあの子と公園でキャッチボールでも出来たらいいな」



青木「ホントそうだね 一刻も早くそんな日が来る事を俺も願うよ」



美菜萌「ゾンビだけじゃない… あんな笑顔が素敵な女の子 あの子の命を奪おうと執拗につけねらうあの組織… 私がもっとも許せないのは山吹だよ あの男の人間とは思えない鬼畜の所業の数々… 私はあの男だけは絶対に許さない」



美菜萌の口にした言葉が青木の胸に突き刺さった。



それはまるで自分が言われてる様な気分だった



過去の過ちとは言え、共感、志しは無かったとは言え、組織の意志に染まってなかったとは言え、少し前までそこに属していたのは紛れもない事実



消すことは出来ない事実なのだから



人を人とも思わぬ残忍でイかれた連中、組織が行ってきた悪事の数々が青木の脳裏に去来された。



俺は元はあいつらと同じだったんだ……



そして美菜萌の悲しくも怒りに満ちた横顔を目にした青木



胸張ってこの子の隣りに立てない後ろめたさを感じる青木だが



同時に…



ある1つの決意が固められた。



汚名返上…



清算… って所か…



この子の隣りで胸張って立つには



この手で…



組織を己の手で壊滅するしか無い…



手のひらを見つめ



そう… 自らこの手でけじめをつける…



握り締められ



青木のその決意が今ここで固められた。



青木「美菜萌さん 1つ君に約束するよ」



美菜萌「約束?」



青木「あぁ…… あの邪教徒組織は必ずや壊滅させる」



今度は美菜萌が青木の横顔を目にした。



青木「全面的に君に手を貸す 一緒に奴等を潰そう」



美菜萌「青木さん…」



そして青木がさりげに美菜萌の手を握り締めるや



ハッとさせた美菜萌が



美菜萌「あ いけない 早織ちゃ~ん もう時間過ぎちゃってるよ~ お料理の手伝いしに行かないと~ 1階に戻ろ~」



すると



早織「はぁ~~い」



戻って来る早織を目にした青木が咄嗟に手を離した。



その直後



美菜萌が青木の耳元でこう囁いてきた。



美菜萌「子供と遊んでいる男の人って何だか素敵だなって思った 青木さんはちゃんと子供と向き合える人なんだって 私見直しました」



青木「え?」



美菜萌「さぁ~ 行こぉ」



美菜萌が早織の手を握り



早織「うん ねぇ~ 美菜ちゃん 明日には雪積もってるかなぁ?」



美菜萌「う~んどうだろぉ~ もし積もってたら明日雪投げでもしよっかぁ?」



早織「うん するするするするぅ~」



美菜萌「フフ じゃあ青木さん 私達先一階に戻ってるね」



早織「じゃ~ね~ お兄ちゃん」



青木「おう 後程な」



青木が早織に手を振りながら見送り、美菜萌へチラリと目を向けるや



美菜萌が笑顔で



そしてウインクを送った。


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