第113話 進歩

野々宮が着地した。



ハシゴ周辺に群がる奴隷、ハシゴを昇り途中な奴隷、通路まで上がってきた奴隷



その瞬間全ての奴隷達の視線が一心に野々宮へと集められた。



剣呑過ぎる空気



野々宮が敵群のド真ん中に降り立ち、御見内を探した。



ドカッ ボコ



奴隷が地に伏し



ラボへと通ずる入口前に御見内の姿



只今 奴隷を相手に奮闘中だ



既にノックアウトされた3~4人が床に転がる中



「Ω@#∵⇔∀√Åℓapξ」



残す1人 スクラマサクス(中世欧州の短剣)を手にする奴隷が何やら叫びながら袈裟斬り(肩から斜め斬り)で振るってきた。



御見内はそれを軽快な身のこなしで回避、内へと踏み込むや



強烈な左フックを脇腹に打ち込んだ



それから素早く首を捕まえ、ネックロック



フライングメイヤー(首投げ)で投げつける



奴隷が前転で転ばされた、次の瞬間



野々宮の目前で奴隷の顔面に正拳が打ち込まれた。



この状況でこの手慣れた戦いっぷり…



落ち着き、冷静な表情



かなり戦い慣れしている…



奴隷を瞬殺で倒した御見内の実戦を目の当たりにして野々宮はそう思った。



日本を救った勇姿は伊達じゃない…



まさに英姿颯爽



噂以上か…



そう関心するのも寸刻の間



御見内「隊長 こっちです」



御見内の呼び声でハッとさせた野々宮



2人はその通路まで走った。



そして1つ目の押し扉を駆け抜けながら開き、更に続く廊下をBダッシュする2人



野々宮がチラッと後ろを振り返るや、デパートの目玉商品を巡り開店と同時になだれ込む鬼気迫った客のように次々と奴等も通路に入り込んで来た



野々宮「来た…」



全速力で走行する



そして2つ目のドアを開扉



2人が更に進んで行くと、すぐに3こ目のドアが現れ、御見内がそれを勢いよく開いた。



すると今までの廃墟が嘘のような、キレイな通路へと飛び出た。



清掃の行き届いた床 清潔感ある壁 まるで異空間のような見違えた通路へ入り込んだ2人はこの急激な様変わりに驚きの表情を浮かべた。



天井に設置された監視カメラがゆっくり左右に動いているのが見え



御見内が後ろを振り返ると猛烈に追いかけて来る奴等の群れを目にした。



立ち止まる事も後戻りする事も出来ない今…



選択の余地は無い



前進あるのみで先へと急いだ



すると前方に見える重量感ある自動扉



それが自動で開き、2人はそのまま中へと進入して行った。



室内は研究室そのもの



デスクやら顕微鏡、実験器具などの器材が並び、向かいには培養液らしき液体の入ったカプセルがいくつも置かれていた。



そのカプセル内には人の腕や脚の一部らしき物が浸けられ、気泡が浮かんでいる…



ーーーーーーーーーーーーーーーー



その頃… エレナ達は拷問室に囚われた民の回収作業を行っていた。



野々宮から交戦を告げる連絡が入ったっきり、それからまだ連絡は無い



エレナをはじめ各人安否が気掛かりな中での回収作業が進められていた。



ポン吉「オェェェ~」



小泉「おい いつまで吐いてるんだ?そろそろ手伝えよ」



ポン吉「だって…ウプ ちょ 待 ウェェェ~」



百村「担架は?」



根城「無い これで最後だよ」



百村「まだ4分の1足らずだよ… 人手も時間も足らないよこれ」



エレナ「ちゃんとそこ持ってて下さい」



掌に串刺された鉤刃を抜いていくエレナ



「担架の数が全然足りてない どうする?」



霞「担架が無ければおぶれ」



中山「こっちの10人外したぞ どんどん運んでくれ」



海老名「おい こっちは担架じゃないと無理だ 腹から腸が飛び出してる 誰か担架持ってこい」



霞「村田 隊長が戻らなければ指揮車とも輸送班とも連絡が取れないぞ どうすんだ?」



村田「分かってる だが俺達の今やるべき事は隊長が戻るまでにこの人達を片っ端から運び出す事だ 余計な事は考えずにどんどん運べ、まだ地下の回収だってあるんだからな」



霞「分かった 手貸してくれ このまま外に運ぶ」



生きてるのか死んでるのか分からない五体不満足な町民等が担架に乗せられ、またおぶられ、担がれ、次々と隊員等やエレナ等によって運ばれていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



第1ラボラトリー バイオリソース(生物遺伝子資源)エリア



あらゆる機器が作動する室内



この場に人気は無い…



あるとすればそれは背後から迫り来るあの群れ…



野々宮はすかさず扉へと近づき扉のロックを試みようとするのだが…



野々宮「開閉ボタンはどこだ? 無い」



それらしきボタンが見当たらなかった。



自動開扉されるや押し寄せて来る群れを目にした2人



「㎏※§⇩≡⊕♀∞%¤㏄」



御見内「行きましょう」



2人は施錠を諦め、室内を駆け抜けた。



切断された腕、脚、胴体から首まで人体の一部がそれぞれ収められたカプセル



それらがズラリと縦一線に並ぶ、不気味な施設を通過



2人は次なる自動扉まで走り抜けた。



そして



第2ラボトリー バイオコンジュゲーション(生体結合)エリアへと進入した。



入室するや否や



2人の目の前に現れた黒フードの姿…



「なんだおまえら? ここは立ち入り…」



パス パス



ただちに黒フードの眉間が撃ち抜かれ、床に臥す



また前方には白衣姿の研究者らしき2人組がいた。



そして研究者の前にはベッドに固定され、寝かされた男の姿



今まさに身体に腕が取り付けられようとしている。



オレンジ色のレーザーが照射され人体接合されている真っ最中のようだ



それを見た御見内の顔が険相へと変わった。



また野々宮がその研究者らへ銃を向けながら口にした。



野々宮「そこの扉をロックしろ」



2人の研究者は驚き、怯えた表情を浮かべている



野々宮「早く すぐにそこをロックするんだ」



語気を強めた野々宮



それでも躊躇する研究者へ向け



パス パス



御見内が発砲した。



「ひぃ」



弾は機器に着弾されレーザー照射が止まる



御見内「早くロックしろ」



研究者は慌てて動き出し、CPUのキーボードを叩くと、今度はリモコンらしき物を扉へと向けた。



ピピ カチャ



すると施錠音が鳴り、扉がロックされた。



その数秒後に外側から叩く音が響き出す。

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