第99話 聖歌

「本日の気温13度 晴れのち雨 午後からめっさグズつく見通しです 青森県全域降水確率40% 降水量8キロミリリットル 町は水没し、家屋は床上浸水する恐れがありますので高台への避難もしくわゴムボート、スキューバダイビングセットをご購入もしくわ水泳教室へ通ってみるのもよいかと思われます、また水が引く間 スカイダイビングを存分に楽しむって手もあります 以上ウェザーニュースでした」



「262の法則 あなたはどこに位置してます?優秀な人材2割 普通8割 落ちこぼれで無能が2割? え?私はどこかって? 毎日遅刻して朝礼出ず上司に怒られてますし大事な契約書紛失、先方を怒らせ かなりデカい案件4つも潰してますが… まぁ 最近仕事も回ってこなくて定時には帰れるし、ミスは全然気にしてませんからギリ優秀な分類に入るのかなと思います はいぃ~」



木の陰から一斉にあげられた声



ガリガリガリガリ 幹が爪で引っかかれ



固まる一同の目の前でニョイっと顔を覗かせてきた。



目玉が乱雑に高速移動し、数匹のハエを身体中にたからせた早く動ける屍の姿



感染者だ



海原「クソ 遅かったか…」



「カルネアデスに感謝 カルネアデスに栄光あれ」



身を出した感染者へ一斉に銃口が向けられる中



その感染者はある異様な行動を取り始めた。



突然木にしがみつき、木登りを始めたのだ



それから枝を掴むや一本の腕でぶら下がり、身を振り始めた。



「カルネアデス様に敬意 カーネルサンダースにチキンを提供 ハハハハハ」



斉藤「なんだこいつ?なんかいつもと違うぞ」



すると



バキ



激しく揺すり、枝が折れるやそいつは落下した。



川畑「この馬鹿は何だ?」



「ハハハハハ 刑法に守られて幸せ者~ 明日から万引きしまくるぞ~ ハハハハハハハハハハ」



そいつは起き上がるや四つん這いになった。



それと同時に木の陰から現れた感染者達皆が四足の格好を見せた。



海原「マズい こいつら四足歩行型だ」



四足歩行…?



斉藤、川畑、美菜萌、谷口、阿部等に聞き覚えの無い言葉



周辺のザクト隊員等が険しい顔つきになる中



斉藤「四足歩行って…何?」



海原「今 目の前にいる四つん這いの奴等がそうだ… それより早く移動を 残りの者も前進 早く行け」



斉藤「え? あぁ…」



海原「太田 渋谷は左方の奴を 徳間は俺と正面だ」



「はい」「はい」「はい」



隊員「さぁ 行きましょう」



川畑「何なんだあの得体の知れない感染者は…」



美菜萌が長棒を構え戦闘態勢に入ろうとするや斉藤に腕を掴まれる。



斉藤「美菜萌 ここはザクトにまかせろ いいから行くぞ」



美菜萌「え…あ…はい」



そしてそのまま腕が引っ張られ、美菜萌が後ろを振り向いた。



4体の四足歩行感染者がゆっくり円を描き散開移動する光景



4人のザクト隊員等と膠着状態で睨み合っている。



そのさなか



「各週木曜の夕方に開かれる猫達が猫達による猫達の為の定例会議 猫会議に出席してみました…」



「カルネアデスの奇跡 カルネアデスの賛美… たいのスデアネルカ…」



2体の四足歩行者が突然ノーモーションから一斉に海原へ飛びかかろうとした



美菜萌「あぶない」



海原の反応が遅れ



人間離れした跳躍で四足歩行者が飛びかかる寸前を目にした美菜萌が叫んだ その時だ



パス パス パス



2体の四足歩行者が突如空中で撃ち落とされ、落下後もがき暴れた



美菜萌が振り向く先に…



海原が背後へ振り返るとそこにはサブマシンガンを構える赤塚の姿があった。



海原「主任」



赤塚「さぁ 早く行って下さい もう先陣は移動をはじめてこの先で待ってます すぐに後から追いかけますんで行って下さい」



阿部「はい」 



川畑「おい 早く 行くぞ」



すれ違う赤塚に美菜萌が会釈し



美菜萌等は先へと歩を進めた。



赤塚「何でこいつらがいる…?」



地面でもがく2体へ



パス パス



赤塚がトドメを刺しながら口にした。



海原「自分も驚きです 猿型は関東地方限定な筈じゃ…」



赤塚「何体いるんだ?」



海原「今の所4体確認してますが 数は定かじゃありません…」



「じゃあワンワン会議って何かって?それはですねぇ~…」 パスパスパス



赤塚がすかさず銃撃



眉間に穴が開き、直ちに1体の四足歩行者の口が閉ざされた。



そして赤塚はすぐさまもう1体に狙いを定めるや



パスパスパスパス



発砲



もう1体の全身にも穴が開き



避けられる事無くもう1体もあっけなく始末した。



赤塚「よし 片付いたぞ もう何体いようが知った事か さぁ 俺達も行くぞ」



海原「やりますね主任」



赤塚「だから主任って呼ぶんじゃ…」



その時だ…



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「And a Happy New yeay.」



あのクリスマスでお馴染みの定番チューン



森に響くクリスマスキャロルが…大声で歌われ



それが次第に…



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



1つ2つ増やしハモられていった。



「We wish you a Merry christmas」



「And a Happy New yeay.」



海原「新手か…」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」」



その声は次第に10にも20にも膨れ、たちまち合宿へと変わっていった。



「And a Happy New yeay.」



赤塚「各自 マガジンの予備はあるか?」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「And a Happy New yeay.」



海原「3つ程」 徳間「3つあります」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「And a Happy New yeay.」



渋谷「自分は2つです」 太田「自分も2つです」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



赤塚「何体いるか分からない シングルに変え、単発で正確に捕らえろ」



「And a Happy New yeay.」



後ずさりする5人



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



「We wish you a Merry christmas」



何度も復唱され、近づいて来る集団の歌声



「And a Happy New yeay.」



赤塚「クリスマスはまだひと月も先だぜ…」



赤塚は険しい面相で視線を送った。



「We wish you a Merry christmas」



すると5人の目に…



海原「まじかよ… あんな大群かよ…」



「We wish you a Merry christmas」



横一列にズラリと並び



「We wish you a Merry christmas」



走って向かって来る感染者達の群れが映し出された。



「And a Happy New yeay.」

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