第48話 計画

CT画像診断室 8時00分



後ろから回された腕、メサイヤの頸動脈に小槍を突きつける御見内が顔色を曇らせた。



御見内「どうしてロシアの軍隊なんかが……どういった繋がりだ?」



メサイヤ「詳しくは俺も知らん… なんせ会った事も名前さえもない…なんちゃら大佐って…ん?待てよ チラッと耳にしたんだが 確か…悪名高い過激派グループの…アルカイダみたいなやつ…カヤ…」



御見内「もしかしてあのカザックの事か?」



メサイヤ「そう それだ…その繋がりがどうこうって聞いた事がある…」



世界中には数々の武装テロ勢力が存在する



そんな中 近年台頭し世界中に名を轟かせたテロ組織



それがカザックだ



世界中でテロ活動が行われ



思想や指導者など詳細は不明だが名前だけはよくテレビで流されアイシルやタリバン、アルカイダと並ぶ有名なテロ組織



そのカザック絡み…



御見内「まじかよ… ただのチンピラ組織じゃないって事か…」



メサイヤ「そうゆう事だ さぁ もういいか?実は俺 軽い先端恐怖症なんだ いつまでも凶器つきつけられてちゃ息が詰まりそうだぜ…」



御見内が無言で小槍を喉元から離した



その瞬間



急に扉が開かれ、1人の黒フードが部屋へと入ってきた。



御見内はギョッとした表情で振り返り、黒フードへ打根の投擲態勢がとられるや



メサイヤ「なんだ?」



「お ビビった おぉー おまえ いたのか」



メサイヤ「あぁ この散らかった部屋を片付けてんだよ それよりどうした?」



「昨夜 屋敷がでっかい熊に襲われたらしく代表から熊狩りの命令が下った これから1人一丁づつマカロフが配られるそうだ その届いた箱を一旦この物置におきたい」



メサイヤ「熊に襲われた?」



「あぁ あまりにもでかい3頭のツキノワグマだったそうだ いずれサタナキアに召集がかかるみたいだから覚えておけ それにしても汚ったねぇ~この部屋はー これじゃあハジキ一丁置けやしねーぞ」



メサイヤ「今片付けてる最中だからここは俺達で整理しておく だからここはまかせてくれよ 悪いけどその箱も20~30分したら置きにきてくれるか」



「そうかぁー じゃあ頼むわ 奴隷を的にマカロフの試し撃ちでもしてくっかなぁー」



そう言い残し黒フードは部屋をあとにした。



再び部屋には2人きり



御見内「チャンスだったのになんで俺の事言わなかった? 侵入者に凶器を突きつけられたんだぞ」



メサイヤ「元々殺意は無かっただろ?」



御見内「裏切り行為だぞ」



メサイヤ「あぁ そんなん知った事かよ 俺はここを脱走するつもりだから別にいい」



御見内「それは賢明な判断だよ 残ればおまえまで潰さなきゃならなくなる…」



メサイヤ「さっきの話しを聞いてまだやるつもりなのか? いいかぁ~もう一度言うからよく聞け 抗争を続ければいずれ軍隊が出て来る しかもロシアの軍人だぞ 分かってるのか? しかもロシアの軍隊は殺人術の訓練を受けているから個々の殺人スキルが長けてる奴ばかりだ 民間レベルのおまえ等如きじゃ勝ち目なんてある訳無いんだよ」



御見内「あぁ 分かってるさ しかしスペツナズが出て来ようがなんだろうがこの喧嘩 引き下がる訳にはいかない 奴等の愚行も見逃す訳にはいかない 野放しには出来ないんだよ」



メサイヤ「皆殺しにされるぞ」



御見内「望む所だ」



メサイヤ「はぁ~ とんだ大馬鹿野郎だなおまえは…忠告はしたからな…なら、あとは勝手に…」



するとメサイヤの肩がいきなり掴まれた。



御見内「待ってくれ」



メサイヤ「あぁ?」



御見内「俺にはおまえの手引きが必要だ 頼むから力を貸してくれないか?」



メサイヤ「なんで俺が?分の悪いおまえに加担しろってか?それこそ裏切り行為だぜ」



御見内「だが…おまえはさっき俺をかばってくれた… 信用出来る奴だと踏んだ上で頼みたい 味方になってくれとは言わない ただ色々教えて欲しいんだ」



メサイヤ「脅したくせして今度はやけに都合よくねぇーか?」



御見内「…頼む…力を貸してくれ」



御見内から伝わる肩を掴まれた手の感触



御見内の真剣な眼差しを目にしたメサイヤが髪を掻き乱しながら口にした。



メサイヤ「あ~ 面倒臭ぇ~なぁ~関わるんじゃなかった なんてお人好しなんだか俺は~ ふぅ~……あぁ いいだろう…散々悪事を働いてきたんだ 最後くらい良い行いをするのもな……」



御見内「すまない 恩にきるよ」



メサイヤ「その前にこの部屋をキレイにするからおまえも手伝え やりながら話しは聞いてやる」



御見内「あぁ」



手を動かした2人により散らかった部屋の整理が行われてゆく



メサイヤ「…っで…何が聞きたい?」



御見内「実は俺より先にここに潜入した者がいるんだ」



メサイヤ「はぁ?他にも潜伏してる奴がいるのか?」



御見内「名は半田 顔は俺も分からない…何処かに潜んでる筈なんだ…まずはその人と合流したい」



メサイヤ「半田か…コードネームは?」



御見内「分からない…」



メサイヤ「それじゃあ探しようがねぇぞ…ここにはまとまりも無ければ名簿も無い…この黒の纏いとコードネームのみが全てなんだ 1人1人に俺はレジスタンスの者だがおまえは半田か?って聞く訳にもいかないだろ…ちなみにこの建物にいるのか?」



御見内「それさえも分からない…」



メサイヤ「なら連絡は?」



御見内「随分前から音信不通になってるそうだ」



メサイヤ「って事は既に消されてる可能性もある訳だ…」



御見内「あぁ だが もしかするとただ連絡が出来ない状況なのかも知れない…まだ殺されたと断定は出来ない」



メサイヤ「限りなく0に近い一縷(いちる)の望みに賭けるか…それがおまえのここに来た任務か?」



御見内「いいや 俺の目的は他にある」



メサイヤ「代表の暗殺か?」



御見内「それが出来れば一番手っ取り早いんだけどな…俺の目的はその代表を取り巻く近衛共を一匹ずつ片付けて行く事だよ」



メサイヤ「近衛?もしかして幹部クラスの事か……上は人の身体を壊すのが大好きな奴ばかりだ 拷問で人体を壊しながら苦痛で泣き叫ぶ顔を見てマスターベーションするイカレた奴だっている。ある意味殺人術なら上も相当な上級者ばかりだぞ」



御見内「そうか…人の身体を壊しながら…その苦しんだ顔を見ながら興奮か…じゃあ壊し甲斐があるな 今度は自らの身体でその苦痛でも味わって貰おうかな」



一瞬 垣間見える怒りと狂気が入り混じった御見内の瞳



その御見内の目を見たメサイヤが一瞬身体をゾッとさせ、ボソッと口にした。



メサイヤ「おまえ……何者だ?」



その辺の一般青年とは思え無い、ただならぬ雰囲気を感じとったのだろう



御見内「ただの通りすがりの正義の味方だ」



メサイヤ「フッ…まぁいい 取り敢えず目的は分かった っで具体的に俺に何をしろと?」



御見内「まずはこいつらが支配する施設の箇所とその正確な場所を教えてくれ」

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